女王学園の冒険41
科学都市ノアで、とある計画の実験体として生まれたニレは誕生してから暫くの間、科学都市ノアで実験と称された殺し合いをさせられる毎日を送っていた。
当時はヒトらしい名前すら無いまま、生みの親である研究員達からは20番という識別番号で呼ばれていた。
何故殺し合いをさせるだけの実験体として造ったキメラに自我を付けたのかわからないが、ニレが生まれてから抱いた最初の願いは、この場所から逃げる事だった。
そしてある日突然、チャンスはやって来る。
いつもの様に殺し合いを終えた後、研究員が数名やってきてニレを檻から連れ出したのだ。
どうやら収容場所を移動するらしい。
殺し合い以外で檻から出られたニレは、これをチャンスと見て研究員の隙を突いて研究所から脱走した。
・・・
そして現在、その他にも紆余曲折あったが、トロメア達と森の洋館に住みながらジュラルバーム家の使用人ニレ・タリスマンとして働いている。
やっとの思いで研究所から逃げ出せたのは良いものの、なんの伝手も無く疲労困憊の上に研究所から追手まで差し向けられてしまう。
捕まってしまうのも時間の問題だと思われた時、ニレを救ったヒトがいる。
ニレにとって足を向けて眠れない大恩人、スゥ・サイドセルの顔写真が、たった今メゾーレから見せられている携帯端末に写っている。
メゾーレ・ジュラルバームの怨敵、そして傭兵都市グラングレイに戦術核を撃ち込んだ凶悪なテロリストとして。
「ワ、ワー……ワルソウナカオシテルナー」
ニレは白々しく当たり障りの無い事を言ってごまかす事にした。
(うおーい!スゥさ~ん!!アンタどんだけやらかしてるんですかああ!!!前は世間知らずだったとはいえ、とんでもないヒトと関わってしまった……悪そうな顔してるけど普通に良いヒトなんだけどなぁ、スゥさん)
今のニレはジュラルバーム家の使用人、とはいえ大恩人を売る様な真似はしたくない。
という事で今のニレには自分が関わり合う事が無い様にと願う事しか出来なかった。
「あら、コイツ……」
「あ、このヒト……」
「あら貴方達、スゥ・サイドセルについて何かしってるの?」
スゥの顔写真に反応したのはルビーと恋だったが、最初にスゥについて話し始めたのはルビーからだった。
「コイツって、グラングレイの都心部に戦術核撃ち込んで話題になったテロリストよね?あたしの姉妹が現場で核爆発抑え込んだせいで身体半分吹き飛んでたから覚えてるわ」「アハッ!核爆発抑え込むってヤバ♪」
「待って、情報量が多すぎて……どこから聞くべきかしら?」
「スゲーな、一体どうやったらそんな事できんだよ?」
「重力を操るアブノーマリティ持ちなのよ、それで頑張って抑え込んだんだって」
「頑張って核爆発抑え込めたら人類に不可能はねえよ」
「ところで恋もこのヒトの事、知ってるんだよね?」
「あ?あぁ、ラヴィ姉……ウチの孤児院のシスターが副業でシャンソン歌手やってんだけどよ、たまに歌いに行く店のビルのオーナーだぜ。グラングレイの件もあって新月街じゃ有名人だぜ」
「なるほど……今はスゥ・サイドセルが何故再び学園都市に現れたのか分からないけど……今度こそ捕まえてボコボコにした上で牢屋にブチ込んでやるわ。貴方達もなんか知ってたら教えて頂戴」
「「「はーい」」」
ニレは給仕の仕事にかこつけてこっそりその場を離れる事にした。




