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ルーキスinオルトゥス ~奇術師の隠居生活~  作者: ブロンズ
最終章:フィナーレ編

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296/312

第25幕:一直線に火の元へ




「勇者一行、魔王城へ向けて飛び立つ……と」



 最終クロニクルの戦いが開始して、かれこれ30分ほどは経っているだろうか。


 魔族領土の最奥たるタルタロスへ向けて進む戦艦。

 サーバーでも第一である海上戦のプロ集団【おさかな天獄】が保有するそれはギルド資金が底を尽きるギリギリをせめた最高位の素材で作成されたという話で。


 乗り込む者たちもまた人界で名の知れ渡った猛者ばかり。



「現代版アルゴノーツってな。これが棺桶にならなきゃいんだけどもなー、ノアちゃん」

「蛮族さんがなんか言ってるよ? 艦長」

「ふん、まかせるのであーる―――カンケール伯に」

「おい艦長」



 いかに最強の空中戦艦とて、飛んでる間に集中砲火で撃墜されては只の棺桶。

 が、その心配があるのかは疑問で。



「いい空だ。風もいい……」



 船の舵を握るはPLではなくNPC……12聖海洋伯。

 前方、或いは下方から次々と狙い撃たれる攻撃はもちろんの事、追いすがるようにして後方から来襲する攻撃すら避け去るのは最早未来予測の域にすら達するような操舵技術。

 これが異訪者だったならどれだけ優れた技術者でも不可能だったろう。



「海洋伯の手が舵に張り付いてる間は大丈夫そうだな」

「接着剤付けとくってこと? 王さま。……船が安泰なのは良いけどさ、流石に狙い打ちされすぎだよね。ね、ユウトクン。下ってどんな感じ?」

「ん? 御覧いただければ、って感じ」



 丁度甲板の手すり越しに下を眺めていたからだろう。

 青騎士ラントさんからかけられた言葉に見たままを返す。



「―――――」

「「―――――!」」



「「……………」」

「成程、見たままだね」



 納得してくれたようで。

 覗けば下からはワーキャーとこちらを狙い攻撃を仕掛けている者たちや、乗り込もうと必死に高度を上げてくる竜騎士たち。

 しかし彼らの攻撃は当たらないし追いすがっても届かない。

 ひとえに海洋伯の操舵技術、そして何より。 



「ふははは! 追いつけぬ追いつけぬぅ! 我がギルドの資金全てをつぎ込んだこのハイドラ号に並ぶ高みへ上ってこれるものなどおらぬぅ! 来れるものならなら来るのであーる!」



 サーバー初期からずっと航空戦力を保有してた側だ。

 自分たちが制空権に優れてる分、魔族側が人界の航空戦力を侮ってたところはあるだろう。

 だが、単純にこの船が高性能すぎるというのもある。

  


「ふふ。我がハイドラ号と他の艦船の何が違うのか。なぜ地上戦に劣る魚人種たるわれらが最上位ギルドたり得るのか。その全てはこの船に詰まっている! ―――てえぇ!!」

「「うてーー」」

「どんどん放ち、敵をかく乱するのであーる」



 おさかな天獄は亜人の中でも魚人種を主として構成された一団。

 彼らのひれ手が備え付けの大砲へと次々に砲弾を込め、炸裂。

 何故やら焼き魚のにおいもする。



「過去の状況から分析するに、彼ら飛竜の平均最高高度は精々3、4000メートルに対し、我がハイドラ号は5000メートルまで航行することができる! そして速度もまた我がハイドラ号のほうが速い! したがって一度抜き去ってしまえばどれだけ追いすがろうと追いつけぬのであーる」

 


 速度と高度。

 その差があまりに大きいのは事実。

 敵を一方的に上から目線で殴ることができる……。

 したがって俺たちは前からくる敵だけを迎撃すればよく、下方からの攻撃は操舵担当の海洋伯が……。

 あとは景色を堪能するなり自由な時間だ。



「さらにさらに! 船の動力源を()()()()()()()させることで限定的ながら更なる速度を―――」



「暫定呼称魔王城へ向かってるってのに、不思議なほどにのどかだな……」

「いい眺めですね……」

「戦争の様子見ていい景色だなあとはあんまり思わないはずだけどね。風とか雷鳴もうるさいし。絶叫系得意な感じ? 勇者ちゃんは」

「結構好きです。雷とかも、格好いいですし」

「流石だな」

「おーい。しょくん? 聞いてるかねー?」



 俺がいる時点でだが、この場にいるのは何も最高位ギルドの連中だけじゃない。

 

