第29幕:光イコール予想外
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【World Chronicle Quest】 光と闇の起源
大地に力は流れ、根源の火は熾され。
再び生と死の境界を越えた原初の闇へ沈まん。
数多の光を束ね世界を取り戻すべし。
【概要】
力を取り戻した魔神王ラーディクスにより終末
イベントが発令。
七日間の後に世界は焼き尽くされすべての生物、
鉱物が眠りにつきます。
異訪者、NPC間で協力し最後の地底神を討伐し
てください。
敵と手を取り合い、歴史の真実を暴き、すべて
の戦いに終止符を打ちましょう。
目標の達成と貢献度に応じて【ギルドポイント】
及び【戦果ポイント】を獲得可能。
【戦果ポイント】引き換え対象賞品は、クエス
ト終了後に公開されます。
【終局達成条件】
・地底の火「魔神王ラーディクス」の撃破
【備考】
・開催:■■■~■■■
・再参加可能/cool time(死亡後:12時間)
本クエスト発令時点で既に死亡しているPLは翌日
からの参加になります。
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何も知らない視点からだったのならテンションが上がったりもしたかもしれない。
が、すべてが虚構だと知ってる。
ここに書かれていること―――全て。
「「………!」」
「―――これ……」
「君たち異訪者っていうのは本当に面白いんだ。こうして道筋を作ってあげるだけで勝手に深くを考察して、在りもしない理不尽に対し憤って、私の思うままに動いてくれる。何度果てても何度でも挑戦し、いずれは成功してくれる。最高の駒さ」
このクソ女神。
言わせておけば……!
人様をまるでぶら下げられたニンジンの為なら何でもする阿呆みたいに言いやがって。
俺たちはな……!
「くっそ、言い返せねえ!」
「クエストという体にするだけでたとえその中身が誤っていようとクリアのために動いてしまう……おっしゃる通りでしかないのであーる!」
「なんか反論ないんです?」
「返す言葉がない」
「ふ……完全にしてやられたというべきか」
「せめて王さまとユウトクンは言い返してよ! 役目でしょ!?」
だが実際奴の言う通り。
俺たちは「クエスト」という不確かな目標をずっと行動の指針としてきた。
世界の根幹として、疑いすらしなかった。
だが、奴の言い方的に今までにも同じことがあったのだろう。
俺たちは今までも気付かずのうちにコイツに有利になるよう、ずっと世界を塗り替えていたんだ。
「おい神様! 道を勝手に示してくれるのはありがたいけどな、あいにく俺たちにゃ魔神王を倒す手段がねーんだわ」
「方法だけでもおしえてくれないであーるか? あればの話であーるがな」
ヤジも飛ぶ。
引き延ばす、それがだめでもせめて情報をもっと引き出そうという海賊や野蛮人の手。
あるいは最後の抵抗とも言える。
「―――不定の神を地の底の底へ送り返した時のことを覚えているかな」
「同じ原理なら既に君たちは知っているだろう?」
答えは明確だった。
あの時は帝国の大貴族である鉄血候がPLを利用してため込んだ鉱石……不定神の欠片というトンデモアイテムを使った。
攻撃の通じない相手に対し、元々相手の身体から別けられたものなら干渉できたゆえ。
そのおかげで初めて顕現した大神への対抗手段を得た。
「彼らの使った策は神の肉体に不活性の力を送り込むことでの権能のはく奪。なら―――」
『―――――』
『―――――』
……!
それまで不可視、しかし確かにそこに存在していた深い闇が晴れた。
魔神王ラーディクスという焔を覆っていた衣が消失したんだ。
自然、目の前に可視化される姿。
「彼は炎そのもの。個体でも、液体でも、気体でもなく。現象―――。実体を持たない不確かを掴む方法っていうのは限られる。けど、決して存在しないわけじゃないんだ、だって確かに見えているんだから。そして、具現した。今ここに神は盤上に引きずり降ろされた」
「―――ルルㇽㇽ……。何をした? アルケ」
それは巨大な竜だ。
身の丈は通常の飛竜とは比にならない、これまでに一、二度ほどしか相手したことのない真竜と同等の体躯。
石炭を思わせる光沢のある体表に黒い焔が灯り、身を焦がし続ける。
己の炎でその身を焦がし続ける強大な竜。
これが魔神王の正体か……!!
