夢章二 13『危機現夢』
短い会話の後、二人と一匹は通りに沿って歩き出した。
この場所の霧は濃いが、害はなく、ごく普通の小さな水滴が集まっただけのものだった。周囲の建物にも不気味なところはなく、外壁に描かれた優美な線の模様が、むしろ言いようのない華やかさを漂わせていた。
「これらの建物……どれもすごく雄大だね。」
夢映は歩きながら、絶えずあちこちを見回して言った。
「それは当然だニャ。この場所は多くの人の記憶の断片で構成されているんだ。現実のものがここに来ると、原版よりもさらに精巧になることが多いんだよ。」
「記憶の断片……?」
「そうニャ。簡単に言えば、人が現実に残した記憶が夢の中で再生され、再構築されて、こんな風景が作り上げられているんだ。それに、こういう場面は人が目を覚ましても消えない。現実であの人が死んでも、この場所はずっとここに残り続けるんだ。」
二人の間に挟まれたカクは、顔を上げてゆったりと説明した。
「それで、君と君の仲間たちは、夢の中で様々な動物の役を演じて、ペットを失った人々に少しの慰めを与えているのか?」
「もちろん、それも彼らにとっては良い区切りになるだろうな。時々、夢の中で私たちを抱きしめて、泣いたり笑ったりしながら、何かを本当に手放したように見える人たちがいる。人生は、前に進むしかないものだニャ。」
カクの耳が微かに動いた。おそらく何かを思い出しているのだろう。
「でも、どうやって君たちはあの人たちのペットがどんなものかを知るんだ? それに、記憶も本来君たちには分からないはずだろう?」
真夢はうつむき、足元で悠然と歩くカクに尋ねた。
「この辺りのことを説明しようとすると、話が長くなるニャ。最も直接的な言い方をすれば、人の心が意識を駆り立てているんだ。」
「心が……意識を駆り立てる?」
「これは大まかな言い方だよ。『心』と『意識』だけじゃ説明しきれないニャ。もし本をよく読むなら、どこかの目立たない段落で答えを見つけられるかもしれない。私自身も表面的なことしか知らないけどね。」
「……」
それを聞いて、真夢は顔をそらし、沈黙した。それ以上は問い詰めなかった。
「ところで、カクちゃん。さっき君が擬生物だって言ってたけど、それがペットに変身する能力ってこと?」
「その通りだよ。それに、動物以外にも他の生物に変わることもできる。例えば——可愛い黒髪のメイド服猫耳娘にもなれるよ~」
「そ、そんなこともできるのか……」
「だって、私たちはあちこちで活動しているからね。ペットに変わる以外にも、様々な生物に変わるんだ。」
カクは尻尾を少し高く上げた。その口調はまるで小説の設定を語っているかのようだが、この設定はまさに現実だった。真夢は隣で聞きながら、心の中でそっとため息をついた。
「それなら……もし良ければ、今すぐ実演してもらえないか?」
「率直に言うと、それはできない。」
夢映の願いに対して、カクはきっぱりと断った。その口調にはいくぶん真剣さが混じっていた。
「……どうして?」
「この場所はもう夢の領域じゃないからだ。大部分は夢と同じく記憶の断片で構成されているが、全体的には、ここはむしろ別の世界に近い。本当の夢はとても混沌としている。ほとんどの夢は場面が狭く内容が薄いか、場面が広く内容が濃いかのどちらかだ。この配置でいくと、おそらく四種類に分けられる。そして今のこの場所は……どちらかと言えば現実と夢の狭間だ。一見安定しているように見えて、実は奥に何かが隠されている。」
カクは自分の爪を伸ばし、わずかに開いた。
「確かにその通りかもしれない……」
思い返すと、前回の無限回廊はカクの言う状況と似ていた。
無限回廊の場面全体は広大で、内容はコピー&ペーストのように繰り返されていた。そして、彼らはそこで前の人物が残したノートを見つけ、その場所についての情報の一部を知ることができた。例えば倉庫の位置、消灯の時間、オフィスの配置など、すべて固定されていた。もし本当にレゼロの言う通りなら、あのノートを書いた人物はおそらく——
その考えに、夢映は再び背筋に寒気を感じた。
