夢章二 14 『狭路の邂逅』
「真夢さん——————!!!」
夢映の悲鳴が路地の中で突然炸裂した。
「——!」
刃が首に届く直前、真夢は脊髄の奥底から奔る本能に従い、頭を鋭く下に沈めると同時に、全身をねじるような角度で横へと捻った。
刃は彼の後頭部をかすめ、数本の髪を切り落とし、鋭い風切り音を残して空を裂いた。しかし彼自身もその勢いに体勢を崩し、よろめきながら横へ倒れ込んだ。
「うっ……」
真夢は反射的に右手を地面につこうとしたが、手首から伝わる脱力感に全身が横に崩れ落ちた。体重のすべてが怪我をした部分にのしかかり、手首が抗議するような痛みを発し、それが前腕を伝って肩まで駆け上った。
その時、夢喰いは勢い余ったのか、刃が石畳の隙間に正確に食い込み、金属と石が擦れる乾いた音が響いた。どうやらしばらくは抜け出せそうになかった。
「真夢さん! 大丈夫ですか——!?」
「構わないでいい、今のうちに逃げるぞ——!」
地面から立ち上がると、真夢は膝の埃を払う暇もなく、夢映の腕を掴んで路地の反対側の出口へと走り出した。
慌ただしい足音が狭い路地の中で反響した。二足の靴底が石畳を叩く音が、霧に包まれながらひときわはっきりと響く。真夢は夢映の腕を引いたまま、左右の壁や角、半開きの木戸や積み重なった木箱を素早く見渡した。それらの散在する遮蔽物の中に、身を隠せる隙間を探そうとした。
しかし、こうした逃げ回るだけの戦法が長くは持たないことは分かっていた。夢喰いは位置を特定するような能力を持っており、彼と夢映がその感知範囲にいることは間違いなかった。それは無限回廊の時点で思い知らされていた。
計画? こんな状況で計画を立てる余裕などない。
今できることはただ距離を稼ぐことだけだ。たとえそれが数秒の猶予に過ぎなくても。
「くそっ、クローリア! あの本に新しい内容は出たか? 今すぐ教えろ——!」
真夢は空いた右手を上げ、指先でこめかみを軽く叩いた。
「ないわ。ページに変化はなく、まだフロサスの紹介のままよ。」
その言葉に、真夢は足を取られ、危うく自分の足に躓きかけた。
「本気で言ってるのか——!? 今のは刃が首筋をかすめたんだぞ。死ぬところだったんだぞ! 首を落とされそうになるまで深入りしたのに、本には何も新しい内容が出てないっていうのか!?」
「嘘じゃないわ。確かに新しい内容は出ていない。それと、念のため言っておくけど、この場所は普通の夢とは違うから、本当に死なないように気をつけた方がいいわよ。」
クローリアの口調は依然として落ち着いていたが、語尾にわずかに上がる微かな弧が、かすかな心配を漏らしていた。
「ちっ……新しい情報が出たらすぐに教えろ。」
その言葉を投げかけ、真夢は再び目の前の通りに意識を戻した。
二人は路地を抜け、より広いメインストリートに出た。
「やっぱり霧がこんなに濃いのか……」
先ほどの通りと同じく、この道にも本来いるべきはずの通行人の姿はなく、白く渦巻く霧だけが生き物のように周囲を漂っていた。視界は極限まで圧縮され、十メートル先の景色はぼやけた色の塊に過ぎなかった。通りの向こう側を見ても、向かいの建物の輪郭さえも霧に溶けていた。
目の前の短い距離を除いて、辛うじて確認できるのは遠くの鐘楼の影だけだった。この鐘楼は現実のどの鐘楼よりも精巧で、内部の灯りと月明かりに照らされた針は、あまりにも精巧な光沢を放っていた。
しかし、それらの針の動きには一切の規則性がなかった。彼らはあらゆる物理法則を無視し、時計回りに疾走し、時には反時計回りに旋回しながら、人間には理解できない方法で運行していた。
さらに悪いことに、先ほどの夢喰いはどうやら縛りを振り切ったらしく、遠くから耳を引き裂くような叫び声が聞こえてきた。
「うおおおおおおああああああ——————!!!!」
叫び声が刀のように耳を刺し、二人は一瞬、目まいを感じた。
「うっ……」
「くそっ……」
真夢は歯を食いしばって体を支えながら、夢映の腕を掴み、彼女が足を滑らせて抱えたカクごと倒れないように支えた。
その時、夢映に抱えられたカクがゆっくりと目を開けた。