「馬鹿だねラーディクス。君は全ての竜の祖であり、すべての魔族の祖だ。他の地底神たちが眷属として同種を生み出さなかったのはそれが弱点になりうると理解していたから。彼らがいなくなって地上に眷属たちが生まれるのはいずれ彼らが再誕するため。あくまでいなくなる自身の代替として用意すべきはずのものを、君は先に作った。作ってしまったんだ。自らの弱点をね。まぁ、この辺はアールの大手柄でもある」
『貴様……』
「滅びた真竜たちの魂と、魔族を贄に。―――ジュデッカもついさっき致命傷を負ったみたいだね」
『我が眷属を……死したのちも辱めるか……!!』
「ふふ……。さぁ、ラーディクス。君そのものを倒すのは私じゃあとてもじゃないけど不可能だ。地底神の中でも死刻神アリマンと同じくらい強大な、最初の炎たる君を滅するのはね。けど別にいいんだ、倒さなくても」
「だって私には彼らがいる。彼ら異訪者なら、戦いの果てに君を倒すことだってきっとできる。―――さあ、やろう皆!」
……。
「なんか味方側みたいな雰囲気出してるけど実質的な黒幕なんだよね? この**女神」
「ずっと世界を支配しようと他の神々蹴落としてきた**女神だ」
「サイテーな神様です」
「おーい、魔神王さま。いっそ協力してコイツボコらない?」
ムカつく方をぶん殴る。
異訪者である以上自由は健在だ。
確かに俺たちはアルケに対してスキルや魔法などの攻撃ができないらしいが、ならもう一方の方から力を借りれば?
殴ることだってできるかもしれない。
「我が救いを与えるのは我が血族のみ」
「「……………」」
「うーん」
「こっちもこっちで話通じねえな」
この期に及んでまで拒否する頑固な神に、素で協力したくないタイプの神。
こんな神どもだから生き残ったのか、生き残ったからこんなんになっちまったのか。
……まだマシな方を説得してみるか。
ラントさん、ムーンさんと目くばせをしてみる。
「けどさ? 魔神王さん。どちらにせよ、もうしばらくもすれば狂気に震えたPLたちが突っ込んでくるよ?」
「盤上に引きずり出されたアンタじゃやられちまうかもなー」
「ここは協力というのはどうだ。半魔の異訪者も敵になるのだぞ? 血族同士の戦いは見たくないだろう」
「否」
「識っていた、我が血族の力を持つ異訪者らがアルケの呼び出せし虚像であることなど。我は根源の思考であるゆえに。ゆえに我も力を撒いた。ジュデッカも、三騎士も……決して貴様の思い通りにはならぬぞ、簒奪者よ」
……。
違う?
話が通じないわけじゃなく、魔神王にも策があるのか?
焔は猛らず、極めて落ち着いたままに放たれる竜神の言葉。
対する光神もまた平静のまま。
「口だけならなんとでもいえるね」
「いいさ、あっちには私の分霊体であるアールがいる。私の用意した策は全て嵌ったんだ。逆に君の腹心である元帥様は既に死に体。全てが手遅れ―――……。ん? え?」
「……。あれ?」
先に崩されたのはアルケーの方だった。
明らかな困惑が伝わってくる。
向こうでも何かが起こってるらしい。
……そういえば、いつの間にか偽りの道化から共有されていた情報が来なくなった。
◇
「ぐ……、ぬ、ぅ」
「ジュデッカ様!」
複数方向から仕向けられた攻撃からなんとか逃れた彼だけど、明らかにダメージは大きい……大きすぎる。
本来の彼なら受けられたはずだったんだ。
けど、アレスの身体に宿った何かの相手をしたまま、アリギエリ、ラース、ティア……皆が一斉に敵になり彼を攻撃した。
完全に不意を突かれた。
しかも、これもまた予想外の一つ……妖精王が彼の足を縛って逃げられなくしていた。
意味が分からない。
誰が敵でだれが味方なのか―――頭がごちゃ混ぜだ。
相関図は? 勢力図は? 一体何がどうなって……本当に、すべてが敵に回ったような感覚。
「これ、が、計画か……、光神よ」
「……………」
「ふ、ふ……。―――中身が抜けたか」
ジュデッカ様に問われてもアレスは喋らない。
色が完全に抜けた白髪を靡かせ、六対の翼を与えられた使徒はまるで電源の切れたロボットのようにその場に在るだけ。
「……この我が背後より刺されるとは、不覚よ。そして……」
「誰か状況説明してほしいのだわ!」
「今ある状況が現実よ、妖精姫さん」
「―――あなたには聞いてないのだわ! 悪夢!」
「おーちゃん……!? ずっとだましてたってことなんですかー!?」
「すまない」
結局、妖精王もまた敵方だった。
本当に全てが黒幕の手のひらの上だったってこと?
