女王学園の冒険27
ドッジボール中に暴投したボールが、よりにもよって時計塔の最上階にあるジュラルバーム家のサロンに直撃したとあっては、教師も生徒も授業どころではない程にビビり散らかし、クラスメイト達は大混乱に陥った。
とにかく謝りに行くべきだと誰かが言い出したのを皮切りに、まるで生贄を選出する様なノリで謝罪に行くメンバーが決定した。
まず確定枠としてボールを投げた本人の獅子群恋。
一緒になってヒートアップしていたという事でマイ・アズマット。
腰が抜けて立ち上がれない体育教師の代理として、とりあえず厄介事を押し付けられた学級委員長のクオリア・ルビー。
ジュラルバーム家の使用人という事でなんとか事を丸く収めてくれと懇願されたニレ・タリスマン。
という塩梅で四人が時計塔へ行くことになった。
「近くで見ると案外デケェなぁ……」
恋が呑気に時計塔を見上げながら言った。
「上流階級のたまり場なんて、来る用事ないものね」
大して興味なさそうなマイ。
「まぁ別に迷う様な構造じゃないんだけど、あたしが案内するよ」
そう言ってニレが一行の先頭に立った。
イギリスにあったビッグ・ベンは償いの日にネオパンゲア大陸の荒野で手入れする者も無く放置されていた。
それを学園都市の前身にあたる拷問強盗団ジュラルバームの首領マリィ・ジュラルバームが根城にしたのが学園都市ジュラルバームのハジマリであるとされている。
時計塔の最上階には強盗団から成り上がり独裁者をやっていた頃のマリィの執務室だった場所であり、ここが女王学園となった今でも特別視されジュラルバーム家専用のスペースとなっているのはその名残だ……という感じの説明をニレから受けつつ三人は時計塔の内部を進むが、しかし三人とも時計塔の歴史には興味が薄い様子だった。
「……歴史はともかくアンタ達二人、悪びれなさ過ぎじゃない?相手はジュラルバームのお嬢様なのよ?ちゃんとわかってる?」
「知ってっけどさあ……まだ謝る相手に会っても居ないのに申し訳なさそうにしても、しょうがなくね?」
「癪だけどそこは私もコイツと同意見ね……というかなんで私まで行かなきゃ駄目なの?私はただボール投げられた側だから、ただの被害者よ?」
「それはそうかも知れないけどさ……あの状況じゃあクラスの皆が納得しなかったんじゃないかなあ?」
「別に謝るくらい俺一人でも出来る」
「……さっきまで頭に血が上ってた奴が言う事は説得力が違うわ」
「あぁん?」
すぐにケンカしそうになる恋とマイをニレが宥める。
「まぁまぁ……行くのが誰だったとしても、付き添いは必要だったと思うよ。この街でジュラルバームとその他じゃ立場が違い過ぎるから」
「そういえばニレさんってあのお嬢様のお目付け役なんでしょ?氷の令嬢なんて皆呼んで恐れてるけど、実際どんな性格なの?」
「あたしも只の使用人だからなぁ……奥様と旦那様の子供とは思えないくらいには常識人だよ……あの二人と比べたら大体のヒトがそうなっちゃうけどさ」
「ふーん……じゃあ一応、謝罪は通りそうではあるのね、ちょっと安心したわ」
「さ、着いたよ」
時計塔内部を進み、直通のエレベーターで最上階まで登った後、少し歩いた所でニレが足を止めた。
そこには豪奢な扉があり、この向こうに例のサロンあるのだろう。
防音がしっかりしているのか、特に部屋の中から聞こえてくる物音は無い。
ニレが後ろを振り返って三人に目線を送った。
(準備はいい?)
三人がそれぞれ頷いたので、ニレが部屋のドアをノックした。




