女王学園の冒険45
学園都市ジュラルバーム郊外上空500メートル。
正体不明のモッドの大群が出現したとの救援要請を受けて現場にやってきたクオリア・ルビーは怪訝な顔で言った。
「なにアレ?」
地上には不揃いな肉塊達が犇めきあっていて、それらが徐々に街の中と外を隔てる防壁に近づいてきており、その進行を騎士団が食い止めている状況だ。
肉塊達は不気味でグロテスクでアンバランスだが……言ってしまえばそれだけの存在だ。
生き物の部品を出鱈目にくっ付けただけの身体では、まともに戦う事が出来ない。
誰も傷付ける事が出来ないというのに、只々がむしゃらに暴れ続けているだけだ。
「……わかりません」
通信機の向こうからオペレーターが即答した。
「はぁ?わからないって何よ?突然現れたとはいえ、多少は分析してるんでしょ?」
「えぇ……その通りなんですが……」
「はぁ……まーた新種のよくわからないナマモノって訳ぇ?」
「いえ、それが……あの生物の細胞を分析した結果、あれらは人間の細胞と獣性細胞で構成されてる事が判明しました」
「え?それって……」
人間の細胞と、かの天才ヘルメス博士が発見した生物をキメラ化させるという獣性細胞……その二つで、あの不揃いな肉の塊達は出来ているという。
「……そうです、あれらは全て我々と同じ、ヒトの細胞で出来ています」
という事は地上で戦っている肉塊と騎士団は生物学的には同種という事になる。
「……ヒトの細胞で出来ているなら『ヒトの形』になるはずよね?何か原因があるわけ?」
「それがわからないんですよ」
「きっもちわる……まぁいいわ、私がやる事は変わらないわ、そうでしょ?」
「ええ、騎士団は全員壁の内部へ退避させました、予定通りお願いします」
「了解」
一応逃げ遅れたヒトが居ないか、ざっと目視でも確認する。
「……はじめるか」
ルビーは自らの青い炎で形成した蝶の翅を展開させてジュラルバーム郊外の空を飛びまわった。
すると翅から鱗粉の様な赤い粉が地上へと振りまかれる。
それだけ見れば幻想的な美しい光景で終わるのだが……その鱗粉が地上に到達すると、次々と大爆発を巻き起こしていく。
幻想を文字通り吹き飛ばす隙間の無い絨毯爆撃は地上の草木諸共に蠢く肉塊達を粉砕焼却し跡形も残さない。
「……そういえば力を振るうのも久しぶりね、気分が良いわ」
絶え間ない業火に晒されている地上は、まごう事無き地獄絵図だが空を舞う深紅のクオリアは優雅な妖精の様に美しい。
耳を澄ませると爆発音と肉塊達の悲鳴の隙間に幽かに少女の鼻歌が聞こえて来る。
「~♪~♪♪~♪♪」