「……ここは?」
腕の中の動きを感じて、夢映は慌ててうつむいた。
「あ、カクちゃん、目が覚めたの? 体に何か変な感じはある?」
夢映はすぐに彼の体調を尋ね、その声には心配が混じっていた。
カクはすぐには答えず、まず頭を動かして周囲の環境を確認した。今のところ直接的な脅威がないことを確認してから、ゆっくりと口を開いた。
「大丈夫だ。でも、今はどんな状況だ?」
「今は……追われていて、隠れられる場所を探しているところだ。」
それを聞いて、カクは一瞬沈黙し、そして無理に体を起こして夢映の腕から飛び降りた。
「ちょ、ちょっと待って、君の傷は——」
「今は傷のことは気にしないでいい。今の状況の方がもっと大事だ。」
夢映の言葉はカクに遮られた。
カクの体は応急処置が施されていたが、痛みによる刺激は確かに残っており、着地した瞬間、全身が痙攣し、血で固まった数本の毛が微かに震えた。
しかし彼は自分の傷を見下ろさず、振り返って真夢に視線を向けた。
「真……夢、で間違いないかニャ?」
カクの声には探るような迷いが混じっていた。
「間違いない。その様子だと……体はもう大丈夫なのか?」
「……もし人間に換算したら、こんなのを食らって大丈夫なわけがない。でも今はもっとやばいものが来ているから、自分の体のことなんて構っていられないニャ。」
微かに震えながらも頑なにその場に立っているカクの姿を見て、真夢は言いようのない感情を抱いた。
「分かった。それじゃあ、今の状況について何か考えがあるのか?」
「認めたくはないけど、今の状況は厄介だ……私たちは包囲されている。」
「な——」
真夢は慌てて振り返り、周囲に視線を走らせた。
しかし、どんなに見ても、目の前の光景は絶えず渦巻く白い霧と、鐘楼のかすかな明かりだけであり、怪しい影はどこにも見えなかった。
しかしすぐに、カクが夢の世界の生物であり、優れた感覚を持っていることは間違いないと気づいた。彼が包囲されていると言うなら、状況もそうに違いない。
「……つまり、今は八方塞がりというわけか?」
真夢はカクに確認しながらも、周囲の霧に視線を走らせ続けた。
「分からない。もしあいつが話の分かる奴なら……」
「あいつ……?」
真夢が問い質す間もなく——
「うおおおおおおああああああ————!!!!」
咆哮が再び霧を裂き、四方八方から押し寄せてきた。
耳障りな音に真夢と夢映は全身の力が抜け、必死に体を支えた。そもそも重苦しい環境がその音によってさらに掻き乱され、空気中の冷たさが一気に数倍にも膨れ上がった。
「まずい——」
真夢は音を聞くや否や、反射的に走り出そうとした。
しかしすぐに、カクがその場に微動だにせず、視線を霧の中に向け、この音に対してまったく反応していないことに気づいた。
彼には聞こえていないのか? それともこの音を気にしていないのか?
真夢の心に疑問が浮かんだ。
横を見ると、夢映もその場に立っていた。彼女の体は震え、膝はほとんどくっつきそうになっていたが、終始一貫して、彼女は自分の体を少しも動かさなかった。
こうなると、普段は冷静な真夢が、三人の中で最も慌てているように見えた。
一秒も経たないうちに、真夢は上げかけていた足を引っ込め、再びその場に立った。
「真夢、新しい情報が出たわ。」
クローリアの声が再び頭の中に浮かんだ。
「本当か? 何が書いてあった?」
「夢喰い……いや、より上位の夢喰いが現れたようだ。」
「より上位の夢喰い……?」
真夢はその情報に眉をひそめた。
「そう。もし私の感覚が間違っていなければ、その奴は君たちのすぐ近くにいる。」
「ああ、もちろん分かっている……だが、なぜもともと高等知性生物である夢喰いに、さらに上位の存在がいるんだ?」
普通の夢喰いの能力について、真夢はあの時すでに理解していた——擬態、記憶の継承、意識の代替、夢を通した現実への侵入。これらはどの生物学の分類に当てはめても、すでに最高レベルの知性に属していた。むしろ、夢喰いという種族は科学で説明できる範疇を超え、この世界に属さない独立した生物のようにさえ思えた。
さらに上位とはどういう概念なのか?
