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ルーキスinオルトゥス ~奇術師の隠居生活~  作者: ブロンズ
最終章:フィナーレ編

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第15幕:大制圧会議




「っていう感じ。つまりはそういう事なんだけど……、どう思う?」

「「……………」」

「どうって聞かれてもなぁ……」



 怒涛の展開だったとは自分でも思うよ。

 けどあまりに密が濃すぎて困っちゃうね。


 向こうで起こったことを順々に話して、気づけば夕暮れ。

 こんなにもずっとゲームの話をしているのは非常勤とて先生としてどうかと思うよ。



「PLが5thに覚醒してるって話は俺たちも聞いてる。告知もなしでそん時の状況もまちまちだから本当に色々と条件が設定されてるんだろうけど、大体はあのポンコツガイドだ」

「何らかの拍子でシアちゃんが新たな力が欲しいかって言ってきて、それにハイって答えると力を与えられて最上位職に覚醒するって」



 まるでゲームだね。



「ゲームだからな」



 特に試験の予定があるわけでもない優斗が参考書を開きながらあきれたように呟き、同じページを解いているらしいワタル君がうんうん頷き、ショウタ君はうんうん悩ませている。


 放課後勉強会という体の集まりだ。



「現状、シアちゃんの好感度が影響してるんじゃないかって話ですよね」

「前は実体化してるのあんまり見なかったけど、最近は街中で会話してる人がどんどん増えてるよねー」

「そうなんだ……。とにかく私はそういう感じだよ。ユウトたちは―――この前聞いたけど、上位層の人たちと集まってるんだって? 一緒に行動してるの?」

「防衛で共闘してるだけだ。近いうちに攻め入るかもしれないけど。ムーンさんたちの方針では帝国側、マップ北部のほうから攻め入るって話になってる」

「彼って大学受験じゃなかったっけ」

「この前終わったって言ってたぞ」



 ゲームと並行して受験勉強に励める要領の良さ。

 これは実際に経験した人だけがわかる凄みだ。



「そうなんですか?」

「分かんない。高卒だから」

「説得力があるんだかないんだか……」

「この学校のOGな時点で少なからず勉強漬けとかはやってるはずなんすけど?」

「いいんだよ。ルミねぇは残りの人生道楽で消費してるようなもんなんだから」



 ひどい言いようだ。

 私たちの時代はオルトゥスみたいなゲームはなかったし、自然と三人で集まって勉強してただけで……。



「誘惑も少なかったから身が入ったんだよね。じゃあ、次は約束通りスミカちゃんね」



 水を向けると、聞き役に徹しつつ黙々と英語の例文を解いていた彼女が顔をあげる。



「私のほうはもう大混乱ですよ。ほかの三人はタルタロスには戻ってこないで人界側を攻めるのに集中してるらしくて。だから私も会わなくて、詳しいことも聞けてないですし」

「結局敵対はしてないの」

「なんか流れでなあなあになってる雰囲気あります」

「流していいのか? それは」

「一大問題だと思うんだけどね……。さすが将軍」



 信じてた仲間が敵方だったって展開は結構くるものがある。

 10歳過ぎくらいからできるゲームとしてはかなりレベルが高いだろう。

 ハクロちゃんとかも、もしアルバウス様が本音を伝えないまま消滅したらかなりトラウマだった可能性とかあったし。



「すみちゃんは大丈夫なの? 抱え込んでない?」

「トラウマは抱え込まないほうがいいですよ」

「大丈夫! 私もう迷わないから……! ね? ルミ先生」

「ふふ」



 ゲームもまた一つの世界、色々と考えさせられるところがある。

 さすがにトワが自身の野望や願いを乗せて世に送り出した世界……人を成長させる力というべきものがあるんだ。

 壁を乗り越えれば心も強くなれる。

 スミカちゃんは乗り越えたんだ。



「大丈夫だよ。私は私の目的に沿って戦うから。安心して、皆。私ができる限り穏便に犠牲なく人界三国を制圧するから」

「「―――ん?」」

「PLはともかくNPCさんたちは可能な限りキルしない方針で各都市を順々に制圧して、そのまま皇国へ到達。降伏させる」

「ラスボスじゃねえか」

「ラスボス系ヒロインだった……!」



 おかしいな、思ってたのと違う。

 進化したら大分過激派だった。

 けどスミカちゃんが元気そうでよかったっていうのもそうだし、これでいいのかな。



「よくはないでしょ!?」

「結局敵じゃないですか!」

「ふふっ。まあ……だから―――次も勝つのは私だからね、優斗君」

「冗談、あん時はあくまで第三勢力にやられただけだ。しかもお前庇って。負けたわけじゃない」



 バチバチだ。

 実力的には暗黒騎士さんが圧倒的だけど、優斗がそれをどうひっくり返すかは私も見てみたいもので。

 


