第22幕:挨拶回りのコツ
「こちら、つまらないものですが……。うん」
……。
何か違うな。
「ありきたりすぎるのかな? どうぞお納めください―――。うーむ……。まんじゅうです。お饅頭です。山吹色のお菓子です……。ふふふ、越後屋。おぬしも悪よのう」
「いつの間に受け取る側だ」
「目的変わってませんか?」
夕日も沈む下校時刻。
一人廊下の片隅で挨拶の練習をしていたらユウトたちに見られていた。
いつの間に来てたのね。
「おや皆。気付かなかったよ。いつから? もしかして消火栓の扉から菓子折り取り出したところからみられてた?」
「二度見しました」
「消火栓に入れんな」
「本当に何やってんすか……」
「それで、さっきから何やってるの? ルミねえ」
思い思いの言葉の後、ナナミが尋ねてくる。
最初から見てたならわかるだろうに。
「見ての通り、おすそ分けの練習だよ」
「「見ての通り」」
「いうほど見ての通りか?」
「うん。ほら、皆でお引越ししただろう? だから挨拶を……、けどね? 何度やっても何かが足りない気がするんだ、パーツが。ピースが」
「頭のネジだろ」
「一々突っ込んでたら本当にきりがないですルミ姉さん」
それでもちゃんと乗ってくれるからね、この子らは。
夕暮れ時の学校。
聞こえてくるのは定時を告げるチャイム。
こうして話している間にも由緒正しき帰宅部の皆が全力で部活に向かっていくのが二階の窓から見えて。
「と、約束があったよね。いつまでも若人の自由時間を邪魔してたら悪いか。教師としてはなんちゃらハラになっちゃうかもだし。今日もリラックスしてゲームできるといいね、皆。ハイこれ」
「「どうも」」
「これ、今の菓子折りの中身ですか―――あ、お茶?」
「うん、玄米茶。発芽玄米のお茶だよ。発芽米って元々ギャバの含有量が多い食品だけど、ハクホウ研究所の改良で更に栄養が強化されてる」
「ほうほう……。なワタル、ギャバって?」
「アミノ酸。神経の興奮を鎮めてリラックスさせるタイプのやつだね」
味も香ばしくておいしんだ。
単に飲むだけじゃなく、焼きたての香ばしい鮭をご飯にのっけて玄米茶でお茶漬けもいい。
これで今日も熟睡さ。
「じゃあ、皆気を付けて帰るんだよ。免許もなしに教師を名乗るようなよく分からない相手に菓子折りとかもらっちゃだめだよ。栄養食品とか健康グッズを謳ってたら特に信用しないほうがいい」
「「―――――」」
「あー、きこえなーい」
後ろから聞こえてくる様々な声を聴き流しながら車を止めてる駐車場へ向かう。
菓子折りの話だけど、最近はおすそ分けとかの文化も衰退の一途だって。
お引越しの挨拶回りに持って行っただけで不審者だなんて思われるって話もあるくらいだ。
「変化を嫌い、刺激を嫌い……。やっぱり変わらない日常がいいのかな、今の人って」
学校、帰宅、ゲーム、就寝。
学校帰宅ゲーム就寝。
休みご飯ゲーム。
今の私は毎日がそんな繰り返し。
けど、どうだろう。
かつて世界中を飛び回って、毎日が未知の連続だった日々を思い出して、その頃と比較しても……どうしてか、私は退屈を覚えていない。
むしろワクワクしているようにすら。
………。
「―――んむ、いい目覚め」
食事を終えてお風呂……歯磨きといったルーティーンを終えてベッドへ。
起きたのは空中要塞内部のベッド。
空中要塞なんて言って、既に地上へ降り立っているそれの窓からは灰色の空が見える。
周囲に人影はなく、静寂。
そこに不満があったわけじゃないけど、気付けば私はそれを呟いていたんだ。
「……。”小鳩召喚”」
おもむろに指を振り、召喚。
現れた四羽の彼らはそのピンクのあんよで白いベッドの上をホーホー歩き回る。
「ね、君たち。なつかしい、とか。もの悲しさ、とか。そういうのって面白いよね」
「ホ?」
「ホホ……」
「そう思うだろう?」
「ホホッ」
「カア」
ホーホーカーカー鳴いてる彼ら。
思えば長い付き合い。
このハト君たちが今まで私の召喚した彼らと同一個体かは分からないけど、盟友であることに変わりはなく。
最後の戦いを前に、よくある物語の展開よろしくここはひとつ腹を割って話し合おうとして。
「……んう? かぁ?」