本来、夢の内容は入眠者が自分でコントロールするもののはずだが、彼らは見知らぬ場所で身を隠しながら行動していた。まるで入眠者がその領域のルールに受動的に従わされているようで、能動と受動の立場が完全に逆転していた。
「でも、これは必ずしも厄介なこととは限らない。君たちの守夢人に伝えて、何とか君たちを外に出してもらうようにすればいい。」
「え——? まさか君は私たちの守夢人のことを知っているのか?」
「もちろん、でも私もついさっき知ったばかりだ。なぜなら——」
話の途中で、カクが突然立ち止まり、目をわずかに見開いた。
「……どうしたの?」
夢映はしゃがみ込み、彼に顔を近づけた。
カクは夢映の気遣いに構わず、視線を前方の霧の塊に釘付けにし、身体も無意識に弓なりになり、毛が微かに逆立った。
真夢も異変に気づき、同じく霧の中に視線を向けた。
「何々? なんで急に空気がこんなに緊張してるの?」
この一人と一匹の妙な様子を見て、夢映は戸惑いを隠せなかった。
「夢映、気をつけろ。何かが現れるかもしれない。」
真夢にそう注意されて、夢映は周囲を見回し、初めて状況がおかしいことに気づいた。
先ほどまで人々が行き交っていた石畳の道は、今は誰もいなかった。ついさっきまで通りを走っていた馬車も、今は完全に姿を消していた。そして周囲の霧はますます濃くなり、視界は一気に狭まっていた。
ここに立っているのは真夢と夢映、そしてカク、そしてあの霧の中で近づいてくるかもしれない何かだけだった。
「いったい何が——」
彼らがまだ霧の中のものが何かを観察していると、短い破裂音が突然響いた。同時に、クローリアとレゼロの声がほぼ同時に二人の頭の中に押し寄せてきた。
「真夢! 何かが君たちに向かって来ている——!」
「早く避けろ! バカ——!」
次の瞬間、圧縮された空気の塊が、まっすぐに夢映に向かって飛んできた。
「え……?」
夢映が反応する間もなく、何かに体を強く押され、横に倒れた。そして石畳の上に叩きつけられ、鈍い音が響いた。
「夢映——!」
真夢はすぐに駆け寄り、彼女の顔や手足に視線を走らせて、その状態を確認した。
「大丈夫か?」
「痛い痛い……大丈夫だよ。」
夢映は眉をひそめながら肘をついて起き上がり、手のひらに細かな痛みを感じた。
「ところで真夢さん、さっき押したのあなたですか?」
「……俺はお前を押してないぞ?」
その時、隣から微かなうめき声が聞こえてきた。
「うっ……ニャ……」
二人が振り返ると、カクが石畳の上に倒れており、その下に小さな暗色の領域がゆっくりと広がっていた。表情は苦痛に満ち、口元が微かに引きつっていた。
「カク! 大丈夫か?」
「……もしこれが大丈夫だと言うなら、君は本当に病院で目を診てもらった方がいいニャ。」
カクの声は途切れ途切れだったが、口調は相変わらず落ち着いていた。
その時、目の前の霧から再び奇妙な金属の摩擦音が聞こえてきた。
「くそっ、我慢しろ——」
真夢は素早く反応し、カクを抱き上げた。カクの身体は彼の掌の中で微かに震え、温かい血液が彼の指の隙間から滲み出ていた。そして彼は急いで路地へと駆け込み、夢映も起き上がってその後を追った。
路地は湿っていて薄暗く、角から時折ネズミのこすれる音が聞こえ、狭い空間の中で細かな残響を増幅していた。しかし今はそんなことを気にしている余裕はなかった。
真夢はカクを段ボールの上に平らに寝かせ、身をかがめて傷の状態を確認した。
「長い傷だな、これは……銃創か?」
「うっ……」
カクの喉から短いうめき声が漏れ、身体が無意識に縮こまった。
「早く処置しなければ……」
真夢はそう言いながら、自分の右手に視線を落とした。
右手には今日、手首の怪我を処置する時に巻いた包帯がまだ巻かれていた。彼は一秒も迷わず包帯を引きちぎり、カクに巻き付け始めた。
「この場所では消毒はできない。まずは止血だ。心配するな、夢の中での傷は現実には持ち越されない。目が覚めれば治っている。」
真夢の声は落ち着いて聞こえたが、指先の微かな震えが彼の不安を露わにしていた。夢の世界から来たカクが、夢の中で受けた傷が現実に現れるかどうか、彼自身も確信が持てなかった。
