女王学園の冒険39
恋が作ったサンドイッチは普段のイメージとはかけ離れた、見事な出来だった。
タッパーに詰めやすい様に食パンを四等分した正方形でハム、レタスやトマト、タマゴにカツと彩り豊かで食べるヒトを飽きさせない為の細やかな心遣いが見て取れる。
ラインナップはオーソドックスなBLTに始まってボリューム満点のカツサンドに優しい甘さのタマゴサンド、キーマカレーを挟んだ変わり種まである。
ベリーを主体としてイチゴやみかん、クリームと合わせたフルーツサンドまで出してきたもんだ。
付け合わせは薄味の主役の邪魔をしないコールスローが嬉しい。
「……あらまぁ、こりゃちょっと想像以上においしそうだ」
「ヒトは見かけによらないって、ホントだったのね……」
お出しされたサンドイッチのあまりのクオリティの高さに、四人は恋が家庭的である事をイジる事も忘れて感嘆の声しか上げられなかった。
四人の様子に恋は若干照れながら言った。
「今日のクエストは別に俺の為に皆が集まった訳じゃねーのは知ってるけど……でもそれで俺は助かったから、これはその……俺が勝手に感謝してるって、俺の気持ちだ」
せっかく恋ちゃんが頑張って可愛い事を言ってるというのに、他の四人は既にサンドイッチを貪り食っており、誰も話を聞いてなかった。
「んああ、今なんか言ってた?」
「ちょっと貴方!ポテサラコーンのヤツばっかり食べすぎよ!私にも寄越しなさい!!」
「こんなの早いもの勝ちでしょ?……やめて、私のポテサラを盗らないでぇ!」
「誰かカレーサンドとってー」
既にケモノと化した四人を眺めながら恋が苦笑しながら呟いた。
「……ま、いいか。これくらいの方が俺も気が楽だわ」
・・・
昼食後、再び河原に戻った五人は川を遡上してきた数百匹のビッグサーモンの大群に襲われた。
ルビーがちょっと本気を出して、川の水を10秒干上がらせる程度の火力で大量の焼き鮭を造り上げ『コレ、焼き鮭同時調理の世界記録なんじゃないかしらねえ?』なんて言ってみたり、焼き鮭のスメルに引き寄せられてきた大型熊の団体さんにニレがジャンピングパワーボムをキメて直立したままの姿勢で地面に植えたりした。
楽しい時間はあっという間に過ぎ去って、今はもう夕方、帰りの車の中。
後部座席でメゾーレがピンク色の石を夕日に透かして眺めてニヤニヤしている。
メゾーレの隣に座っているルビーがその様子を見て呆れたように言った。
「嬉しいのは分かるけど、よく飽きないわねアンタ……」
「いいでしょ別に」
「それ宝石なの?」
「そうよ、翡翠なの。ピンクのは珍しいのよ」
「ふ~ん。でもアンタなら宝石なんて好きなだけ買えるんじゃないの?」
「……わかってないわね。私は綺麗な宝石が欲しかった訳じゃないの、私が見つけた『私の宝石』が手に入った事が嬉しいのよ」
「私はそういう拘り無いから、ちょっとわからないわ」
「にべもないとはこの事ね……」
そんな話をしつつ車はジュラルバームへと戻っていくのであった。
・・・
学園都市ジュラルバーム某所。
五人がクエストに行った同じ日にジュラルバームにやってきたヒトが居た。
「この街に来るのも久しぶりだな、前に来た時は……確か、プリデールと一緒だったんだっけ?なんか随分昔に感じるな……」




