夢章一 7『全夢』
「コロリア……?」
真夢はその名前を繰り返した。
この名前に対する彼の最初の感覚は、まず見知らぬ響きだった。この名前は彼の経験の中にまったく存在しておらず、まるで今まさに作り出されたばかりの響きのように思えた。文字の形としても、人間関係としても、自分はこの名前を一度も聞いたことがなかった。その名前の意味を考え合わせても、記憶のどこにも該当するものは見つからなかった。
「そうよ。」
コロリアは彼から五歩の距離に立ち、両手を胸の前で重ねていた。
「……お前は何がしたいんだ?」
真夢の声は先ほどよりいくらか落ち着いていた。指はまだ震えていたが、少なくとも完全に制御を失っていたわけではなかった。
「安心して、あなたに何かをするつもりはないから。」
コロリアは首をわずかに傾げ、数本の墨色の髪が肩から滑り落ちた。その顔に浮かんだ笑みが、しばらくの間、空気の緊張を和らげた。
「今、あなたにはたくさん質問があるんでしょ?」
「……お前は一体何者なんだ?今は一体どういう状況なんだ?」
真夢は額の冷や汗を簡単に拭い、数回深呼吸をした後、視線をコロリアの顔に固定した——まるでその注視を何らかの【錨】として使うかのように。
あるいは、彼がコロリアの顔を見ている限り、自分の意識があの広大な書架に持っていかれることはないのだろう。
「そう見ると、どうやらあなたもだいぶこの環境に慣れてきたみたいね。」
「環境……?何を言ってるんだ?」
「あなたの目に問題がなければ、このずらりと並んだ本棚が見えるはずよ。これらの本にはたくさんの内容が記録されている。良いものも悪いものも、本当のことも嘘も、未解決の謎の真相までも、すべてここの本棚に静かに置かれているの。一冊一冊が完全な世界であり、一冊一冊がそれを読むことができる誰かを待っているのよ。」
「……」
「でも、それが一番面白いわけじゃないわ。一番面白いのは——あなたがあなた自身が思っているよりも、もっと早くにこれらの本を見たことがあるかもしれないってこと。」
それを聞いて、真夢の眉が微かに動いた。
——既視感だろうか?あるいはもっと早い時期の、何かの記憶の断片か?
彼がそれを考えているうちに、コロリアの指はゆっくりと胸の前へと戻り、十本の指が組み合わされた——儀式的な収束の動作のように。
「そしてここは私の縄張り……いや、厳密には半分は私のもので、半分はあなたのものよ。」
そう言って、コロリアは人差し指を伸ばし、真夢を指し、次に自分自身を指した。同時に不気味な微笑みを浮かべた——冗談のようにも、真剣のようにも。
「無駄なことは言うな。お前は一体何者なんだ!」
真夢はコロリアの意味不明な行動と、聞けば聞くほど混乱する発言を見て、次第に苛立ちを覚え始めた。彼にはあのような微笑みを解釈する時間も忍耐も残っていなかった。
「あらあら、随分と短気なのね。世間話くらいしてもいいじゃない……か?」
コロリアは首を少し傾げ、わざと間延びしたような口調で言った。
「……」
真夢はコロリアの問いかけに答えず、じっと彼女を見つめた。その視線は一度もそらされることはなかった。両手は体の横で握り拳になっていた。
「……分かったわ。それじゃあ、私の正体を教えてあげる。」
そう言って、コロリアは背筋を伸ばし、肩に垂れた長い髪を簡単に整え、ゆっくりと両手のひらを合わせた。指を揃え、掌を向かい合わせて——その動作は急がず、どこか儀式的なものを帯びていた。
「改めて自己紹介するわ。私はコロリア。ただのコロリアよ——」
彼女は合わせた両手をゆっくりと開き、指を広げ、掌を上に向けた、まるで今まさに完了した何かの動作を彼に示しているかのように。
「——そして同時に、私はあなたの守夢人でもある。」
その言葉を聞いて、真夢は思わず目を見開いた。
「守夢人……?」
この言葉に対して、真夢は決して馴染みがないわけではなかった。