「カア」
―――カラスだ。
よくよく見れば、私が召喚した白モフの中にもふってよりカサって感じの質感を思わせる艶と光沢のある黒いのが混じっていた。
「鳩もいいですが、私は鴉のほうが好みですね。夜に溶ける、財宝の鳥が。どうも、ルミエールさん」
「メモワール君」
何らかのスキルを使ったのか、気付けば目の前には 黒髪の男性が。
いや、今にその姿は茶髪の女性、ずんぐりの大男、眼鏡の似合いそうな紳士へとコロコロ変わる。
いつも通り姿が安定してないね。
ユニークスキルに基本搭載の能力値秘匿をしていても名前だけは確認できるからまだ彼だと分かるけど、彼の場合名前すらも偽装できたりするらしい。
そうなってくると皆仕草でしか彼をそうだと特定できないね。
「一応言っておきますが、普通の人間は動きの癖や仕草だけで相手を特定はできないのですよ」
「お?」
「―――平常運転、と。最後の戦いの前でも変わりませんね、あなたは。いえ、それとも少なからず感じ入っていたのですか? 今のは」
「どう見えた?」
「何も分からない。あなたの考えはいつも分かりませんよ」
ふふ。
「分かるだろう?」
「いえ」
「表情を見ればわかるさ」
「いえ」
黄昏ていたのさ。
私だってそういう気分の時がある。
けど、彼もまた常に姿が変わって表情っていうか顔が豊かで。
「分からないっていえば、君の目的もだね。この段階だから聞いてみたいんだけど。メモワール君って結構色々知ってるムーブをしてたじゃないか。実際どうなのかな」
「……………」
意味ありげ、思わせぶり。
今はもういない盗賊王シャア・リさんと協力してたり、初対面の時から世界の核心に迫るような何かを知っていそうだった彼は笑って。
「ゲームに没入すればする程に自分がこの世界の登場人物になったように感じられる。演じるロールは人それぞれ。あるいは、私も単に深くを知っているような知識人を気取りたいだけなのかもしれません」
「にしては本当に訳知りって感じだったけどね」
「あてずっぽうかもしれません」
「アイデアとか、神話技能に成功しちゃった可能性なんだ」
「―――お好きなので?」
「嗜む程度に。あれはいいよね、時間が溶ける」
「ッホ」
「カカカ」
ベッドの上でじゃれ合う鳥さんたちを見やりつつ共通の会話を広げる。
よくやるんだ、TRPG。
ワタル君の作ってくるシナリオは最高だし、ユウトは本当にルールの抜け穴を突くのがうまい。
エナのダイス運は神がかりだし、ナナミは咄嗟に気付いちゃうし、ショウタ君は本当に制作者の意図した罠にうまく嵌ってくれる。
「あくまで登場人物たちにたどり着かせること。おーちゃんさんのスタンスもそうらしいんだ」
「妖精王殿のことで?」
「うん。彼、最初は色々教えてくれようとしてたんだけど、今はどちらかっていうと私たち自身の手で全てを解き明かしてほしいって思ってるらしくてね。だから、メモワール君の暗躍もそういう誘導なのかなって」
「……………。分かることは―――。知っていることが必ずしも素晴らしい……とは限らないという事ですね」
「道理だ。刺激が激減するからね。けど、ネタバレとか? 最近の若い人は先にネタバレを見てから映画館に行くっていうよね」
そのほうが楽しめるって人もいるって話も。
私の言葉に彼は肩をすくめて。
「誰しも、素晴らしい物語を見たいのです。趣味趣向、好みの問題はあるでしょう。ネタバレを見てから映画を見る者、そうでない者。優越感や驚愕による脳内物質の生成。違いこそあれ、心を躍らせる何かを常に求めているのは同じ。人は感じ入り、動がなければ生きられない。感動を知らない者は、死んでいるも同じです」
「ほう」
「―――私も、かつてはそうだった。だからこそ、私は貴女に幻想を抱いてしまう。あなたは―――本当に、嘘のような真実だ。人が思い描く、物語の登場人物。空想の中から顔を出したような方だ」
「照れるね」
褒められてるらしい。
けど、そうだね。
私は登場人物だとも。
「物語ってさ。読んでる側は全部わかっちゃうけど、これが登場人物の側になるとすべてが不思議に変わっちゃうんだよね」
訳知り顔で暗躍する黒幕。
理解が追い付かないながらも奔走する主人公。