「―――ね、皆」



 バチバチが終わると、スミカちゃんが私たち全員をぐるりと見まわす。



「この戦いが終わったら、全員で打ち上げやりたいな。やっぱり一人はさみしいからさ」

「「お」」

「それって最高ってコトじゃん!」

「はい、絶対にやりましょう。いつも通りルミ姉さんに場所を―――」



「それ、勿論私も参加していいのよね」



「え」

「ま!?」



 ―――んう?


 背中にグリと何かが押し当てられる。

 指だ。

 人差し指で押された……、そしてその声は。



「あ、サクヤだ」

「放課後勉強会かしら? 偉いわね、皆」



 目の前にいるのは確かに彼女だった。

 失った青春を取り戻しにでも来たのかな。



「青春なら十分堪能させてもらったわよ。あなたたち、案内してくれてありがとうね」

「「はーーい!」」

「ルミちゃん先生! 案内してきてなんだけど、このスーツの格好いいおねーさん誰なの!? ずるい!」



 どうやら下校中の生徒たちに案内させたらしい。

 既にメロメロの彼女たち……サクヤは学生時代から男の子にも女の子にもモテるタイプだった。



「サクヤは私の幼馴染でこの学校の卒業生だね。今はハクホウワークスの警備部で仕事してる。勉強もできる」

「超一流企業!」

「キャリアウーマンだ!」

「ルミ先生の友達ってそういうひとばっかんですか!?」



「あ、サクヤさん……」

「打ち上げ以来ね、スミカ」

「えへへ……」



 サクヤがスミカちゃんの肩をポンと叩く。

 後であざが出来てないか確認してあげないと。 



「でも、どうして?」

「おつかいよ。トワに頼まれて理事長先生に会いに来たの。久々に母校に挨拶しに来たっていうのもあるけれど。で、勉強を名分にゲームの話? 打ち上げかしら」

「諸々が終わったら、だけどね。その時は稼いでる大人さんの奢りってことで」

「「うわぁーい!」」



「ルミ、稼いでる大人って?」

「それはもちろん……」



 ………。

 


「皆、絶対に勝ってね。魔族を制圧するんだ」

「負けられない理由ができたわ。やるわよ、スミカ。人界を滅ぼす」

「「……………」」



「大人のほうがムキになってやがるわい」

「なんでそんなに嫌なのさ。この人ら幾らでもお金持ってるはずなのに……」

「分からないのか? これが金持ちの道楽ってやつだ」




   ◇




「相変わらず教皇庁ってひっろいねぇー。また来れるなんて」

「皇国に関しては私たちも一定顔が利くはずなのですがね」

「んだ、んだ」

「その件では結局負けたようなものでござるけどネ」


 

 皇国教皇庁、用意してもらった会議室に集められたのは人界でも名の通ったPLが沢山。

 ランキング一桁台のギルド団長たちが過半数はいるし、それ以外でも個人で知られる実力者たちもいた。

 その中で、円卓を率いてやってきたムーン君が代表して皆をぐるりと見まわしている。



「さて。皆が静かになるまでに10分かかった」

「「―――――」」


「王さま、冗談なのか本気なのか分かりにくいから」

「む……。では、そろそろ始めようか。ここに集まってるのは膨大な数いる人界領域のPLのほんの一部でしかない。ゆえ、その全ての者たちの代弁というわけでは決してないことを了承しておいてくれ」



 皆が進行役である彼の言葉に耳を傾ける。

 ムーン君の言う事ならそうなのだろうという不思議な言霊があるんだ。



「今回発令されたワールドクエスト。おそらく、最後の戦いになるだろうが。人か、魔か。どちらが先に相手の最重要拠点を攻略するか、という話。どちらが有利、不利という話ではないだろう。数に勝る我々人界側も、どのような理屈か敵側のようなものとなった12聖の対応に追われることになっている」