暇な時間には、彼は夢に関する小説や雑談をよく探し、自分の症状を説明できる手がかりをそこから見つけようとしていた。そして小説から、こうした架空の内容について多少は知っていた。
——守夢人。
その名の通り、夢が侵食されるのを防ぎ、夢の境界を安定させる存在。彼はそれをただの物語の道具であり、作者が物語を展開させるために作り出した概念に過ぎないと思っていた。
しかし、コロリアがその言葉を自然な口調で口にした時、彼は奇妙な現実感を覚えた。その言葉が、虚構から彼が向き合わざるを得ない何かへと変わったかのようだった。
「心配しなくていいわ。あなたを傷つけるようなことはしないから。それに私はあなたの守夢人だもの。あなたを傷つければ、私も影響を受けるのよ。」
おそらく真夢の表情の変化に気づいたのだろう。コロリアは慌てることなく、自分の【立場】について説明した。その口調は先ほどよりいくぶん真剣だった。
「この場所は厳密には部外者には開放されていないの。そもそも部外者が来ることすらないわ。」
そう言って、彼女の口元が再び弧を描いた。
「だって独り身の女の家に、男が簡単に入ってこれるわけないでしょ~」
そして彼女は軽く肩をすくめた。藍灰色の長袍の裾がその動作に合わせて揺れた。
「うるさい。これは一体どういうことだ!さっきのあの違和感もお前が引き起こしたのか?」
「自分の体調を人のせいにしちゃダメよ。あなたが誰よりもよく分かってるでしょ?自分が夜に何をしたか……そうでしょ?」
コロリアの口調にはからかうような響きがあった。彼女は目を細め、口元の笑みをよりはっきりと浮かべた。
真夢はその言葉を聞いて、眉間の皺がさらに深くなった。
彼女が言う「夜にしたこと」——過剰摂取のことか?それとも、その前に頭に浮かんだあの「薬の量を増やす」という考えのことか?
もしこの女が彼の夜の行動を知っているのなら、彼女は現実世界で起こっていることを知る手段を持っているということだ。彼女は何か知っているかもしれない。この症状の根本的な原因についても。
「ということは————」
「先に言っておくけど、あなたが夜に変なことをしたのかどうかは知らないわよ。」
真夢が口を開こうとした瞬間、コロリアは手を振って遮った。
「でも私が理解できる範囲で言えば、さっきのあなたの様子は明らかに薬の過剰摂取によるものだったわ。何の薬かは知らないけど、その薬は間違いなくあなたにとって助けになっているんでしょ。」
それを聞いて、真夢は一瞬言葉を失った。
コロリアの言う通りだった。先ほど本棚の前に立っていた時の過剰な感情の高ぶり、心拍数の上昇、視界の縁のひび割れ感——それらはすべて抗うつ薬の過剰摂取時の副作用と一致していた。もちろん、あの果てしなく広がる書架陣がもたらした視覚的衝撃も大きな要因だった。両者の相乗効果が本当の原因だったのだろう。
「……お前は俺が何を飲んでいるのかまで知っているのか?」
「具体的な薬の名前までは知らないわ。ただ、あなたの状態から見て取れるだけよ。私の専門は夢であって、薬じゃない。」
その答えに、真夢はそれ以上問い詰めなかった。
これ以上問い詰めても何も得られない気がした。彼女が話したいことはもう話したし、話したくないことは明らかにまだ話す準備ができていないようだった。
再び周囲を見渡すと、あの幾重にも重なる本棚は依然としてそびえ立ち、高く見上げても終わりが見えず、遠くまで続いていた。しかしあの圧迫感は、先ほどほど彼の息を詰まらせることはなかった。おそらく彼が少し慣れたか、あるいはコロリアの存在が彼の注意をそらしたからだろう。
彼女はまるで一本の【錨】のように、彼を視覚の洪水から一時的に引き上げてくれていた。
しかし真夢は、その錨が信頼できるのかどうか、確信が持てなかった。
「それで……お前が守夢人で、ここがお前の縄張りだというなら、つまりここは夢の世界ということだな?」