今のところ、彼が夢喰いから把握した新しい能力は【位置特定】だけだ。もしクローリアの言うようなさらに上位の存在が本当にいるなら、何が追加されるのか? 真夢にはまったく見当がつかなかった。
「それをリーダーだと思えばいい。ただの夢喰いより賢いだけだ。その分、危険度も数段階高い。これからは慎重に行動しろ。私もできる範囲で手助けする。」
「ちょっと待て、さっきは上位の夢喰いが存在するってだけで、それ以外に何もなかったのか?」
「それと、この奴は精神に影響を与えて、他人を操ることもできるようだ。でも、本にはどうやって影響を与えるかは書かれていなかった。君がさらに深く入り込まないと見えない。」
「はあ、本当に面倒だな……」
真夢はこめかみに当てた手を下ろし、軽くため息をついた。
「新しい情報が入ったのか?」
話しかけてきたのはカクだった。しかし彼は振り返らず、視線を霧の中のある一点に固定したまま、耳だけを真夢の方に向けた。
「ああ。これから相手にする奴は少し厄介かもしれない……精神に影響を与える能力があって、その方法で他人を操ることもできるらしい。」
真夢が言い終えると、カクの瞳孔が明らかに収縮した。琥珀色の瞳が霧の中で微かに震えた。
「そうか……それなら誰のことか分かったニャ……」
「……?」
その時、霧がゆっくりと晴れ始めた。それまで停滞していた白い霧が両側に退き始めた。ぼやけていた街並みや建物の輪郭、街灯や石柱——すべての景色が徐々に本来の形を現し始めた。
「来たニャ……」
カクは声を潜め、背筋をわずかに弓なりにした。
霧が大部分晴れると、そこからゆっくりと白い影が現れた。
その両腕は掌と一体になり、細長い刃を形成していた。刀身は夜の闇と月明かりの重なる下で冷たい光を放ち、まるで二匹の凝固した銀の蛇の舌のように見えた。
その時、真夢ははっきりと見た——この夢喰いは、これまでに見たような細長く歪んだ体型ではなく、むしろ「がっしりとした」輪郭を持っていた。皮膚は筋肉の線に密着し、体は痩せているものの、明らかな筋肉の起伏が見えた。顔の造形は圧縮されて口だけが残っていたが、その口の開き方は普通の夢喰いよりも抑えられており、かろうじて人間の輪郭に近い。あえて言うなら、普通の人より少し背が高い程度の人型生物だった。
そしてその背後には、十数体のさらにぼやけた影が一列に並んでいた。そのうちの何体かは旧式の衛兵の制服を着ており、手にはフリントロック式の銃を構えていた。残りはそれぞれ刀剣や槍などの冷兵器を手に、静かに立っていた。ざっと見たところ、十四、五体ほどだった。
「……やっぱりこの奴か?」
目の前の光景を見て、真夢は小さくつぶやいた。
彼がそう言い終えると、最前列に立つ夢喰いがゆっくりと口を開いた。
「うおぉ……げほ……げほ……」
今回は、先ほどの意識を裂くような悲鳴とは違い、人間に近い、痰が絡んだ咳払いのような声だった。
「げほ……げほっ……うん……うん。」
夢喰いは咳払いをし、少し背筋を伸ばした。どうやら長い間使っていなかった声帯を調整しているようだった。
真夢たちは軽率な行動をとらず、全員がその場に固まり、次の動きを待った。
「ああ……本当に……久しぶりにこの声を使ったな……」
柔らかな女性の声が夢喰いの口から流れ出た。
その声を聞いて、真夢と夢映は同時に目をわずかに見開いた。
あまりにも似ていた。口調も、音色も、文末の弛緩した語尾に至るまで、人間のものと何ら変わらず、まったく違和感がなかった。
「そのお粗末な真似はやめろ! お前の口から出る言葉に、まともなものは一つもない!」
カクは夢喰いに向かって怒声を浴びせ、体をさらに低くし、尻尾をピンと張った。
「そんなに怖がらなくてもいいじゃないか~久しぶりに会えたんだ、ゆっくり旧交を温めようよ?」
「このクズ野郎……誰がお前と旧交を温めるものか。強いて言えば、この手でお前を地獄に送ってやることだ!」
カクの怒号は、夢喰いの口元にわずかな弧を描かせただけだった。しかし、口だけの顔に浮かんだ笑みは、かえって背筋を凍らせるものだった。その笑みには温度がなく、ただ笑っているという事実だけがあった。
どうやらカクとこの夢喰いの間には、かつて何らかの関係があったようだが、明らかに愉快なものではなかった。
「お前を探すのは骨が折れたぞ、カク。正直なところ、まさかこんな場所でお前に出会うとは思わなかった。どうやら今日は運命の女神が味方しているようだ——苦労せずに見つけられたというわけだ。」
「ちっ……忌々しい。」
「おや~そばにいるお二人にも挨拶を忘れるところだった。すまないな、さっきは危うく殺しかけたが——君の反応速度と回避の技術は確かに予想以上だった。その点は称賛に値する。」
夢喰いは真夢の方に向き直り、口にした。その口調にはかすかな謝罪の色さえ混じっていた。
そう言って、それは体をわずかに曲げ、まるでお辞儀をするかのように見えた。しかし、刃と青白い肢体で構成されたその特殊な構造によって、その動作はどう見ても言いようのない不気味さを漂わせていた。
「自己紹介をしよう。私はヴィラ・ブレイクだ。ヴィラでもブレイクでも、好きに呼んでくれていい。どうせお前たちが俺を呼ぶ機会は二度とないのだからな。なぜなら——」
続けて、それはゆっくりと体を起こし、口だけの顔を上げた。その虚ろな視線が霧を抜けて、真夢たちにしっかりと固定された。
「——お前たちの死期が近づいているからだ。」




