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DFrontier-夢遊辺境  作者: V-CO
第二夢章:共夢

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夢章二 25 『霧中夜』

 ……………………


 …………


 ……


 風。


 風が霧の一角を裂き、建物の輪郭がその奥から緩やかに浮かび上がる。月明かりが遠くの鐘楼の円形の文字盤に落ち、立ち込める白い霧の中にぼんやりとした光の輪を描く。まるで水蒸気の中に浮かぶ遠い灯りのように。通り全体が白い霧に包まれ、昏い黄色の街灯が石畳の一部を照らし、その光は霧の中で細長い光の柱となって微かに揺れている。


 通行人が通りの両側を行き交う。その足取りは落ち着いており、整然としている。通りの中央を時折馬車が通り抜け、蹄が石畳を叩く音と車輪が地面を軋む音が交互に絡み合い、馬車は霧の中から現れ、その音を携えて再び霧の中へと消えていく。通行人たちは礼服をまとい、数人連れや一人で、濡れた石畳の上を歩いている。靴底が路面を踏む音が周囲で次々と響く。


 これらの人々はまるで精密な指令に従って動いているかのようで、一歩一歩、一瞥一瞥に、あまりにも整然とした秩序が宿っている。この場所はもともと指令化された世界であり、空気の一粒一粒、光の一筋一筋までもが、見えない脚本に従って流れている。


 そこへ、招かれざる客が現れる——


「ここは……?」


 真夢は通りの脇に立ち、視線をゆっくりと周囲の通行人に走らせ、その中の一人の視線を追って霧の彼方へと伸ばし、再び近くの交差点を通過する馬車へと戻す。車輪が石畳を軋むたびに細かな水しぶきが上がり、灯りの下で一瞬きらめき、すぐに霧の中へと消えていった。


 これらの光景は明らかに初めて見るものだが、なぜか真夢はその中にどこか見覚えのあるものを感じていた。陌生さが心の中で占める割合はごく小さく、ほとんど無視できるほどだった。


 おそらくあの映像のせいかもしれない。彼は本当に以前この場所に来たことがあるような気がした。あるいは心の奥底にある不安が、脳に何かの既視感をでっち上げさせたのかもしれない。そうすることで、見知らぬ地に足を踏み入れた自分にも、何とか足がかりとなる場所を見つけられるように。


 いずれにせよ、彼はこの奇妙な感覚をひとまず置いておくことにした。当面の最優先事項は人員の確保だ。


 その時、隣の霧の塊が微風に揺れ、ゆっくりと両側に裂け、その奥から形を成しつつある影が現れた。その影は最初地面に蹲っていたが、やがてゆっくりと立ち上がり、霧の隙間から周囲を見渡す。その視線が通り、鐘楼、街灯をかすめ、最終的に真夢のいる方向に固定された。


「あの……遅刻はしていないよね?」


 影が白い霧の中から現れると、その正体は夢映だった。


「もちろん、むしろ良いタイミングだ。」


 彼女の顔が霧の中に現れたことで、真夢の心の中の不安もいくぶん和らいだ。


「今は何をすればいい?」


 夢映は真夢の隣に立ち、周囲を見渡した。


「まずはこの霧から離れる。それから、安全が確認できてから次のことを考える。」


 真夢は目の前の白い霧を見つめ、頭の中で今後の計画を練り始めた。


 今のところ、通りの脇を歩く通行人に危険は全くない。これらの人々の存在感は非常に薄く、少し注意して彼らの進行ルートを遮らなければ問題はない。通りを走る馬車も同様で、うまく避ければ大きな問題にはならない。


 最大の問題はこの白い霧だ。一見問題なさそうに見えるが、危険は往々にして最も見過ごされやすい場所に潜んでいる。それに、この白い霧を初めて見た時、真夢は心の奥底に何か引っかかるものを感じていた。


 彼は霧の中に必ず何者かが潜んでいると確信していた。そしてその存在は決して友好的とは言えないものだと。


「でも……その前に、一つ処理しなければならないことがある。」


 そう言って、真夢は左手の方を見た。白い霧の中からもう一つの黒い影が現れる。小さな、猫の形をした影だ。


 その影の主が霧の中から姿を現すと、二人はそれが誰なのかをはっきりと見た。全身が漆黒の毛並み、胸には菱形の白い斑紋があり、黄褐色の瞳孔が昏い黄色の灯りの下で微かに光を放つ。現実のあの黒猫とまったく同じだ。ただ、その立ち姿には動物とは思えない落ち着きがあり、何か古い存在が猫の外殻を被っているかのようだった。


