第16幕:普通の少女にさよならを
普通の女の子だって。
だから、しょうがないんだって。
昔から自分で自分にそう言い聞かせてた。
私は普通の女の子だから自分の力でできることは少ないし、流れに逆らうなんてできないって。
大勢、大局、流行……。
流されるままに、普通の良い子として振舞っていれば何も問題ないんだって。
………。
たった一年ちょっとで変わっちゃったんだ。
「ヴァディスだ!?」
「ヴァディス・クウォが出た!?」
「想定外―――っていうかこんなの想定できない! 魔族側の数が多すぎますよォ!! なにあの種族たち……トロールって!? ゴーストって何!」
「このままでは陣形を抜けられる―――」
「頭上注意! 来るぞ!」
既に瓦解してるね。
申し訳ないし忍びないけど、これって戦争だから。
「追撃開始。臼砲中衛隊、合わせ―――撃って」
「撃てーー!!」
数の利を生かして敵を左右から挟み込み、そのまま包囲殲滅。
建物の間を縫い前衛を囲んで閉じ込め、守られている後衛は遠距離で内側から……臼砲の名の通り、放たれた迫撃が敵を磨り潰して倒す。
個々の実力が大局へ影響を与えられなくなるのが軍勢と軍勢の戦いだ。
どれだけの武勇があっても、結局個人の力でできることはたかが知れているから。
特にこんな大規模戦闘の前では、ね。
仲間を引き連れ、都市の家屋を通り過ぎながら駆ける。
暗黒騎士の一団はイナゴのように駆け、刻一刻と目標が切り替わり、次々と進撃する。
背後に続く足音は数十どころか百を超え、逃げていく敵の中で敏捷の低いものから次々に飲み込む。
「ね、メア。前に配信してた人がいたんだけどね? ネタ枠で、体力と防御力に全振りしてた人」
「それってどっちの陣営?」
「人界側。―――何考えてるかわかるよ」
「あらエスパー?」
誰だってわかる。
絶対試し切りしたいとか思ってる顔だもん。
もう目の前の敵とかは只の雑草や路傍の石程度にしか思ってなさそうだ。
もうちょっとくらい目の前の相手に集中してあげてもいいと思うんだけどな、私は。
「くらえヴァディ―――、ぁ!?」
「よし。えーーと、何の話だっけ。で、上位の術士さんたちを集めて一斉に自分へ魔術を放ってくれっていう実験をやったらしいの」
「―――呆れたわね。結果なんて……」
そ、当然の結果。
その人はいともあっさりキルされて跡形もなくなった。
体力200や防御300とか、そんな能力値でも、だ。
最上位職に到った私たちでも、結局のところ個人が弄れる範囲でどれだけ能力値を特化させたところで、完璧になることなんて絶対にありえない。
現実は当然、ゲームの中でさえ真の一騎当千なんてものは―――。
「大規模なのが来るぞ―――皆は障壁展開! メア!」
「ちょっと後ろで待ってなさい、皆」
「「……!」」
皆が身を護るようにして展開する壁をすり抜け、私とメアさんの二人で敵陣に飛び込んでいく。
結局私たちでも当たればキル。
当たらないために色々考えた末、こうなるんだ。
仲間内で密集して防御してるより、敵陣に飛び込んでおいたほうが安全だって。
そのまま倒せるし一石二鳥だし。
「そうね、クオン。今の話なのだけれど……結局どれだけ強くても個人には限界がある―――いいえ」
「違うわ。教えてあげる」
すぐ真横から声が聞こえた。
4th【魔装剣士】から5th【双迅剣鬼】へと駆け上がった私たちの騎士―――敵にとっての悪夢の化身が戦場をかける。
「今―――、……ぁ!?」
「ひっ……まさかナイトメ―――」
「双葬・夢幻刃」
走り、避け、往なして斬る。
仮想世界ゆえの身体能力を完全に引き出し、頭上を舞い、双刃から繰り出されるすべての斬撃が致命攻撃として処理される。
言葉にすれば、単に連続した動作を繰り返しているだけ……それだけの筈なのにあまりに。