全ての情報を知りえて楽しむ読者。
どこに該当するかというと、今の私は登場人物の中の、何も知りえない一般枠。
「―――答えましょうか? いま、ここで。あなたがたが知りたがっている、起源について」
「それはとても興味あるし気になるね」
「やめておくよ。君が言ってくれた通り、今の私は読者でもなく登場人物だ。だから、自分で考えてみる。もう一度、舞台に上がってみるよ」
「―――。ふふ」
……。
彼の身体が消える。
脱出転移―――対象と自身の位置を入れ替える道化師のスキルだ。
『それでこそ、貴方だ。あなたなら、彼らなら。必ず私たちの大好きな物語の終わりを……』
こだまするようにして聞こえてきた声が途切れる。
いつの間にかまた一人……と四羽。
いつしか胴部を膨らませてベッドの上で丸くなっている彼らを見やり、えいと立ち上がった。
「感動、刺激がなければ死んでるも同じ……ね。なら、今の私こそ生きている。生きてるって素晴らしいんだ。ね、君たち」
「ホ?」
「さて、と。こんな私だけど最後まで一緒に頼むよ。全部終わらせたら……そしたらまた、前みたいにのんびりしてさ? また一から積み上げるんだ。失ったものはまたやり直せばいいんだから、ね?」
縄は抜けられず。
手を振っても鏡は出ず。
目の前の彼らが今何が見えているかも分からない。
見通しのつかない、まさに物語の中のちっぽけな個人。
今の私には見えないけど、またできるようになるだろう、見えるようにつながるだろう。
部屋を出て要塞内部を歩き、やがて外へ出る。
静かなもので。
空を見上げれば灰色―――青空の人界領域とも、黄昏色の秘匿領域とも異なる魔族領土の空だ。
でも、そのうえで敵影はない。
こちらもあちらも、攻撃を仕掛けるのは今じゃないと思っているんだ。
「あ、ルミさん」
「ルミねえ、おそーい!」
どうやら既に皆来てるみたいだ。
さっき学校でサヨナラをしたはずのユウトたちが既に集まっている。
「本当に遅かったな。どうして一番最初に帰った人が一番最後に現れるんだ?」
「うん、悪かったよ。ちょっといろいろあってね。状況は―――もう大体揃ってるのかな?」
「PLはね。12聖さんとかは……」
「この前と状況同じです」
よく分からないけど、星の御子の信託がどうのって話。
一度要塞都市で帝国側の戦力と合流した私たちだけど、ステラちゃんが不穏な未来が見えたってことで12聖の幾人かは人界領域に残ることになった。
不測の事態に対応できるようにって。
でもこれって、味方側の最強キャラたちが理由をつけて参戦できないようにするプレイだよね。
ここにもあるのか。
「マジやば。最終決戦なのにだよ……?」
「つまり、そうじゃないからこうなったんだろ、知らんけど。こんなんだが、やるしかないさ、今ある戦力で」
「悪かったねー、こんなんで」
「ルミさん、来てたか」
「やあ」
PLの波を割り歩いてくるムーン君と青騎士君へと挨拶。
今の彼らはまさにこちら側の指揮官も同じ。
「全力は尽くすさ。人界を引っ張る先導者としてはな」
「魔族側には負け越しみたいなものだからね。今回ばかりは、っていうか最後に勝てばチャラになるよね?」
ずっとPLを引っ張ってきた、誰もが認める最高のプレイヤーである彼らのやる気は十分らしく。
無論私もそうだ。
「実はね? 二人とも。私にも絶対に負けられない理由がある。手は抜かないよ。足手まといにもね」
「ルミさん……」
「よく分からないけどいつもより表情に熱があるっぽいね。これは期待だ……!」
「多分ムーンさんたちが思ってる以上に思っている以下の理由だよね? あれ」
「ああ、朔夜さんとの賭けな」
「どんだけオフ会奢りにしたくないんだよあの人」
………。
ひとしきり待ち合わせ後の会話が終わり、私たち人界側のPLは魔族領土特有の灰色の空の元、既に地上に降り立っていた巨大要塞を中心として陣を敷く。
集まったのは千人に達しようかという異界の軍勢。
特に公式から時間の告知があったわけではなく、PLがゲーム内外でこの時間に決行しようと示し合わせた結果だ。
それは既に世界の手を離れている証明か。
それとも誘導されているのに気づかない掌の上の小鳥?