 金属と革の装備が交じり合った旅装の少女。

 金髪に蒼い瞳、やや中世的でボーイッシュな印象を与える、装備という面ではまさに絵にかいたような勇者像を体現した容姿。

 感覚的にも勇者然としてるのか、少女剣士は雷鳴轟くような戦域もむしろ楽しんでいる様子で。



「その職に就いている者はこの場にも何人かいるが、君ほど名は体を表す存在も珍しいだろう、真の勇者」

「あはは……」



 もとよりユーシャも大会本選の出場者。

 実力を知っている面々からの評価は高く、ムーンさんも目を光らせている。


 が、当の本人は困ったように笑い。



「そもそもユーシャって名前、別にそこ意識してたわけじゃないんですけどね……」

「狙ってやったんじゃなかったらむしろ才能だよ、その辺。勇者勇者しすぎだし。困ってる人見過ごせないんでしょ? だって」

「それは―――まぁ、見過ごせないですけど……」

「「勇者ぁー」」



 ルミねぇも言ってたな、ユーシャっていう少女は近年まれにみるくらいのお人よしだって。



「ふ……。野生の勇者と言われるほどの実力も健在だ。闘技都市の初代王者、統一大会本選出場……君の能力には大いに期待しているぞ、勇者」

「お役に立てるように頑張りますよ。……ところで騎士王さんって少人数パーティー興味ありません?」

「―――うん?」

「ずっと高みって疲れちゃうと思うんです! 一緒に冒険しませんか!? これが終わったら」



 逆にムーンさんを勧誘する奴初めて見たな。

 にしてもひぃふぅ、みぃよう……。



「何してん? ユウちゃん」

「ユウちゃんやめてください。いや、聖剣使いってこんなにもいるんだなっと。探せばもっといるだろうけど」

「勇者になる条件とは、戦士系前衛職で聖剣カテゴリの武器を持ってることのようだからな。それらは未踏破エリアの報酬や大会の優勝賞品など。私や剣聖のように、特殊職としての聖剣使いはその限りではないだろうが。自然、強者でなければなれんし手には入らん。最前線に集うのも道理、というわけだ」