「ね。皆も知ってるとは思うけど、知らない情弱さんには是非とも広げてほしい。互いの陣営には現在、第三勢力に属している人たちが沢山いるんだ。それも、主戦力たる最強の実力者たちばかりが」



 やはり情報として聞いてはいたんだろう。

 驚いた感じの空気は薄かった。


 12聖さんたちもその神様の力を受け取った側と断った側で割れているんだ。

 白刃の剣聖アルバウス。

 蒼穹の魔砲カンケール。

 黒鉄の機銃ライブラ・バベル。



「その他目撃として王国の12聖である灰燼の武仙、翠玉の魔杖、―――話にあった海洋伯と剣聖殿を含め、当初の王国側の12聖は全滅ということですね。もれなく敵だ」

「逆に、帝国側では目立った動きは何もない。平和なものだ」 


「けれど、魔族側も……ヴァディス以外のNPC、三騎士は全員が第三勢力に手を貸してるのだわ」

「僕たちはこの目で見たからね、間違いない。ね、ビーンさん」

「ん、保証する」



 アミエーラさんたちがつなげてくれる。

 一緒に根源領域に同行してくれた彼らは内情をほとんど把握しているから話がしやすくていい。



「しかし、いまだ魔族側であるということも間違いないだろう。人界側への攻撃では今や常に三騎士が出てきている。立場を利用しているのかはまだ分からないが。12聖と三騎士、現状我々はそれらを同時に相手にする必要がある」



「重ね、暗黒領域タルタロスには魔神王もいる」



 これまでの戦いで、地底の大神が途轍もない力を持っているというのは既に分からされている。

 魔神王さんはそんな大神の中で唯一現代まで封印を逃れた神様だ。

 果たして、勝てるのか……? と。



「およそ、魔神王を倒さずして最重要拠点であるタルタロスを奪取することはできないと考えていいだろう」

「で、ここまではまぁサービス開始初期から想定できた物語の終幕だと思うんだけどね?」

「さっきから話している通り、第三勢力。本当の勢力図は単純な一対一で決まるわけじゃないかもしれないってコトね」



 やはり、ジョーカーであるのがアールさんだ。

 彼は本当に何を目的として暗躍しているのかさっぱり見当がつかない。

 だけど、12聖や三騎士を従えていることからも第三勢力の中核的存在と考えることができるだろう。



「そら、あれだろ。俺らが首尾よく魔族側を倒した後、パチパチ拍手しながら現れる系」

「黒幕ってコトね」

「ってことで、ひとまずその暫定黒幕候補その一さんに話を聞いてみようか。大勢の見ているこの場で。―――ユウトクン」



「おっけールミエール。シア、この戦いの黒幕は?」



 指示を受け、彼が情報を打ち込んだ相手はまさに人界側全てのPLのヘルプに応えてくれる万能ガイド。

 今に大部屋に浮かび上がる白の影。

 

 

『大変だね。ついに人と魔の最終決戦。どちらが勝ち、どちらが負けるかを決めるわけだ』



 現れたのは、ミニディクシアさんことシアちゃん。

 元王国の御子であった彼女はある一件によって復活を遂げた神様の依り代となり、その後すぐに消滅した結果今のミニマムになった。


 ゲームの進行上で不明点が出たときに利用できるナビゲーションの役割……運営からの説明。

 人界側の全てのPLと繋がっていて、こちらが望むならどこにでも現れる。

 そのうえ、一人の相手ではなくその場にいる全員とお話しできるっていう素晴らしいお友達機能を持った存在。

 

 なんだけど。



「悪いけどね、シアちゃん。私らは君のことをすごく疑ってる」

『私が願ってるのは闇ではなく光だからね。そういう意味では魔族側は倒したいかなぁ、確かに』

「ぶっちゃけるなぁ」

「けど元が光の神々の一柱だし、当然と言えば」

「おーちゃんの話でもありましたねー。光は地より昇る。地底の神々を裏切り、天上の神々へと味方した創世神の一柱。しかし、やがては天さえも……」



 黒幕は創世神話の神々の一柱。

 それは間違いない。 

 


「その、簒奪の神様こそ私たちが最後に倒すべき相手。さて、何か言うべきことはあるかな?」

「自白させる気満々じゃねーか」


 