どちらにせよ、彼らは自らの意思でここにいて、先へ進む。
その準備はできているわけで。
「―――本当はここに来るまでにもう一悶着あると思ってたんだけどな」
「メインストーリーだけを一直線に抜けてきた感あるね。もっと横道入ってのバトルとかあったのかな? 各国で先に四騎士を倒してから乗り込むみたいな―――、おっ」
「噂をすればって感じか」
暗黒都市タルタロス。
魔族領土の深層に存在するという情報だけは知ってた本拠の黒く長大な外郭から、数多くの影が飛び立つ。
飛竜だ。
トカゲを思わせるような流線形の体躯に、指は三本の脚。
羽と腕が一体化した翼をはためかせ宙を舞う、いわゆるワイバーンって感じの姿。
メジャーなそれらが空を埋めるほどに飛翔し、地上で開いた砦の門からもこれまでの戦いで顔を見せた亜人達が列をなして進軍している。
「この構図……どっかで」
「ね、思い出さない? ルミねぇ」
「勿論覚えてるとも」
皆同じことを考えてたのかな。
空を舞う竜、騎士……地上からの大群。
奇しくもあの時―――第一次クロニクルの、鉱山都市での戦いと同じようなシチュエーション。
「じゃあ今回もショウタは落石離脱ってことでいいか?」
「いいわけねーだろ。ふんぬぅ!」
ショウタ君が指先を振るうと細かな火花が散る。
術士系5thの【天師】シリーズは各属性を極めた最強の魔術師っていうイメージらしい。
「最強の術士だぜ? 今なら一人だってやってやれる……。竜だって丸焦げに打ち落としてやれる!」
「その意気その意気」
「期待しているぞ、迷宮攻略の第一人者たち―――来たな」
静かさなんて無縁、がやがやとした雰囲気の中で、咆哮をあげる飛竜が左右に分かれる。
空の黒波を割って現れたのはひときわ異質な雰囲気を放つ四人の暗黒騎士。
【輝ける鎧】アリギエリ・スム
【怒れる兜】エルゴ・ラース
【無垢なる剣】ガラティア・コギト
【視えざる外套】ヴァディス・クウォ
冥国が誇る四人の将軍さんが全員集合。
様子見でもするかのように敵軍が横たわる奥で飛翔―――。
「「―――――」」
と、私たちの背後の要塞で駆動音。
備え付けの砲台が回転して、高ランクの徹甲弾や榴弾からなる超遠距離の攻撃がいくつも飛ぶ。
手癖が悪い人たちがいるみたいで……それもいい。
灰色の空を裂くような砲弾が流星となって遥か頭の上を通り抜け、無数に敵陣へ―――放たれた攻撃はガラティアさんの大斬撃に裂かれ、ラースさんが展開した途轍もない範囲の蒼炎に溶け消える。
どれだけ強力な技でも万全の状態、不意打ちでもない今は意味がないね。
「有効射程で考えて、あそこら辺の兵器はこちら側が攻め込まれた時の保険ですね」
「先に向こうに攻めさせてってのもアリなんじゃない?」
「ほいほい来るわけねーだろ」
「―――ん。動かないね、あっちも」
両軍出揃ってのにらみ合い。
人界側がいわゆる寄せ集めなのは見たとおりだけど、魔族側は軍属みたいな感じだよね。
現れた四騎士が指揮を執るなり攻撃の指令を下すなりするのが自然。
けど、彼らも動かないのは……。
何かを待っているかのような。
『―――世界には闇ありき』
お?