「うーん……厳密には、そうであり、そうでもないわね。」
「……そうであり、そうでもない?どういう意味だ?」
「あなたたちの理解に従えば、夢を見るときに出会う光景が夢の世界ということになるわね。もちろん、それはあなたたちの理解の範囲内での話よ。本当の夢の世界はそれだけじゃない。あなたたちが出会うあの光景は、ただ夢の縁に過ぎないの。」
「夢の縁……」
真夢はその言葉を低く繰り返した。
彼自身もよく【現実の縁】や【夢の縁】という言葉を使って自分の状態を表現していた。しかし自分が適当に作った代用語に、まさか本当の意味があるとは思わなかった。
「つまり……今の私は夢の縁にいる状態なのか?」
「いいえ、私の呼び方で言えば、あなたは今、全夢の中にいるのよ。」
「全夢?」
「もっと深い層の夢のことよ。普通の人が夢を見ている時、彼らの意識は散らばっているの。水の上に浮かぶ油の粒のように、触れればすぐに崩れてしまう。でも今のあなたの状態は、まるで水中に完全に沈み込んでいるようなもの。肌は水の温度を感じられるのに、呼吸は妨げられない。あなたの意識は完全で、起きている時とほとんど変わらないの。」
真夢はそれを聞いて、内心驚いた。
自分が夢に入った時、あんなに強烈な引きずられるような感覚があったのはそのためか。彼はそれを薬の副作用による錯覚だと思っていたが、彼女の説明によれば、それはむしろ彼が「完全に」この場所に入った証拠だったのだ。
「あなたが摂取した薬には精神状態を安定させる効果があるんでしょ?自分の状態に少し注意を払えば、そのことに気づけるはずよ。今のあなたは、現実世界のあなたとまったく変わらないわ。」
その通りだ。あの薬には確かに精神を安定させる効果がある。そして彼が夢と現実を区別できなかったのは、おそらく過剰摂取によって精神が「完全投入」状態になりすぎたため、判断の基準となる境界を失ってしまったからだろう。
真夢は自分の顔を触った。指先に伝わる感触は確かに現実的で、皮膚の弾力や顎のラインの輪郭も、現実の自分とまったく変わらなかった。
「それが、あなたが私を見ることができ、ここに到達できる理由でもあるの……そしてあなたは私に初めて会ったけど、私は初めてじゃないのよ。」
「……つまり、お前はずっと前から私を観察していたということか?」
「誰かを監視するのが趣味なわけじゃないわ。たまにあなたが何をするのか見てるだけよ。」
コロリアは軽快な口調で言った。しかしなぜか、彼女の口元の笑みは目元までは届いておらず、その顔にはかすかな悲しみの色が浮かんでいた。
「だってあなたはいつも突然消えちゃうんだもの。こっちはそのたびに心がポッカリ空っぽになっちゃうんだから~」
「もし誰かが俺の夢の中でこっそり覗いているのを知っていたら、俺はむしろすぐに目を覚ましているさ……」
コロリアの甘えたような愚痴に対して、真夢は嫌そうな顔を浮かべ、口では容赦なく言い返した。
口ではそう言いながらも、真夢の頭の中では別のことが考えられていた。彼女の言う「いつも」とはどういう意味だ?もし自分が初めてこの「全夢」と呼ばれる場所に到達したのだとしたら、彼女はどうして彼が「消える」のを何度も見てきたと言えるのか?
「それで?お前がここに現れたということは、何か用事があるんだろう?」
「さすが医者ね、考え方が慎重なのは~」
コロリアは両手を胸の前で重ね、指先をそっと絡めた。その表情は、先ほどの遊び心のある状態から徐々に引いていき、より真剣な集中へと変わっていた。
「じゃあ、あなたに話しておくわ——私があなたに会いに来た目的を。」
コロリアの声が低くなった。
真夢はコロリアの目をじっと見つめ、彼女の言葉を待った。
自分が答えを聞く準備ができているかどうか、確信はなかった。
——しかし彼は、何も得ずにここから去るつもりはなかった