「退屈ね。せっかく王国攻めてるんだから、早く剣聖ちゃん来ないかしら」
都合10人以上を一息に平らげた彼女は命からがら遠く逃げていく敵を見やりながらつぶやく。
「戦いをひっくり返すような存在っていうのはいるのよ? 皆。私のことだけど」
「―――はあ……」
「ひえぇ……。さっすがぁ……」
「ほんに味方でよかった。メアさんを仲間に引き入れたのは姫最高の功績といっても過言ではナーイ」
「「ないなーい」」
はいうるさーい。
「ほら、とっとと蹂躙。命令」
「らじゃー」
「らじゃらじゃ―――そーら道開けろー! ”流星雨”!!」
敵陣へ飛び込んで切り崩していた私たちに遅れて到着した仲間たちが次々と追撃に参加、敵防衛拠点を破壊していく。
平和な戦争っていうのかな、本当に。
痛みもなければ命も軽い……ゲームの中だからこそのテンション。
意味もなく叫んでみたり、武器をぶんぶん振ってみたり、それだけで楽しく笑える。
「えへ……。やっぱり、どんなゲームも勝ち戦だと楽しいですよね、団長」
「ん」
切り裂いて進む。
既に都市中枢は制圧済み、逃げていく人たちも既に残党。
勝ち戦といって問題ないはずで、ここからの巻き返しはほぼ不可能。
なのにどうしてなのかな。
「ね、ミーア。私たちって結構な割合で勝ち戦してるはずなのに、どうしていつもおいしいところ食べてる実感がわかないのかな。魔族側が戦争で負けたりしたこと未だに一回もないのにさ」
「やっぱりどうにも主役は人界って風潮ありますよね。マイノリティの排除は酷いと思います」
「やっぱ声上げてかんとな」
『しょうぐーーん!』
『こっちおされてまーす! 戦力プリズ!』
早速声が上がってる。
二次職【演説家】のスキルを通し、弱者の悲鳴が。
「ナチュラルに弱者認定するじゃない。流石団長ね、弱き者の気持ちが分からない」
「結局同類なのでは?」
「メアクオ……ふふ、ふふふ……」
「……こほん。メアさん、向こうの援護」
「了解。じゃ、後で合流ね? 皆」
「え、姉御さん?」
「俺ら氏も援護とか―――」
「いらないわ。じゃあね」
「―――行っちゃいましたね」
「問題ないでしょ、メアさんだし」
「姉御っすからね。……いいんすかね? こんな余裕の蹂躙で」
良いも悪いもないよ、戦いだし。
ここまで来るまで、私たちだって何の苦労もなかったわけじゃない。
むしろ何もなければ狩られていたのは私たちだった。
もともとPLの少ない魔族側―――単純な戦闘では勝てても、軍規模の戦闘では数に劣る私たちは順当に数の暴力に沈むだけ……。
じゃあどうするか。
それをずっと前から、それこそ数か月前から考え続けて。
「アルゴール、ナービス、お願い。そのまま両脇から詰めて。私たちは正面から行くから」
「―――リョウカイ、クウォ殿」
「あなたのためならば」
魔族や半魔が少ないのなら、他のところから助力を乞えばいい……。
明らかに人間でも半魔でもない、体長2メートルを優に超える巨躯。
半透明の身体を持ち、浮遊する人型の影。
獣人に近い特徴を持ちつつも、より魔獣に寄った一メートル程度の体躯。
後から続いてきた仲間たちは見た目も種族もバラバラだけど、目的は一緒だ。
これが私たちの答え。
当たり前だけど、異訪者はずっとゲームの中にいれるわけじゃない。
そういう意味で、常にこの世界で行動できるNPCをうまく使うことが戦いを有利に進める戦略の一つだ。
「人界側がPL同士やギルドでの連携に力を入れていたのと逆、ですね?」
「この戦争のため、だから彼らを仲間に入れておく必要があったんですね~。あったまいい~~」
「ヨイショやめて」
人界側のクエストが主に都市やそこに住む個人から受注するものをメインとしているように、私たち魔族側は同族、或いは意思疎通の取れる地底の異種族から依頼を受け動くことが多かった。