『―――地底の底より出でた光の残滓。簒奪の道化よ。残滓を宿せし来訪者よ』
『あるべき場所へ戻り、そして眠れ』
………。
「直接脳内に……!」
「最近増えてきたな、この手の相手」
「ジュデッカさんの声でもないね。四騎士さんでも」
この世界では聞いたことのない声色だけど、聞いているだけで畏怖を感じさせるような、それでいて体にひりつくような感覚が去来する。
電気信号でそういう感覚を覚えるようにされてるのかも。
……感覚的には地上に這い出ようとしてた地底の神様たちと似てる。
「きっと、あそこにいるのだろう。現代まで存在し続ける、最後の大神が」
声をあげ、今に自軍から白銀の全身鎧を纏い青の肩掛けを身に着けた騎士が進み出る。
我らが騎士王ムーン君だ。
例のごとく仲間の士気をあげる演説を披露してくれるらしい。
「人界異訪者諸君、敵だ。今や隣人となった彼らが、我々の目の前にいる。我々の呼び鈴に応え、だ。ならば、我らがすべきはなんだ?」
「「……………」」
「答えは簡単だろう。早速魔族領土に生きる者たちへ呼びかけてやれ。……こほん」
「えーー、隣に引っ越してきた―――」
「お茶目!?」
「ここでボケるのか!?」
「王様がまた乱心だ!!」
「うーむ、見事な。ああいうのをしゅーるぎゃぐっていうんだね?」
「存在自体がシュールギャグがなんか言ってんぞ」
そういえば学校で彼とも挨拶回りの話したんだ。
或いは引き摺っちゃってるのかな。
我らが騎士王は少しも声を震わせず、兜の奥で笑いもせずそれをやり切って。
「さて。……いつも通り、道は我らが拓こう。君たちは我々の足跡に続くがいい」
「否」
「先陣を征くは我らよ」
「あ、じゃあ後ろついていきますんで……うへ」
騎士王、竜人、魔王。
三大ギルドの団長が立つ。
環境が変わっても頂点に君臨し続ける生粋のゲーマーたる彼らが武器を取り。
「戦闘、任せて」
「「……!」」
そんな彼らより一歩前に出る影。
今や人界PLの誰もが認める最強の象徴、白の剣聖。
人波への恐怖をも克服した少女はまさに無敵となり前へ、前へと歩く。
「この前は船ごと火だるまにされたような気がするであーるが」
「気のせい気のせいッ! 出遅れてる暇なんかねーっつぅの。頼むぜノアちゃん」
要塞から次々に航行を開始する戦艦たち。
敵方にも飛竜がいるように、こちらだって今や航空戦力は充実だ。
魔族側に同じような兵器が現れないところを見るに、人界領域固有の職業っていうのはあるんだろうね。
「さ、姉さん手伝ってちょうだい。ムーンさまにいいところ見せるのだわ」
「大分はっちゃけてますね、あの方」
「ギャップ萌えですねー?」
「危うく間に合わなくなるところでしたわ。―――皆さん、背中はお任せください」
「「うォォォォォ!! マリア様ー!」」
「うっせ」
「本当にうるさいでござるね。誰でござるか歌姫殿と一緒に戦いたいっていった馬鹿チャラ男は」
「ぅおおおお、マリア姫ぇぇぇぇ!」
「「うええええええい!」」
マリアさんは相変わらずの大人気だ。
レイド君のところの盗賊さんたちも大多数が既にファンになってるみたいだし、もう親衛隊といっても過言じゃない。
「―――ふふ。よくよく見れば、どこも知り合いばっかりだ。いつの間にいろんな人と出会ったんだね、私も。ついちょっと前まで無職だったのに」
「アウトドア無職だったからですね」
「とりあえずは背中を任せるに足る仲間たち、だろ?」
まさしくね。
これなら任せられるよ。
「じゃあ、任せたね。私要塞戻って応援してるから。さぁ、皆―――ふぁいとー」
「よしきた拘束!」
「何のための奇策だバカねぇ」
「とりあえず前線に引っ張っていきましょう」