「どうして!? あんなに一緒に……」
「妖精王は案内役ですよ。あなた方を導き、この戦いに至らせるための。異訪者が振るうことのできる力、その最後のピースを……神さえも屠ることができる力を引き出すための最後の協力者……。当然、私たちの、です」
「「―――――」」
要塞内部に硬質な足音が響く。
やっぱり、来た。
「ノクスの伝令改め、光神アルケーが御子……アール。そして―――太古の昔よりこの時だけを待ち続けてきた、光の神々の眷属。それが私たち。我らこそ土より形作られた最初のヒトなのです」
アリギエリ、ラース、ガラティア……。
三人も、やっぱり。
「クウォよ。我々三騎士は生まれ落ちた時よりの魔族ではない」
「……最初から?」
「えぇ。神の目を欺くために遣わされた、造られた魔族」
「きっと、あなた方異訪者のようなもの、なのでしょうね」
光の神は異訪者を好きな種族として生まれさせ、そして転生させられた。
当然魔族として生まれさせることも。
「そう、最初から我らの陣営。三騎士も、妖精王も、そして12聖に宿る力も。……ははは。人界? 魔族領土? 全ては最初から創造主の目的のために動いていた。あなた達の戦い全てが無駄なのですよ、最初から。ノクスも実に役に立った。彼らが地底の神々の力を各地で集めてくれたおかげで、歴史の隙間に隠れ蓑が出来たのですから」
「ですね? 母上」
「……………」
暗躍していた組織の中で更に全てをだましていた簒奪者が目を向けるは動きを止めている12翼の天使。
おそらくさっきまでアレスを操っていた存在へ向けた言葉だ。
けど返答はない。
「……どうやらこちらにはおられない様子―――まあいいでしょう。残党程度私たちだけで事足りる」
「残党、だと?」
「それって一体誰の事かしら」
いい加減ちょっと余裕ぶりすぎだ。
こっちだって折角の楽しみを台無しにされてばっかりでイライラしてきてる。
「つまりは貴様を倒せば解決という話だろう?」
「細切れになりなさい」
「ははっ」
「簡単にいきますかね」
……! 光で形作られた二振りの短剣を取り出した彼が私とメアさんの攻撃を同時に捌く。
やっぱり強い。
それに、相手にはアリギエリたちもいる。
これをイーブンにする打開策は……!
「御子! ジュデッカ様を癒すことができないのか!?」
「……ぁ」
「―――ですが」
この期に及んで魔族は助けられないなんて言わせない。
そんなどころの話じゃないんだ。
「12聖も、魔王や妖精姫もだ! 協力しろ……!」
「―――けれど、クエストでは魔神王が世界を滅ぼすって……」
「違うの、アミエーラさん。私たちもずっとここにいたんだけど、そのクエスト自体罠っぽいんだー」
「光の神って味方じゃないの!? どうしてこんな―――えぇい! こっち近寄ってくるやつ全員敵!」
混乱の中で即席の協力関係が出来る。
下がったジュデッカ様を治療すべきか迷っている御子たちと、ソレを守る12聖の双子とリオン。
混乱の中で守りを固めようとするチズルとミツル、そして妖精姉妹。
「―――今更そのような烏合の衆で何ができますか」
「「……!」」
アールの動きが速すぎた。
今まで戦った敵の中でも最速―――言いたくないけど光の速度みたいな動きで距離を詰め、身構えていた私たちを素通り……。
狙いは御子!
間に合わない。
「光の三神? はははっ。当の昔に肉体が滅び去った敗者の神々だ。当然、祈れども真の力を引き出せないことなど道理。ありもしない信仰に人生を捧げ、そしてここで滅び去るのですよ、あなた方は。ここから先は選別された特別な存在こそが全てを統べる世界。これは摂理。光のもとに集う、真に輝ける者たちの世界です」
御子たちがいなくなればジュデッカ様も治癒できない。
相手に太刀打ちする力がなくなる。
これマズ―――……、ぇ?