それはコボルドであったりトロルであったりゴーストであったり、その他にも蛇人のナーガとか鳥人のハルピュイアとかもいて。
彼らは魔族領土限定で生きる様々な異種族たち。
クエストを通して紡いできた信頼がここに形となっているんだ。
「団長! 勢力支配80パーセント超えました! 圧倒的ですわが軍は!」
「よろしい」
さあ、もう10パーセントも制圧すれば、晴れてこの王国専農都市は魔族側のもの。
けど……なんか今のミーアの言葉で不安が過る。
どうしてかはよく分からないけど、なぜか危うい気が……具体的にはフラグのような。
「……!」
いや、その不安の正体がわかった。
前方を制圧していた俊敏に優れるコボルドの一団が、突如台風に飲まれたように後方へ纏めて吹き飛ばされた。
風属性魔法……? それも大規模な。
けど強力で広範囲を巻き込むような上級魔法であるほどに展開は目立つし撃つまでに時間がかかるようになってるはずで。
予備動作なんか見えなかったけど。
―――いや。
魔法じゃない。
「まさか―――あれって……!」
「ちょうどメアさんがいなくなった時にかよ!」
さすがに皆でも気後れするか。
「―――。下がっていて、ミーア。他の皆も、そのまま左右から分かれて侵略続行を伝達。亜人さんたちと連携しつつ確実に前線をあげるの。このままなら絶対に私たちが勝つから」
「姫?」
「俺らも。流石にあれは一人じゃ……」
「ううん。私も、今は試したいの。この力を」
「「……………」」
うん、やっぱり私だけじゃなかった。
皆、すごく愉しそうな顔で進んでいく。
全員が「陛下」に与えられた新たな力を全力で使ってみたくてうずうずしてるんだ。
私だって、今ならあの人達を。
今の私なら、或いは彼らにすらも。
相手も近づくこちらに気付いたようで、すり抜けていく者たちから注意を外して私を見ている。
私も愛武器である黒の長剣を握り歩む。
「冥国四騎士ヴァディス。貴様の首級上げさせてもらうぞ、12聖」
「―――四騎士、だと。異訪者が……? 否、面白いッ!」
――――――――――――――――――――
【Name】 ベルビュード・アラクラン
武尊
【種族】 人間種(age:132)
【一次職】 武尊(Lv100)
12聖天 灰燼の拳仙
【職業履歴】
一次:戦士(1st) 軽戦士(2nd)
拳闘士(3rd) 武仙(4th)
【基礎能力】
体力:150 筋力:200 魔力:――
防御:200 魔防:200 俊敏:300
【能力適正】
白兵:EX 射撃:E 器用:AA
攻魔:E 支魔:E 特魔:E
――――――――――――――――――――
灰色の髪に、100歳を超えてる人間とは思えない筋肉量……背丈はメアさんより10センチは高く。
つまりは私よりずっと高い。
灰燼の拳仙アラクラン。
王国所属の12聖……ここも王国の重要都市だし、いる可能性は十分にあった。
遅れてきたのか温存しすぎて気を逸したのかは分からないけど、士気が高い今に来てくれたのは幸運だ。
彼はおそらく戦士系の中でも肉弾戦闘に特化した前衛構成―――っていうかあまりに脳筋な能力補正。
魔力ないし……ハクロちゃんと同じ、魔法に全く依存しない戦闘スタイルだね、絶対。
でも、脳筋なのはこちらも同じ。
最初から最高火力で行かせてもらおう。
「いざ、尋常に……」
石畳に剣を走らせながら肉薄、切り上げるモーションをそのままスキルとして発動。
「―――極・炎刃滅却ッ!!」
「むぅぅぅぅぅぅん!」
ほとばしる黒焔、瞬時にその危険性を察知したらしいNPCは石畳を蹴り抜き後退、跳ね返るように再度距離を詰め拳を突き出してくる―――けど、間合いが遠い……いや。
「圧気羅刹!!」
「……!」
とっさに躱す―――弾かれた空気が弾丸みたいに身体を掠めてって後方を吹き飛ばす。
食らってたら一発で終わりだったかもだ。
魔法? いや体術?