 この問い詰めタイム。

 表情一つ変えずそれを聞いていたシアちゃんはやはり動揺なく頷く。



『確認―――条件は揃ってるみたいだね。私の覚えてる全てを教えてあげる』



『いまや神の残滓に過ぎない私にもね? 記憶があるんだ。くらい、くらい……地底の底からそれは上ってきた。本当に小さなものだったよ。で、私たちはそれを受け入れてあげたんだ。仲間にしてあげた。地底の神々に虐げられていたソレを家族として迎え入れて、背中を任せた』



『そして、私たちは地底の神々を倒すことができたんだ。そこからは―――記憶はほとんど残ってない。ただ、覚えているのは……私たちは最後に裏切られた。完全に不意を突かれて、それの一人勝ちを許してしまったのさ』

「「……………」」

『でも、おかしなことがある。だって、その簒奪者は一人勝ちしたはずなんだ。今頃世界をその手にしていても全くおかしくはない。なのに、どうしてか遥か昔に起きた戦いからどれだけ時間がたったかもわからないような現代にあって、いまだそれは達成されていない』



 何かが足りない?

 とにかく彼女が言いたいのは自分はやってないという事らしく。



「―――どう思う? おーちゃんさん」

「うむ、精霊に確認した。この分霊に紙としての権能は残されておらん。力の片鱗こそ感じるが、大神には全くもって足りておらん。カスだ」



 精霊に確認……便利な言葉だ。

 私も今度照明係くんでやろう。

 けどつまり……、この話が導き出す答えは。



「私は信じてたよ、シアちゃん」

「「おい」」

『どうも、どーも』



 おーちゃんさんがこの様子ってことは、おそらく本当にシアちゃんは違うのかもしれない。



『皆、思ってるだろう? じゃあ誰が……と。だからこそこの機に話を聞きに行くんじゃないか。現代まで地上に残り続けている唯一の大神。根源の焔魔ディアボロス。直接本人に聞いてしまえば解決だね、一件落着だ』



 まぁそれもそっか。

 根源の……。



「「―――え」」

「魔神王の名前ってそうなの!?」

「さらっと特大のネタバレかましてくるじゃん」

『で。さらに戦力が必要だろう。なら、君たち異訪者が嫌が応にも皇都シャレムへ来たくなるようにするんだ。協力できる。妖精王くん。君にはそれができる。だろう?』

「うむ」



 話がどんどん進んでいく。

 今にシアちゃんとおーちゃんさんの身長差コンビが並びあい手を広げる。



「「ぱんぱかぱーん」」



「寄ってらっしゃい見てらっしゃい、製品版転職の神殿おーぷんだ」

「レベル上限に到達した4thの諸君。余が君たちに新たな力を授けようではないか。各々窓を開くがいい」

「「………?」」



 ………。



「「おおおおおおォォォォォォォお!!」」



「一瞬で空気変わるじゃありませんか」

「やっぱり皆早く最上位職にクラスアップしたかったんだろうね」



 完全に流れが会議から変わったね。

 ユウトたちも息巻いて最前線に潜り込んでるし。



「生命創造者……なんかすごいのきたー! 傀儡師の上位なんだよね!?」

「天塞騎士……防御力特価職かぁ……」

「神霊演奏者でーす! おーちゃんと同じ!」

「銃士! 銃士の最上位職は……!? ん? 魔弾射手って確か……」

「おォ、七海覇者……! 海洋伯とおなじであーる!」


 次々と仲間たちが上位職へと覚醒していく。

 っていうかルイちゃん4thだったんだ。

 私やマリアさんと同じだらだら組だと思ってたのに。

 


「皆大層な力を手に入れちゃったね、マリアさん。変化できない私たちはいよいよアイデンティティ喪失の危機だよ?」

「あなたはアイデンティティの塊でしょうが!」

「うむ、うむ」

「ほら、騎士王さんもそうだそうだって……。そういえば貴方もでしたわね」

「もはや戦闘面では役に立たぬかもしれんな、私は」

「いやむしろ支援系に近いっていうあなたのユニークでバリバリの武闘派だった今までが異端なのであって……」



 私たちユニーク同盟、ね。



「あ、「ところでムーン君。今後の方針は?」

「ルミさんたちお陰で教皇庁を正式に拠点として開放できたからな。後顧の憂いはない」



「ここからは皇国と王国側、二面作戦。両側から魔族領土へ攻め入るという方針だ」

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