「カク、間違いないな?」


 真夢は歩み寄る黒猫を見て、先に口を開いた。


 黒猫はその名前を聞いて、体をはっきりと硬直させた。それまで真っ直ぐだった尾がわずかに締まり、その目は茫然としたものから鋭いものへと変わった。


「……どうしてそれを知っている?」


「はっきりとは分からない。ただ、ふとその名前が浮かんだだけだ。それに、カクという名前は本当にお前の名前なのか? それともその名前にお前は何か関係があるのか?」


 真夢の返答は明確とは言えなかったが、それは事実だった。彼はそのまま正直に伝え、さらにカクに問いを投げ返した。夢映は黒猫が口を開いたのを見て、しばらく信じられないというように凝視していたが、すぐに状況を飲み込み、会話の邪魔をすることはなかった。


「カクは確かに俺の名前だ。だが、お前の言い方だけでは、お前が敵ではないと信じるのは難しい。」


 自分の前に立つ真夢を見て、カクは体をわずかに弓なりにし、前足を石畳の上で少し動かし、いつでも逃げられる準備をした。


「それは俺の職業倫理を疑っているってことか……なら、もっとはっきりと言おう。だがその前に、どうして最初から俺を敵だと思ったんだ?」


「……」


 真夢はカクから数歩離れた場所に立ち、両手を自然に体の横に垂らし、余計な動きは一切しなかった。


 カクはしばらく彼を見つめ、急に近づいてくる気配がないことを確認してから、ゆっくりと口を開いた。


「そんなの決まってるだろ、お前の体から漂う匂いがひどく悪臭を放っているからだ。」


「おいおい、口を開くならもう少し選んだ方がいいぞ。その言葉はどういう意味だ?」


 その評価に、真夢の口調には思わず棘が混じった。


「事実だろ。お前のその死の匂いは鼻が曲がるほどだ。よくもまあ今まで生きてこれたものだな。」


「……死の匂い?」


 真夢は自分の袖の匂いを嗅いでみた。ただの普通の衣料の匂いで、日常の洗剤の残り香がかすかに混じっているだけだった。彼は体を横に向け、隣の夢映にも近づいて嗅いでもらったが、彼女も首を振った。


「無駄な努力だ。普通の人間には嗅ぎ取れないものだ。」


「……そういうことか。」


 そう言われて、真夢は一瞬言葉を失い、何とも言えない気まずさに包まれた。彼は視線を周囲の街並みに向け、環境を観察することでその居心地の悪さを紛らわせようとした。


 カクはその様子を見て、心の奥に困惑を覚えた。


 一見平凡な医者で、どこか冷淡に見えるが、一緒にいてみるとそれほど厄介な相手ではないように思えた。しかし問題は、彼が初対面だというのに、自分の名前を正確に言い当てたことだ。それ以上に気になるのは、彼が自分が夢に入って言葉を話すことにあまりにも驚きを見せなかったことだ。


 隣の少女の方がはるかに正常な反応を示していた。さっきの驚いた表情こそが、初めてこの状況に直面した時に見せるべきものだ。ただ、彼女の性格は年齢よりも落ち着いて見え、少なくとも突然の出来事に簡単に打ちのめされるようなタイプではないようだ。


 もう一つ。


 この死の匂いは明らかに彼から発せられている。まるで死体のそばを離れたばかりかのように強烈だ。しかし彼は何事もなかったかのようにここに立ち、その呼吸も平穏で、その匂いは彼とは無関係であるかのようだった。


 ——この男は一体何者なんだ?


 そう考えながら、カクは自然と真夢の方へ二歩近づいた。相手が脅威となる行動を取らないことを何度か確認してから、彼の足元に止まり、顔を上げて彼を見た。


「……真夢、で間違いないな?」


「もちろん。どうやら我々と行動を共にする決心がついたようだな?」


「当分はな……それに、君は夢映だな?」


「は、はい……よろしくお願いします……」


 一匹の猫に落ち着いた口調で名前を呼ばれ、夢映の返答にはまだいくぶん確信のない震えが混じっていた。


 二人の名前を確認して、カクはようやく少し警戒を緩めた。しかし、警備の糸は依然として張られたままで、最大から半減した程度だった。


「とはいえ、ここの状況はまだ未知数だ。これからは慎重に行動した方がいい。」


「それで、何か考えはあるのか?」


「この霧をできるだけ避けて、この辺りで何か異常な現象がないか探す。ここに導かれたということは、この場所には必ず何らかの有用な情報や手がかりが隠されているはずだ。それを掴めれば、もしかすると————」