「成程―――見たこともない技だ。拳でそんなことが!? 流石は12聖……!」
「なつかしき暗黒騎士! アリギエリは息災であるな! しかし異訪者よ! この程度の攻撃捌けぬようでは彼奴ら三騎士に並んだなどとは言わせぬぞ!」
会話できてるかな、これ。
剣と拳が交わり、現実ならサクッと切れるそれは金属同士をぶつかり合わせたような音に変わる。
5、10……たちまち応酬は20を超え、
合間に挟む黒焔も当然の権利のように拳圧で吹き飛ばしてくるし、……ハクロちゃんもそうだけど当たり前のように炎とか捌いてくるよねこのレベル。
今の私なら見える……けど肉体自体が固いのか、体を切れても武器が弾かれてる。
目を通して入ってくる相手の体力の減りも明らかに斬られた時のそれじゃない。
「いかに防御が高いとて、明らかに無理がある! その肉体の強固さはスキルだな!?」
「貴様こそ、なかなかの業物を……。であれば……!」
「「!」」
拳の突きと剣の刺突が重なり、互いの身体が弾かれる。
……。
回転―――そのまま斬撃。
武器の重みがある分、遠心力でこちらのほうが再攻撃への復帰は早い……!
これなら渾身の一撃が……。
「……なに!?」
「”金剛武尊”」
嘘……!? 致命攻撃の定番、首を全力で切り裂いたはずなのに鎧みたいに……。
武器が弾かれ―――、やばっ!!
「剛棘・打神鞭!」
鞭のようにしなる脚が横一文字に全てを散らす。
とっさに滑り込ませた剣をしたたかに打ち付ける、破城槌のような一撃。
まともに受けずちゃんと往なしたはずなのに、あまりの風圧に吹き飛ばされかける威力……。
けど何とか寸でのところで守りが間に合って―――。
『【黒晶剣サブナーク+2】が破壊されました。再使用まで3分間のクールダウンが発生します』
「……な!」
防御に走らせた剣が硬質な音を響かせると同時にそんなアナウンスが聞こえた。
―――武器破壊!?
今までそんなの一度も見たことなかったのに!
「我が金剛の拳は頂を超える。いずれは天に座す主へと届かん!!」
「―――――」
強制的に収納された武器。
一時丸腰になってしまった私へ、拳仙は容赦なく両の握りこぶしを振りぬいてくる。
流石に最強NPC。
ずっと人界の頂点に君臨してきた守護者―――。
「……! ”炎獄掌”……!!」
「ぬ……」
いや、まだだ。
私もまた拳を振る―――生じた朱の焔に相手の踏み込みが止まる。
「元より装備の性能で勝とうとは思っていない」
たった一瞬の硬直を利用し、すぐさまサブの剣を取り出す―――ルミエールさんに教わっておいてよかったAC……高速タイプ。
確かに一番強い愛剣が使えなくなるっていうのはゲーマーとして嫌な気分だ。
けど、武器ならほかにもある。
もとより、私が狙うのは……。
「勘違いするな、拳仙。前時代の遺物よ」
「武器とはあくまで私の力を補強する一つの要素。それだけのものに過ぎない。貴様とは違い、幾度も持ち代えることができる」
「―――ぬぅ……」
「12聖とは既に幾たびも戦っている。私は―――」
――――――――――――――――――
【Name】 ヴァディス・クウォ
【種族】 半魔種
【一次職】 暗黒卿(Lv.120)
【二次職】 鑑定家(Lv.11)
【職業履歴】
一次:戦士(1st) 暗黒卿(――)
二次:鑑定家(Lv.11)
【権能】
四騎士・見えざる外套
レベル上限解放(Lv.+20 体力+100)
地底の火(真)
レベル上限解放(5th)
【基礎能力(経験値2P)】
体力:130 筋力:275(+28) 魔力:100
防御:100(+23) 魔防:35 俊敏:200(+30)
【能力適正】
白兵:AA 射撃:AA 器用:D
攻魔:A 支魔:E 特魔:E
――――――――――――――――――
「今の私は、貴様よりも強い……!!」
「く、お……!」
再び技の応酬が復活……足りない部分は能力値で彼へ食い下がるまま拮抗、そのままギアを上げ続ける。
人界よりも圧倒的に数が少ない私たちは魔神王様から力の一端を預けられている―――っていう設定で向こう側のPLよりも強力な強化をもらってるけど、恐らくそれだけではやっぱり12聖には到底勝てない。
