女王学園の冒険44
メゾーレ・ジュラルバームは数か月前から学園都市内に姿を現す様になったテトリス、スゥ・サイドセルに対して今度こそは確実に勝利する為に慎重に準備を重ねてきた。
細心の注意を払いながら監視を続けながら、目的や動向を探り確信が持てるまでは気付いていないフリまでして泳がせていた。
確実に勝てる戦力を確保する為にロイヤルナイト全軍のスケジュールを調整し、本来こういった事態に対応するのは警察騎士団だけの役目なのだが、あのスゥ・サイドセル相手に、それだけでは絶対に足りないという強い確信があったメゾーレは、ジュラルバーム家が持つ命令権を行使して、五つの騎士団全てを動員した。
そうした忍耐強い活動の結果、どうやらスゥはこの学園都市で誰かを探しているらしい事を突き止めたのだが、探している相手が誰なのか、またその理由はなんなのかまではわからなかった。
どうやらスゥには相当に腕の良いハッカーがサポートに付いているらしく防諜力が高く、スゥ・サイドセルに関する情報収集が困難な状況にある。
そういった不安要素はあるが遂にこの日、メゾーレは投入できる十分な戦力を確保した。
以前の苦い敗戦の経験から今日に至るまで自身のトレーニングも欠かさず行ってきたし、その為に母親マリィに頼み込んで地獄の特訓にも耐えてきた。
「……状況は?」
サロンに居る時とは別人だと断定してしまいそうになる程の鋭い緊張感を持つメゾーレの声色にロイヤルナイトの男は気圧されながら答える。
彼女もまた両親に劣らず支配者たるジュラルバームの名を冠するのに相応しい素養を持っているのだ。
「はッ!追い詰められた目標はアイアングラム工業高校の体育館に陣取って抵抗を続けています。体育館の周囲はロイヤルナイトが徹底的に包囲を固めている為、抜けられる事はないでしょう……しかし、大量のブービートラップとドローンやアンチサバイバー発動状態での銃器類で制圧には時間がかかりそうです」
報告内容をじっくり咀嚼する様に深く考え込みながら、メゾーレは気になっている点について質問した。
「……街境騎士団の集まりが若干悪いようですけど、何か問題が?」
「それが……突然街の近くに正体不明のモッドの群れが現れまして、その対処に手間取っている様子です」
「正体不明のモッド?」
人工物の塊である街がモッドの襲撃を受けるのは珍しい事では無いが『正体不明』というのは珍しい。
モッドは全て人類に対して攻撃的だが、それでもモッド同士の種の壁を超えて徒党を組んでヒトに襲い掛かる種はほとんど存在しない。
普通は熊は熊の群れで、ゴリラはゴリラの群れという風に単一の種でヒトを襲うからだ。
「これはご覧頂いた方が早いと思います……どうぞ」
男はタブレット端末をメゾーレに手渡して、映像を再生した。
「…………なに、この、なにこれ?」
動画を再生すると、そこには何か、とても生物とは呼べないような……蠢く肉の塊みたいなものが大量に映っていた。
肉塊達には他のモッド達が持っている様な、どうやって獲物を攻撃するのか、どうやって動くのか、どうやって生存するのか、といった生物的合理性が全く見られなかった。
まるでホラー映画に出てくるクリーチャーの様な……怖がらせる為だけ、気味悪がらせる為だけの造り物じみている。
実際に戦闘力は高くないらしく、街境騎士団もさして苦戦している様子はない。
「まさか……これもスゥ・サイドセルの仕業……?」