 話の途中で、真夢が突然言葉を止めた。


「……どうした? もしかすると何だって?」


 カクの問いかけに真夢は答えず、彼はその場に立ち尽くし、カクを無視して視線を虚空に向けた。そしてゆっくりと手を上げ、人差し指と中指をこめかみに当て、眉をひそめた。


「……何の用だ。」


「真夢、新しい情報があるの——」


「ちょっと待って、今誰と話しているんだ?」


 カクの尾の先が軽く揺れ、その口調には明らかな苛立ちが混じっていた。


 真夢は気を散らさず、その姿勢を保ったまま、頭の中でクローリアと交信を続けていた。


「大丈夫だよ、カクちゃん。真夢さんはクローリアさんと今後のことを話しているだけだ。すぐに終わるから、心配しなくていいよ。」


 夢映はしゃがみ込み、カクの方に半歩近づき、まるで驚いた子猫をなだめるような口調で言った。この猫の実際の年齢は彼女よりもずっと年長かもしれないが。


「……そういう問題じゃない。」


 カクの視線は真夢から離れ、夢映の顔に留まった。彼は心の中で密かに彼女のことを記録した。


「ところで、君たちはここに来られるということは、やはり何か普通とは異なる能力があるのか?」


「うん……まあそんなところだよ。でも正直なところ、今の状況自体がすでに常識を超えてるよね。」


「それもそうだな。でも——」


 ここで、カクは夢映の声も同じように途切れたことに気づいた。彼女はまずまばたきをし、視線を一瞬虚空に放ち、それから真夢と同じように首をかしげた。


「ごめん、カクちゃん。ちょっと待っててね。」


 そう言って、夢映は立ち上がり、真夢と同じように前方を見つめた。


「夢に入れる人間ってのは、みんな突然立ち止まって独り言を言うのが好きなのか……」


 その光景に、カクは仕方なくため息をつき、この二人が終わるのを待ってから次のことを考えることにした。


 …………


 …………


「……夢喰いがこちらに向かっている可能性があるのか?」


「あくまで推測よ。というのも、一箇所で非常に短い異常信号が検出されたの。本当にそうかどうかは私にも断言できないわ。シミュレーション感知は、あなたと夢映のような——この場所には存在しない生命体だけを対象としているから。」


「ではカクはどうして感知できないんだ?」


「さっきも言ったわね、シミュレーション感知は『この場所には存在しない生命体』だけを対象としているの。あなたの言うカクという奴は明らかに夢の世界の原生生物に属しているわ。感知できなくて当然よ。あなたが視覚を共有してくれれば、おそらく彼を感知できるかもしれないけどね。」


 クローリアの声が真夢の頭の中で響いた。


「……もし視覚を共有するとしたら?」


「可能よ。ただし、一つお願いを聞いてもらう必要があるわ。」


 クローリアが条件を出すと言うと、真夢は断ろうと思ったが、彼女の知識庫が確かに広範囲であることを考え、妥協せざるを得なかった。


「……どんなお願いだ?」


「簡単なことよ。一つ質問に答えてくれるだけでいいの。」


「それだけでいいのか……?」


「ええ。でも今じゃないわ。いつにするかは……私の気分次第ね。」


「はいはい……だから早くしてくれ。」


 真夢は文句を言いながら、通りで絶えず渦巻く霧に視線を向け、足元のカクに視線を落とした。


 その視線に気づいたカクは何か用かと感じたが、特に口を開かなかった。


「うーん……ああ、夢獣類ね。」


「……夢獣類?」


「そう。夢獣は夢の世界をさまよう種族で、生まれつき多くの言語に触れているから、当然話すことができるの。それに、夢獣は擬態が可能な生物でもあるのよ。神話上の生物や体格が極端に異なる生物以外なら、犬や猫、兎など様々な生物に変身できる。最大の変身体型は人間程度ね。でも今のところ、彼は猫の姿を選んでいるようね。」


 クローリアの話によれば、カクの能力は真夢の想像をはるかに超えているようだった。


「それで、これから強敵と戦うことになるのか?」


「その点は安心して。その時はあなたの手に印を顕現させるわ。ただし言っておくけど、敵以外の人間——あなたと夢映は絶対にその印を見てはいけない。絶、対、に、よ。」


 クローリアの口調は先ほどの軽やかで遊び心のあるものから、一瞬で偽りのない厳しさへと変わった。


「その能力があるなら、なぜ直接僕たちをアリュエスの遺産に送らないんだ? 攻撃力のない印で敵を欺くよりも、そっちの方が確実だろ?」


「シミュレーション感知を維持しながら、視覚共有と印の顕現を行い、さらにあなたと会話する——それだけで私の限界ギリギリなのよ。あなたたちを送り出すには、少なくとも十五分から下手すれば一時間はかかるわ。」


