女王学園の冒険36
ニレがワニの死体を仰向けの状態になる様にひっくり返している。
一見簡単そうに見えるが、全長二十メートルを超える巨体は動かすだけでも一仕事だ。
しかしニレはいとも簡単に次々とひっくり返しているのだから、相変わらず生まれつきの怪力らしい。
するとそこに、マイがトコトコ歩いて来た。
「どしたの?なんか凄いのでも見つけた?」
マイは退屈そうに溜息を吐いた。
「価値があるのはわかるんだけど石相手だとどうにも張り合いが無くて……それより貴方、何してるの?」
何をしてるのと質問している様に見えるが、マイはなんとなくニレがしようとしている事を察している様子だ。
つまり『何してるの?』は疑問ではなく、どちらかと言えば興味関心があるというニュアンスだ。
「これからワニの皮剥ごうと思ってね……これが結構いい値段で売れるんだよ、贅沢品としてだけじゃなくて武器とか防具の材料になったりね」
「生き物のナマ皮剥ぎ、とっても興味がそそられるわ♪」
「噂通りエグい事が好きそうかなとは思ってたけど、まさかここまでわかりやすく食いつくとは……いいよ、教えてあげる」
ニレは少し苦笑いを浮かべたが、それだけだった。
「……あらあ?てっきり思いっきり引かれると思ってたのに、案外平気そうね?つまんないの」
「こう見えて色々見て来たからねぇ~ちょっとやそっとじゃ驚かないよ。それより血とかぶしゃぶしゃ出まくって服とか超汚れるけど大丈夫?」
「勿論、むしろ望む所まであるわ♪」
「実はこんな事もあろうかと皮剥ぎ装備の予備も持って来てあるんだよね~」
「……貴方ってホント準備いいわよねえ、感心するわ」
「今の時代、用意も無しに街の外へ行くなんて自殺行為だからね~事前に危険生物のリストを見て対策する位は当然だよ」
そんな事を言いつつ、ニレが取り出したのはマスクと漁師が使う様な防水エプロン、長靴、そして皮剥ぎに使う専用のナイフ数種類だ。
皮膚に入れた切れ目から一気に皮を割く為に先端がカールしたもの、刃が内側に緩いカーブしている丸いククリナイフといった形状のもの、四角くて分厚い骨切り包丁等々。
「普段なら変わった形の刃物程度にしか思わなかったでしょけど、これを使って生き物の皮を剥ぐって考えると興奮してきちゃうわ♪」
「ちょっとちょっと、興奮するのは構わないけどワニをぐちゃぐちゃにしちゃダメだよ?」
「大丈夫よ、仕事はちゃんとこなすから」
「なら良いけど……」
こうしてニレ先生による『ブタ野郎でも簡単!楽しいアウトドア地獄変~ドキドキ、野生動物無限皮剥ぎ編~』が始まった。
「基本的にワニの皮を剥ぐ時は、最初に下あごの先端に刃物を入れるんだ」
「それって好きな部位からじゃダメなの?」
「それでも剥げない事は無いんだけど買い取りの時に価値が落ちちゃうんだよ、一定の形じゃないと加工する時やりにくいからね」
先ずはニレがお手本という事でワニの顎に先端のカールしたナイフを突き立てて、そのまま腹部を通って尾の先端までスーッと動かしてワニの腹部に長い切れ目を入れた。
それからはククリナイフや鎌、その他数種類のナイフを器用に使いながら、まるで着ぐるみ脱がす様にワニの皮と肉を剥がしていく。
お手本の後、ある程度レクチャーを受けたら今度は、いよいよ今度はマイの番だ。
マイはワニの脳天に刃物を入れた瞬間、感極まってしまい思わず声を上げた。
「あはぁ!」
「あの、喘ぐのやめてもろて……っていうかこれ、地味に相当力居るんだけど大丈夫?」
ニレの心配を他所にマイは思った以上にスイスイと刃物を滑らせていく。
おまけに体に血飛沫が掛かってもむしろ恍惚としている。
「は~い、お洋服(生皮)脱ぎ脱ぎしましょうね~♪」
「うっわ!このヒト、こっわ……てか全然力あるね、なんか意外かも」
「ヤンデレは力持ちなのよ♪」
「あ、自覚あったんだね……」