けど、今の私なら。
統率個体として、私にはさらなる上限解放と固有の権能も付与されているから。
本当にボスの性能だ。
良いの? これ。
最後だからって大盤振る舞いしすぎじゃないかな。
「我、12聖の名において! 同格たるあれら以外に負けるわけには―――、異訪者という異物に我が負けるわけにはいかぬ―――”金剛武尊”」
「神尊現身―――如来掌……!!」
動きから行動を予測……って。
最近、ようやく私にもメアさんの言うそれがわかるようになった。
「暗黒騎士に一度見た攻撃は通用しない―――それは当然として……」
「―――――」
「初見だから当たらなければならぬ道理もない」
超広範囲に渡る制圧攻撃―――多分、むしろ超近距離が安全。
現実ならいざ知らず、ゲームなんだからボスにも弱点があるし、攻撃には安置があって当然。
直感を信じるまま、間合いを近すぎるほどに詰めて。
「―――焔刃貫突!!」
「が……。ぁ」
相手の首を刺し貫くと同時、刀身から吹き出る大質量の爆炎。
本来は大型魔獣を内部から破壊するためのスキル。
「最強というものは常に入れ替わる。前時代の猛者たちもいずれは風化する。単に世代交代が訪れただけだ」
「―――見事なり、四騎士……」
たった一言残し、炎に飲まれた人型は完全に消え去った。
12の人界の星、その一つが今この瞬間に燃やし尽くされ、消滅したんだ。
「灰燼の拳仙討ち取ったり……!!」
「「―――――」」
宣言と同時、明らかにこちら側のNPCの士気が大きく上昇する。
敵将個体を撃破するっていうのはPLはともかくゲーム内に強く紐つけられた彼らの趨勢に大きく影響するらしい。
けど……。
私、本当に一人で……。
「あ。制圧度90超えてる」
「―――あなたの活躍ですよ。よもや単身で彼らの一角を討ち取るとは……」
………。
「そっちに任せてればもっと危なげなく終わってたんだろうけどね?」
「どうでしょうか」
現れたのは私たちと同系統の鎧を纏った女性NPC。
兜はなく、髪は白くて長く……光そのものを束ねたような大槍を持っている。
「つい先日までならいざ知らず、今の貴女やメア殿に勝てるかと聞かれると、私にもその確証はないように思えます」
「……そんなにかな」
「異訪者とはまこと、恐るべきものと。ラースもそう言っていました」
どうだろうね。
数こそ12聖より少ないけど、遥かに凌駕する力を持ってるのが三騎士だ。
彼女……無垢なる剣ガラティア・コギトのような。
「貴女にはそれだけの資格があった。力を十全に活かせるだけの才能と努力があった。それだけですよ」
「ありがと、ティア。―――さ、最強の仲間も来てくれたし、次の重要都市もそっくり制圧しちゃおうか」
都市を一つ制圧した、だから戦争が終わるわけではない。
じゃあ次だと、彼女に背を任せてまた進み始めるだけで。
「クウォ」
「んー?」
「今更ですが、私に背を預けられるのですか?」
「……。仲間、でしょ?」
振り返った先で見た彼女の顔は呆れ八割……残りの二割は、ちょっとわかんない。
けど私の希望では嬉しそうな顔だったかもしれない。
前にもルミエールさんたちと話したけど、この世界に生きている人たちと私たちの違いってもう一つの世界に居場所があるか、ないかだけ。
本当にそう思えるくらいに、彼らは真っ当に存在している。
確かにそこにいる。
―――分からないけど。
どうしてか、アリギエリもエルゴも今この場で私を後ろから刺そうってつもりはさらさらないみたいだ。
本当に狙いは分からないけど、それでも私にとって三人は大切な仲間なんだ。
―――それに……。
「王国全制圧出来たらジュデッカ様絶対に喜んでくれるよね。ね? ティア」
「な、なぜ私に振るのです」
「褒めてほしいでしょ? しょ?」
「クウォ……!」
ジュデッカ様を。
あの方のことが大好きな三人が、本気で背信行為に走っているのかは本当に疑問だ。
「いいよ、ティア。いま、私たちは同じ目的で動いてる。隣を歩いてる。今はそれでいいの。いこ? ひとまず私たちで王国を制圧するの」
「―――、本当に貴女は……。今ならば、なぜ元帥閣下が貴女にその力を与えたのかがハッキリと分かりますよ」