 その言葉に、真夢の体が大きく揺れた。


「ということは、いつ命を落としてもおかしくない場所でそんなに長く待たなければならないのか?!」


「そういうことよ。シミュレーション感知は以前にあなたに施したアンカーを使って直接位置を特定できる。でもここに扉を開けるには、何百億もの異なる世界からこの世界を選び出さなければならない。それでも範囲を絞った上でね。」


「それは……分かった。ご苦労様……」


 これらの情報を得て、真夢はゆっくりと手を下ろした。


 クローリアの提供した情報を総合すると、この場所はフロサスと呼ばれ、その様式は明らかに欧風である。霧がどこから来るのかは不明だが、霧の中に危険な存在が潜んでいることは確かに言及されていた。また、危険な状況が発生すると、周囲の他の通行人——つまりこの世界に固有の生物実体——は説明のつかない駆逐力を受けて、周囲が一瞬にして死の静寂に包まれるという。


 さらに、カクの種族についてもクローリアが説明を加えた。


 しかし、真夢と夢映、そしてカクがこの場所に来た理由については依然として不明であり、クローリアもそれについては説明できず、何らかの外的要因が干渉しているという結論に留めるしかなかった。いつこの場所から離れられるかについても、彼女はまだ方法を模索している最中だった。


 そして今、目の前の課題はいつ訪れてもおかしくない危機に備えることだった。


「ますます厄介なことになったな……」


 真夢は眉間を揉みながら、深くため息をついた。


「そのクローリアって奴は何て言ってたんだ?」


 真夢がその姿勢を取らなくなったのを見て、カクが前に出て尋ねた。


「色々と内容はあるが、とにかく我々についてきてくれればいい。」


「……そう言われると、余計に別の意図があるんじゃないかと疑ってしまうな。」


 カクはぽつりとつぶやき、それ以上は言わなかった。


 その間、夢映の方もどうやら交信を終えたようで、視線が真夢とカクの元に戻った。


「どうだった? レゼロは何か言っていたか?」


「うん……結局のところ、『気をつけろ』ってことだけだったよ。」


「そうか、それなら————」


 その時、真夢が突然何かに気づき、瞳孔が急激に収縮した。


「……どうしたの?」


 夢映が振り返ると、後ろには依然として絶え間なく渦巻く白い霧があるだけで、何の異変も見えなかった。


 彼女が口を開こうとした瞬間、真夢は無言で手を伸ばし、彼女を自分の背後に引き寄せた。その視線は前方の白い霧に釘付けになり、微動だにしなかった。カクも即座に警戒状態に入り、全身の毛が逆立ち、その目は針のように鋭くなった。


 夢映は状況がよく分からなかったが、彼らがそうするのには理由があるのだろうと深く問い詰めず、ただ状況の成り行きを見守ることにした。


 彼女も通りを見つめると、何かがおかしいことに気づいた。先ほどまで通行人が行き交っていた通りが、今は誰一人としておらず、足音すら全く聞こえない。おそらく頭の中での会話に夢中になっている間に通行人が徐々に消えていったのか、それともついさっき、通行人が一瞬で跡形もなく消え去ったのかもしれない。


 二人と一匹は、その視線を白い霧にしっかりと固定したまま、動かなかった。


 空気が急に重くなった。一面の静寂の中に、風が霧を揺らす低い唸りだけが聞こえる。


 真夢は視線を別の方向に移し、比較的安全な方向を探そうとした。しかし彼の視線がわずかに逸れたその瞬間、霧の中から突然短い爆裂音が響き渡った。澄んで鋭いその音が一瞬で静寂を打ち破った。


「真夢! 気をつけて————!」


 クローリアの声が一瞬で頭の中で炸裂した。


 真夢の視線が猛然前方に戻る。目の前には、何の前触れもなく浮かび上がった一つの弾丸。それは彼の眉間をまっすぐに狙い、どんどん近づき、どんどん大きく膨らんでいく。


「な————」


 彼はその弾丸の軌道をはっきりと見た。空気がほとんど見えない細い線を裂き、弾丸は回転しながら迫る。銅製の外殻に灯りが反射して輝く光の斑点まではっきりと見えた。


 一瞬で、真夢は全身が冷え切るのを感じた。寒気が背骨の底から立ち上り、一瞬で背中全体を満たした。

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