「さて―――来るぞ、諸君」

「「!」」

「勇者の務めというものがあるなら、果たしてもらえると幸いだ」



 防衛線を何層かに分けている影響だろう、敵の正面攻撃が激しい区画が何か所かあった。

 今回もそうだろう。

 流石に学習してきたか真正面から飛び込むように、そして飛竜の背から飛び移るようにして甲板へと降り立つPLたちは半魔。



「うっほー! 名のある者たちが揃い踏み! 貴様らが本命と見たぁ!」

「名乗ろうか! 我見えざる外套バディス様が配下―――」


「話が長いッ!」



 と、今まで黙して精神を整えていたらしい男が咆哮をあげた。

 灰の鱗からなる鎧を身に着けた戦士風の大男―――朱の大剣を手に敵を薙ぎ払う。



「竜人ロランドか……! 相手にとって不足なし」

「御託はいい、来るがいいぞ」



 ロランドさんが最強の一角である理由として、スキル攻撃などではない単なる薙ぎ払いが特殊攻撃の領域に迫るほどまでに洗練されているということがあり。 

 これに関してはムーンさんとかにもできない芸当。

 メアさんとかと同じ質だ。


 そういう意味ではもう一人。



「この輝きは誰かのために―――光焔斬!!」

「目が、ぐが!!?」



 俺やムーンさん、ラントさんのようなスキルと通常攻撃を織り交ぜる戦いの中、嫌でも目を引くのがロランドさんとユーシャの戦い方。

 美少女と野獣な両者のそれには共通点がある。


 ユーシャの戦闘スタイルはいわば、ただ光らせた剣で斬るだけ。

 下手にスキルを警戒している相手もそのエフェクト頼りの単なる通常攻撃には理解そのものが追い付かず一瞬の反応が遅れる。



「その剣ってもしかしなくても特殊能力とかないよな?」

「―――あはは」

「ただ光るだけっておもちゃじゃん」

「心なしか卑怯な戦法にも見えるな」

「綺麗ごとだけじゃ人は救えませんから!」

「開き直った……!」


「勇者として、困ってる人たちのために戦うんです。綺麗ごとで戦っていけるとも思いませんし、折れてる暇なんてありませんよ!」 

「―――成程、討伐数勝負であるか」

「いえ、言ってませんけど」

「娘よ。一番槍は吾であるぞ」

「この人いつも通り話聞いてくれないですね。じゃあお互いに攻撃をまわしていくのはどうですか? ロランドさん! 互いに背中を守り合いましょう」

「……。新しい勝負か。ついてこれるのか? 煌めきの聖剣使い」

「勿論ッ!」



 基本ワンマン、個々の我が強い面々に在っては取り纏められる存在はかなり貴重だ。

 そういう意味でも勇者と言えるかもな、ああいうのは。 



「けど私も戦いたいので……ちょっとは譲ってくださいね!」

「あ、話し終わった!? じゃあちょっと手伝ってね―――”蒼天撃”!」

「”剛尖剣(モルデュール)”」



「深淵の眷属らよ。押しつぶすのであーる」

「「!」」



 前衛が敵を囲い込み、ガタノトアさんの領域が生み出す眷属たるタコ足がどこからともなく生えて甲板の敵を叩く。

 奴らは自ら不利な戦場にやってくるばかりで。


 やっぱりこっちは問題なさそうだな。

 ……後方は。



「……………」

「ユウトさん。あっちなら大丈夫ですよ。リエルとソーナもいますし」

「だな」



 ハクロやマリアさんとともに戦場に残ってもらった面々。

 勿論範囲系最強クラスのユニークである【氷魔公】の術士リエルもまた下の戦場担当。

 混戦の中ではソーナも輝く。

 攻撃面っていうよりは逆に、ハクロとかに対する強襲を防ぐカウンターとしての役割も大きいだろう。


 

「けどどっちかっていうとチームワークが怖いな、俺らは」



 カリスマの持ち主たちではあっても、誰もが最前線を率いるタイプの指揮官ゆえ。

 全員フォワードのサッカーみたいな感じだ。



「問題ない。必要とあらば頭脳を取り換えて動ける怪物……そう考えればいいのさ。誰が消えてもその役割を引き継ぐ者はいる。だろう?」

「ム……む?」

「凄い発想ですね、ムーンさん」

「考え方だ。この戦力であれば、敵地へ乗り込むには十二分―――」

 


 と、ムーンさんが言い切るかといったタイミングで既に戦場の遥か上空を航行している船の更に高みから降ってくる影があった。



「乗船者諸君、来客だ。振り落とすなりなんなり好きにしてくれ。この船を落とされんうちにな」



 それまで無言で舵を握っていた海洋伯が告げる。

 乱入者を見て俺らも納得だ。

 成程、船が破壊されるというのは誇張でも何でもないだろう。



「あれも勇者……! これも勇者……! 楽しませてくれるッ!!」



「あの人……!」

「また暑苦しいのが来たな」

「よもや、この船に横付けしてくるとは!!」



 暗黒騎士アリギエリ―――第一次クロニクルから因縁のあった将軍格。



「飛竜の高度的に来れないと思ってたんだが、将軍格の乗ってるやつらって特別製だったりするのか?」

「かもしれんねー。事実としてここにいるって―――”天昇炎竜”!!」

「ふんぬぅぅぅ!!」



 ビーンさんの放った銃撃を大剣で容易く薙ぎ払うまま甲板に降り立つ巨躯。



「―――我、冥国四騎士が一……【輝ける鎧】アリギエリ・スム!! 我が黄金の前に全ての輝きはくすむものと知るがいい!」



「ラスボス前の中ボス戦ってところか」

「いや、格としては十分に化け物なんだけど……」

「一応言っておくが、あいつの着込んでる鎧に金属系の武器は意味ないからな」

「「おーお」」



 俺の持ってる聖剣ハイドゥグラムも例に漏れず金属属性が付与されてる。

 恐らくユーシャの聖剣もムーンさんのも、大体そうだ。



「チェンジ―――焔刀・斬鬼」



 とはいえ、上位のPLならサブ武器くらい持ってる。

 それに、やっぱ俺の愛武器って言えばこっちだろ。

 