「もっと紳士的だと思ってたんだけど、そういうわけでもないみたいだ。ちょっと見損なったよ? アールさん。良いライバルだと思ってたんだ、本当だよ」
「……ぁ」
「そんな……!?」
「注目の的……。参るね、どうも。もっといいタイミングを見てたんだけど」
「「―――――」」
いや、いる筈がない。
まだ彼女が消滅してから数分しか経ってない。
そもそもクエストが発動した時点で、その時点で消えてしまったPLたちの再参加は翌日からになってるはずで。
でも、いる。
金色の髪に、青の瞳。
ガワだけなのかは知らないけど、サーバー開始以来の初期装備に身を包んだままの、いつも通りの彼女が。
「「ルミエールさん!?」」
「ルミ……!」
「るーちゃん……!」
「なんで!?」
「―――おねーさん、さっきキルされちゃったはずじゃ……」
彼女が御子様たちの前に立ったことで、認識外の事態にアールの動きが止まった。
ルミエールさんの短剣による攻撃で更に飛び退り……。
「―――遅いですね」
「ありゃ」
でもその動きは一流とはいいがたくて、やっぱり能力値的な限界が違う。
「ならばまずは貴女からですよ、海賊貴公子―――」
「まだそれ引き摺ってる人いたんだ―――悪夢さん、どうにかして」
「はい、はい」
一瞬で躍り出たメアさんがルミエールさんを襲った攻撃を打ち落とす。
何の疑問もなく、さっきまで敵同士だった筈の二人が並んでいる。
「ちょっと掠ったわ」
「―――回復する? ほい、”光華”」
「どうも」
………。
本当に、息をするような自然さで。
信頼とか、友情……それすら超えた、絆。
これが……。
「あーぁ、バレちゃったよ……。このまま悪夢さんがいなくなるの待とうと思ってたんだけど……」
「すっごい性格悪いわね。ゲームのやりすぎでやさぐれたのかしら?」
「遅めの反抗期さ」
やっぱさっきの友情とか信頼の下り全部忘れて。
「ね。アールさん、言ったよね? 特別だけが生き残るって」
「……。えぇ」
「光に満ち満ちた世界です。しかし、貴女は特別だ。生きる権利がありますよ」
「大丈夫……いや、この言い方じゃダメか。結構、だよ。私は知ってるんだ。本当に皆が見ているのはクエストなんかじゃない。光を目指すって言って、皆が本当に求めているものは別にあるんだって。この戦いは君たちの思うようには……多分、行かないんじゃないかな」
「何で言い切らないの?」
「ふふふ……。貴女に何ができますか? 海賊―――いえ、無色の聖女。武器を持たない、色のなき使徒」
「武器なら持ってるけど? とにかく、私が言いたいのはだね……」
ルミエールさんの長くなるだろう話が始まる前にアールは跳んでいる。
メアさんの攻撃を凄まじい速度の回避ですり抜け、今度こそ―――。
「終わりです。後衛職たる貴女では―――……、お、や?」
「うん、ごめん。今私が話してるんだけど」
―――。
え?
「これ、……は」
「照明係くん、エンチャント―――」
「……ッ!!」
アールの攻撃をコマ送りのような最低限の動きで避けたルミエールさん、彼女の武器が返す刃でアールの背を貫く。
そのまま、燃え盛る炎のように輝ける金色の光明が男の身体を突き破り弾ける。
「が、ぁ!!?」
「特別だけが生きる世界。じゃあ、さっそく誤算だ。覚えておくといいよ、アールさん。君を倒したのは特別じゃない」
……。
あ。
今、丁度解除された。
彼女が常に使っていたユニークの基本搭載能力である鑑定妨害が解除された。
「嘘……」
けど、それって。
いや、でも。
「そんなのあり!?」
「思い切りっていうか……え? そんな勿体ないことできる人いるんだ……」
「変わっても残るのだわ!? あの機能って!」
「前例なんてない……。あるわけない……! だからこそ……」
「やるかやらないかで言ったら、……それは、やるわね。ルミなら。何のためらいもなく。そんなことも抜けちゃうくらい忘れてたわ。―――って、もしかしなくてもあれって本来私用の策だったってこと?」
恐らく。
メアさんを倒すための手段だったんだ。
けど、そんなの誰が予想できるの!?
本当に、まぎれもなくそれは埒外からの一撃。
絶対に想定できない必殺。
「君を倒したのは特別な種族でも、特別な武器を持った誰かでも―――ユニークでもない」
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【Name】 ルミエール
【種族】 人間種
【一次職】 光明剣士(Lv.68)
【二次職】 道化師(Lv.1)
【職業履歴】
一次:無職(1st) 聖女(――)
無職(1st)
戦士(1st) 剣士(2nd)
光剣士(3rd) 光明剣士(4th)
二次:道化師(Lv.1)
【基礎能力(経験値2P)】
体力:15 筋力:40 魔力:20
防御:10 魔防:10 俊敏:188(+20)
【能力適正】
白兵:A 射撃:D 器用:C
攻魔:B 支魔:A 特魔:E
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「どこにでもいる、只の―――普通の、元無職の一般人さ」
思い返せば、私はここしばらくで彼女が派手な回復や蘇生魔法を使うのを見た覚えがない。
たった一瞬の隙のために誰もが欲しがる「特別」、そして彼女が何より大切にしていた二次職のレベルをあっさりと手放し、捨てる。
そんなことができるのなんて普通じゃない。
けど。
知ってる、当然知ってたんだ。
だって、彼女はルミエールさんなんだから。




