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ハジマリノヒ  作者: うぐいす
女王学園の冒険
294/298

女王学園の冒険24

 戦後のセカイの教育に於いて、最も重要視されるのは戦闘力を含んだ生存力だ。

野生化したモッド達によるヒトの文明圏に対する攻撃や街の外に蔓延るならず者達の脅威が非常に大きく、七大都市であっても、未だその脅威を根絶するに至っていない。

安全な都市圏から一歩外に出れば、そこは危険に満ち溢れた荒野であり、要はどんな教育を受けて高い技術を習得したとしても、死んだら全部無駄になってしまう。

それは学園都市ジュラルバームにとって大きい損失である。

ジュラルバームの卒業生という看板を背負った人材がひ弱ですぐ死ぬ使えないヒトだったのなら、間接的に街の信用も落ちるというものだ。


・・・


 という事で今は楽しい体育の時間だった。

種目はドッジボール……好きな奴はとことん好きだけど、運動神経が悪い奴やボールが当たった時の痛みが嫌なタイプにはとことん嫌われるお馴染みのスポーツだ。

クラスで二チームに分かれて皆楽しく対戦している。

皆とは言ったがメゾーレだけは毎回体育の授業を欠席しており、今回も同じように出席していなかった。


「ウォォォルァ!!!死ねやあッッ!」


 恋の放った渾身の投球がマイに迫る、アブノーマリティを使ってはいない筈なのにボールは殺人的な速度と威力を有しており、生半可な相手では着弾と同時に意識を刈り取られ、保健室へと直行する羽目になるだろう。


「……うっざ。よくまあそんな下品な声が出せるものねえ」


 恋の殺人ショットに対してマイは涼しい顔で身構えると、腹と両手と蠍の様な尻尾で抱え込むようにして上手にボールの威力を殺して、受け止めた。

インパクトの瞬間「ドパァアアアアアアアアアアアン!!!!」というおそよボールが発するとは思えない音と衝撃が発生した。

それでもボールの威力でマイの身体は50センチ程後退したが、無事にキャッチに成功した。


「ちょっと獅子群!アンタいい加減にしなさいよ!!」


 学級委員長のルビーが恋を一喝した。

クラスメイトの皆さんは内心大いに盛り上がっていた。


(そうだ!言ってやってくれ委員長!もう少し手加減しろと!いくらなんでも死人が出るぞと!)


恋が面倒くさそうにルビーの方を見た。


「……なんだよ委員長」

「死ねとか言って威嚇しちゃダメでしょ!これは喧嘩じゃなくて授業なんだから」

「あぁ、そりゃそうか。わりぃ、つい熱くなっちまって……」


ちょっとズレているルビーにクラスメイト達は心の中で総ツッコミを入れた。


(そーじゃないんだ委員長!そこじゃないんだよォ!!)


それを聞いていたマイが尻尾の先端でボールを回しながら言った。


「そろそろいいかしら?恋ちゃんの汚い顔面にボールぶち込んで陥没させてあげたいんだけど?」

「あ?恋ちゃんだぁ?なめやがって、イカレ女がよぉ?」

「ハイハイ、喧嘩は授業が終わってからにして……ていうかアンタ達、他の皆にもボール回しなさいよ。ちゃんと体育にならないでしょ?」


委員長の言葉にクラスメイト達が揃って反応した。


「「「いえお構いなく!!!」」」


それから幸い死者が出る事も無く、なんとかかんとか試合は進んでいった。


「後はお前だけだなあ、イカレ女」

「……そうね、ライオンゴリラさん♪」

「上等だァ……次でトドメを刺してやるぜ!」


 恋は全身全霊の愛のサイキック破壊パゥワーをボールに込め、マイ目掛けてボールを投擲した。

しかしあまりにも力を込め過ぎた為、コントロールを失ってしまい、ボールはあらぬ方向へと飛んで行った。


「ぷぷーぷ!へたくそ♪」

「うるせえ!」


 外れたボールは女王学園名物の時計塔の上階へと飛んで行った。


「アレ?あそこってたしか……」


 女王学園の時計塔は女王学園のシンボルであり、旧世界ではビッグ・ベンと呼ばれていた時計塔を改修したものだ。

学園都市土産のお菓子のトレードマークになる程象徴的なものであり、加えて戦前からの文化遺産なので歴史的価値も高い。

序に言うと女王学園の生徒会や貴族階級のサロン等の施設も詰まっている建物で、全身全霊の愛のサイキック破壊パゥワーが込められたボールは、その時計塔の一室に着弾し大爆発を起こした。


「……もしかして、やっちまったかこりゃ?」

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