 幾度もの強化を経てずっと共に戦ってくれた骨製の剣、今や炎属性を纏うそれを取り出した時、暗黒騎士が俺に目を止めた。



「―――。その武器……貴様、あの時の異訪者であるか」

「覚えててくれてどうも」



 第一次で戦ったもんな。

 テツのおかげで何度もランクアップしちゃあいるが、ベースとなってるのは当時Bランクだった【骨董斬鬼】。

 本来武器っていうのはランクアップできる上限が設定されてるが、よく終盤レベルでも通用する程に上がれたもので。



「成程、その剣からは感じるぞ。焔の熱が。あの御方と同じ、真なる竜の力を」

「―――そりゃあ、真竜の竜骸晶の鎚で鍛えられて……」

「否!」



「ただそれだけではなし!」

「―――!!」



 化け物の斬撃が断頭台のように襲い来る。

 一撃一撃がまともに防御すれば体力が吹き飛ぶジョーカー。

 往なすのが最善策―――それは理解していたはずだった。



「ぐく……!」



 確かにまともに受けず、なぞるようにして捌いたはずだったがそれでも身体に浮遊感があり数歩分も後方へ引きずられる。

 とんでもない筋力値の差があるな、これは。



「受けるか、人間」

「確かに、俺はそもそもこの剣が何の骨から創られてるのかを知らないな。けど」

 

「別に、知る必要もなさそうだ―――挟むぞ勇者ぁ!」

「はい!」

「まずは吾からよ!」



「同時に来るがいい勇者よ」

「はい!」



 囲んで叩く、いつの時代も基本戦術。

 呼びかけに答えるように元気に返事するユーシャは、恐らく自分の名前だと思って反射的に言葉が出るあれだな。

 単に律儀なだけかもだが。



「はぁぁ!」

「むぅん!」

「軽い、ぬるいぞ勇者ぁ!」

「ごめんなさい!」



 けど一々それやるのか?

 いかにユーシャやロランドさんといえども、やはりたった二人であの化け物相手は無理だな。

 


「王さまとユウトクンで! 僕が間を持って繋ぐから……」

「ムーンさん」

「いいだろう、合わせるぞ!」



 武術大会でも経験したこと……俺がムーンさんの次の手が分かるように、あっちもそうだ。

 互いに手の内を知っているからこそ背中を預け合い前の敵だけに集中できる。


 暗黒騎士の上段斬りを二人で同時に力を加え捌く―――そのまま角度をずらして下に流し、互いに目くばせをする間もなくスキルを発動。



「この連携は―――!!」

「王断!」

「焔刀・斬鬼零落!」



「「!」」

「すっげ……」

「あの二人に繋ぎとかいらなかったね、うん」



「ぬ、ぅ……!」

「墜ちろや―――”天落の大紅蓮”」



 俺とムーンさんの攻撃を同時に受け、流石にひるんだ暗黒騎士の身体がビーンさんの放った銃撃によって宙を舞う。

 回避ではなく防御に傾いている構成だからこそ、防御をしようとしてまともに食らったんだ。



「「今!!」」

「………な!?」



 その時、まるで図ったかのように……実際図った海洋伯の操舵技術により、大きく傾いた船体。

 備えていた俺たちとは異なり、大きく態勢を崩していた暗黒騎士がついに船の外へと追放される。



「うおおおおォォォォォォォ!!」



 墜ちていく。

 墜ちることに定評のある魔族将軍は今度も地上へ華麗な落下を見せる―――。



「ならばよし! 空中戦で雌雄を決しようではないか」



 筈だったが。

 数秒後、飛竜の背に乗り真正面に姿を現す。

 まさか追いすがってくるとはな。

 いや、構図的には先行するあっちを俺たちが追っているようにも見えるが……。



「しぶといな」

「別に相手する必要もないんだけどなぁ、正直。厄介だし」

「あの、もしこの船あの人に落とされたらこの次ってどうするんですか?」

「「………………」」

「えーーと。もしかして?」

「―――そう、誰もプランBを考えていなかったのである、とォ。おい、煽り運転辞めろ! 邪魔だよ邪魔!」


「騎士に二言はない! 我はこの正面から退く気はない!」



 退く気はないらしい。



「ねぇ、あの人いま二言はないって言ったよね」

「言ったな、絶対退かないって。つまり―――」

「あ、そういえばですね」

「む? どういうことだ」



「ガタノトアさん」

「船の速度ってもう一段階上がるんでしたよね? さっき言ってたの」

「……。成程! ―――ボイラー室、ボイラー室! オーバーヒートを発令するぅ!」



「「とびこめーーー!!」」

「ぬおおおおおォォォォォォォォ!!!?」



 さながら追突事故。

 最近のオルトゥスでは空中戦艦との接触事故が多いな。


 今に更なる推進力を経て飛竜へと迫る戦艦。

 両手を突き出し抵抗するアリギエリだが、流石のやつでも戦艦一つを丸ごと止められるほどの筋力値はなく。

 ってか数百あったところでって話。


 衝撃で飛竜もゴム(まり)のように跳ね飛ばされ、本人も吹き飛ぶ。



「―――ぉぉぉ」



 ………。

 今度こそ四騎士の一角たる男は遥か下方へと落ちていった。

 倒れててくれると助かるんだけどな、これで。


 何故やら安心できない、ある種の信頼に近いものがある。



「で、諸君。オーバーヒートという言葉の意味を理解してくれているとは思うのであーるが。当然この後落ちるであーる」



 ………。



「「海洋伯!!」」

「分かっている、このままの勢いで飛び込むぞ! 全員飛び移る準備をしておけ!」



 無茶ぶり!

