女王学園の冒険30
学園都市ジュラルバームには二つの顔がある。
一つは未来を担う若者を育成するという学園都市としての顔。
もう一つは有能な人材をヘッドハンティングしたり、スポンサーとして支援を行う事で囲い込んだりする有力者や企業団体にとっての市場。
そして学生(人材)とスポンサーを結び付ける為の租界。
学園都市では両者を結び付ける為に様々な集まり、つまりパーティーがあちこちで催されている。
しかし純粋な貴族社会という訳でも無い。
学園都市の創始者ジュラルバーム家は償いの日以降に台頭してきた新興勢力なので、ジュラルバーム家には貴族社会に在ってしかるべき『伝統』という概念が全く無い。
そんな理由もあって、ジュラルバーム家の面々は想像以上に柔軟な思考を持っており、物事を実利や機能重視で考える事が多い。
その考え方は家にも表れていて、学園都市中心部の『本邸』と呼ばれるジュラルバーム家の豪邸は公的な行事や迎賓の為の『設備』として捉えられており、家としての機能も勿論あるが、あまり一家がプライベートな時間を本邸で過ごすことは無い。
各々本邸とは別に街中に点在している別邸と呼ばれる、小さい家[※一番の貴族にしては]で過ごす事がほとんどで、使用人も呼ばれたり呼ばれなかったりまちまちだ。
・・・
メゾーレが学校から別邸の一つに帰ってくると、たまたま父親のクロード・ジュラルバームと鉢合わせた。
クロードは一人でリビングのソファに身体を預けて、ダラダラしながら出前のピザを手掴みで食べては赤ワインを飲んでいた。
貴族社会の天辺とは思えない寛ぎ方だ。
「おかえり~」
父親の姿を見たメゾーレは少し意外そうな顔をした。
「あら、今日はお早いんですね」
「働くのも嫌いじゃないんだけど、たまにはね……それより一緒に食べない?一人だとちょっと多くて……」
「……それならもっと小さいサイズを頼めば良かったのに」
「もしかしたらメゾーレが来るかな~って思ってさ」
「じゃ、頂きますわ」
二人でピザを食べながら適当に話をしていると、クロードが学校生活について尋ねて来た。
親子の会話によくある、ありきたりな話題だ。
「そういえば!」
話を振られて思い出したという風に、メゾーレは今日学校であった大暴投サロン爆発事件の事をかいつまんでクロードに話した。
「なんだ勿体無い、弱みを握って言いなりにしちゃえば良かったのに……人の弱みなんていくらあっても困らないんだし」
「私は別に他人を思い通りに動かしたい訳じゃないので……」
「えー?メゾーレもそのうち学園都市の支配者になるんだから、少しはそういう手練手管も覚えなよ~」
メゾーレはすぐにこういう発想をするクロードを内心恐れていた。
あるいはこういった冷徹さこそが支配者にとって必要な資質なのかもしれない。
(私に街の支配者が務まるのかしら……?)
メゾーレの胸中に漠然とした将来への不安がもやの様に立ち込めかけたが、それは一旦置いておくとして、父親に聞いておきたい事があったのを思い出した。
「それはそうと私のクラス……なんか変な人多い気がするんですけどまさかパパ、何かしてないでしょうね?」
「あらーもうバレた、いやぁメゾーレの学校生活が楽しくなるかなと思ってさ」
悪びれもしないクロードにメゾーレがぷんすこ怒った。
クロードはメゾーレが物心ついた時からずっとこんな感じなのだ。
「バレた。じゃないわよ、もう~!!」




