女王学園の冒険28
「すいませんでした」
事情の説明が終わり、横一列に並んで頭を下げている四人を見ながらメゾーレ・ジュラルバームは静かに言った。
「ええ、話はわかりましたわ。私に対して害意が無かった事故だというのなら、今回の件は不問にしましょう…………とはいかないんですよ、見なさいよこの部屋を」
メゾーレの言葉に顔を上げた四人は流石に気まずそうな顔をしていた。
それもその筈、サロンの中は爆弾でも投げ込まれた様な有り様で床や天井からはまだシュウシュウと煙が上がってたり焦げている部分もある。
家具や調度品ももれなく全滅状態でメゾーレの座っているソファとその目の前にあるテーブルだけが辛うじて難を逃れた状態だった。
まさかこんな事になっているなんて思わなかったのだ。
「貴方達をソファに座らせてあげたかったけど……丁度、先程、木端微塵に爆発四散しましてね」
メゾーレの怒りは至極当然ごもっともであり、だからこそ誰も反論出来ずに口をつむぐしかなかった。
「…………」
メゾーレは続ける。
「前置きはこれ位にしておきましょうか……それで弁償の話なんですけど、恋さんの保護者に連絡して支払って頂くのが筋ですが……」
そこで堪らず恋が声を上げた。
「待ってくれ!ウチは孤児院で貧乏なんだ!金は俺がなんとかするから、姉ちゃん達にだけは言わないでくれ!」
「学園に入学する際に保護者が必要なのはご存じよね?そして保護者は学生の代わりに責任を取る為にいるんです。責任に貴女の家が貧しいというのは関係ありません」
「そ、そんな…………!!」
珍しく泣きそうになっている恋を見かねてか、ここでニレが挙手した。
「あのー……お嬢様、もうそれくらいでいいんじゃないでしょうか?」
ニレをちらりと横目で見た後、メゾーレは「ふぅ」と息を吐いて、今まで意識して釣り上げていた目元を緩めた。
「そうですわね……別にここの家具なんて全滅した所でなんてことないですし、弁償についても不問にしてあげても良いですよ」
メゾーレの言葉にニレを除いた他の二人が一様に驚いていた。
「巷じゃ『氷の令嬢』なんて呼ばれてるのに、随分優しいのね」
「えぇ~……せっかくこのゴリラヤンキーが地獄に落ちる所が見れると思って付いてきたのに、つまらないわぁ……」
「他人から何と呼ばれようと興味ありませんけれど……私はただ、自分と対等だと思えるヒト以外と付き合おうと思わないだけ」
「それじゃあ私達はこの辺で……」
「……待ってくれ!」
ここで再び恋が声を上げた。
「やっぱり俺が何とかして弁償する!自分の責任は自分で取りてぇんだ!」
恋は今まで世話になったラヴィオラや孤児院の子供達に何か役に立つヒトになりたくてここに来たのだ。
ここでヒトの好意に甘えるようなら、それは叶わないと感じたのだった。
恋の言葉に他ならぬメゾーレが、なんか嫌そうな顔をした。
「えぇ、何この子めんどくさ……」
「だから俺に弁償させてくれ!」
「……まあ、そう言うなら弁償してもらおうかしら……ニレ、被害額がどれ位か分かるかしら?」
「はい。サロンの内装はお嬢様の意向もありまして、質素にまとめてありますから……えーと、ざっと見て一億ゴールド程度で済んでますね」
恋があまりの金額に目を剝いた。
「一億ぅ!?!?!?部屋の家具だけでぇ!?!?」
「アッハッハッハ!啖呵切っちゃったねえ!!返済頑張ってねぇ~恋ちゃん♪」
「アンタバカねぇ~……変な意地張らなきゃよかったのに」
「……まぁ、私の方から催促したりはしないから、気長に頑張って下さいな」
学生の身で一億ゴールドの借金を背負ってしまった獅子群恋はともかく、今は四人で部屋の片付けを始める事になった。