 気が付けば俺たちは敵の本拠地たる暗黒領域タルタロスの中枢へと上空から侵入していたらしく。

 船は墜落する形で都市の最も巨大な建造物に飛び込んでいく。


 衝撃、轟音。

 その中で必死に足場を探して飛び移り、視界が真っ暗に染まり。



「……う、ぇ」

「よく無事だったなァ、俺ら」

「本当に全員います?」

「……。いや、艦内にいた者たちの姿が……んむ、ここは?」



 視界が真っ暗になったのは当然、そもそも降り立ったのは暗がりの空間だったらしく。

 人界に攻められている都市の内部、特に普段住んでるNPCとかがどういう状態なのかは興味あったが、実際のところ周囲に人影はなく、ものけの殻のような状態に見えた。


 いや、それともこの空間だけが特別そうだからか?



「ここは……玉座? 謁見の間、か?」



 広い空間……高い天井にはガラスと金属に彩られた金物細工があり、壁面には精緻な彫刻が施してある。

 この暗がりでは最奥までは見通せないらしく、闇の広がる前方から何かを感じる。


 ボスが現れるにはおあつらえ向きな感じだ。

 もしかして飛び込んだ先がたまたま目的地だったのか。



「―――ユウト。もしかの四祖魔公が出てきた場合、指揮は君に頼むぞ」

「え?」

「魔神王を討ち取ることが我々の勝利条件なのかはいささか疑問が残るところではあるが、恐らくそのひとつ前は確実に戦うことになるだろうからな」

「真竜ジュデッカさんだね。あれが出てきたらどう見ても火属性な彼には君が一番適役だと思うなー、ほら、勇者だし、水属性の聖剣持ちだし」

「青騎士がやればいいんじゃないっすかね」

「知ってて言わないで」



 青って名前に反して水関係ないもんな。


 ……まあ、四祖魔公。

 その辺が落としどころか。

 本来大規模レイドで挑んでなお届かないような連中がこれまでの地底の神々。


 いかに最終決戦とはいえ、こっちの大将が戦闘力を持たない御子様二人に対し、向こう側が絶対倒せないような化け物を出してくるのは反則だ。

 およそ、化け物であっても決して倒せない敵ではない筈。



「多分ボスは彼だと思うんだよね。運営がよっぽど魔族側に勝たせたいとかじゃない限りは、だけど」

「まさにな」

「……根に持ってるんですか? 第一次の事」

「凄かったですよね、あの時は」



 負けイベだったからな。

 まあ流石にだ。

 今回ばかりはそういう運営の悪戯はないと―――。



「皆」

「「……………」」



 今に会話を止める。

 ここにきて、初めて鑑定に敵性反応が引っ掛かった。


 対象は一つ……暗がりの先、すぐそこにいる。

 恐らくはお目当ての最終討伐対象―――ん?




『来たか。光に呼ばれし異界の者たちよ』

 



――――――――――――――――――――――

【Name】   

 魔神王ラーディクス (Lv.500)


【種族】  地底の火 根源の焔魔ロード・オブ・ディアボロス 


【深層位階:大神級】

 地底の大神が一。

 瞬き、広げ、命を灯す。

 地底の火は地底に生まれた最初の思考であり、意志である。


 原初の魔神はいまだ世界を灯している。

 偽りの光の輝きを打ち消さんと己をくべ、異形なる営みの奥底に眠る簒奪への怒りに焔を燃やし続けるのだ。


【権能】

・不滅なる残炎(能力値喪失)

・栄枯の薪(超速再生)

・原初の焔(不死属性)

・地底の火(物理攻撃無効)

・魔族信仰の主神(状態異常無効)

・現象(貫通無効)

・生命の炉心(眷属強化:特大)

 

【基礎能力】          

  

体力:562976   筋力:(―――) 

魔力:(―――)     防御:50~2219 

魔防:50~2497  俊敏:1~9999  

――――――――――――――――――――――



 ………。





「―――――。は?」

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