その言葉を聞いて、夢映は少し迷いながら口を開いた。
「真夢さん……」
「どうした?」
真夢は手を止めず、顔も上げずに応えた。
「ここで受けた傷は確かに現実には持ち越されないけど……ここで一度死ねば、本当に…………死ぬんだ。」
「何——?!」
「それに、現実の傷はここに反映される。あなたの手首……本当に大丈夫なの?」
「……」
真夢は沈黙したが、手の動きは少しも緩めず、依然として丁寧にカクの傷を包んでいた。
「……俺は医者だ。患者の傷を優先して処置するのが責務だ。」
「でも——」
「でもも何もない。忘れるな、クローリアは俺たちに特別な能力があると言っていた。たとえ夢の中で本当に死んだとしても、何とか切り抜ける方法があるだろう。」
包帯を巻き終えると、真夢はゆっくりと息を吐き、右手を挙げて、その上の紫色のあざを見た。
ここまで移動する間、彼の注意はすべて環境に向けられており、自分の傷も夢の中に持ち込まれていることには気づかなかった。もし夢映が指摘しなければ、今も気づかなかっただろう。
「かすり傷だ。細かいことを処理するくらいは問題ない。あまり心配するな。」
真夢は顔を上げ、夢映に向かって口元を引きつらせた。
「それは……分かった。」
夢映は目を伏せ、それ以上は言わなかった。彼女は自分の性格が栞とは違うことをよく分かっていた。真夢を説得することはできない。この人は一度決めたら、どんな言葉も無駄に終わる。
真夢は立ち上がり、指でこめかみを叩いた。
「クローリア、さっきのはどういうことだ? 危険はないと言ったんじゃなかったのか?」
頭の中にはしばらく沈黙が続いた。
「答えろ。」
「……これは本当に私のせいじゃない。本の内容はさっきの瞬間になって初めて現れたんだ。それまではこのページは完全に空白だった。」
「はあ、まさか今になってもまだ俺を騙そうってのか!?」
真夢の声は低く抑えられていたが、その怒りは隠しきれなかった。
「そんなに怒らないで……私が言っているのは事実だ。」
「いい加減にしろ。もしお前の言うことが事実なら、カクは怪我をしなかったはずだ!」
「カクは……分かった、誰か分かった。先に言っておくけど、私が提供する情報は完全に君の情報収集の進捗に基づいている。現時点では、君が新しい場所に到着するとこの本に対応する紹介内容が現れるが、その後の出来事は依然として空白だ。君が一歩ずつ深く入り込み、少しずつ接触していくことで初めて浮かび上がってくる。」
「ああ、結局情報を得るには自分で少しずつ発掘していくしかないのか?」
真夢は目を閉じ、顔を上げて深く息を吸い込んだ。
「おそらく……その通りだ。」
「……」
それを聞いて、真夢は手を下ろし、その息を長く吐き出した。
「真夢さん……」
夢映は真夢の横顔を見つめ、何と言えばいいのか分からなかった。
「まずは今の状況を処理する。」
真夢は横を向き、路地の入口を一瞥した。
「……ついて来い。」
そう言って、真夢はゆっくりと路地の入口に向かって歩き出した。夢映はカクをそっと抱き上げ、慎重にその後ろについていった。
今の環境は先ほどとはまったく異なっていた。
静かだ。驚くほど静かだ。
遠くからかすかな風の音が聞こえる以外には、真夢と夢映の靴底が石畳を踏む微かな音だけが聞こえていた。
「……」
真夢は路地の入り口の壁のそばで立ち止まり、ゆっくりと半身を乗り出して通りを左右に見渡した。
霧は依然として周囲に立ち込め、その濃度は少しも減っていなかった。街灯はぼんやりとしたオレンジ色の光の輪を残すだけであり、遠くの建物の輪郭は霧に半分隠れ、尖塔とアーチの頂上だけがかろうじて視界に浮かんでいた。
(さっき……一体何だったんだ……)
真夢は指を壁の端に掛けた。冷たい感触が指先から伝わってくる。しかし今、彼の注意はそれにはなく、街中に漂う霧の中にあった。
その時、霧の中から突然、聞き覚えのある音が聞こえてきた。
「すぅ……はぁ……ぐるる……」
その音は、溺れる時の湿った呼吸のように聞こえた。
(夢喰い——!?)
その音を聞いて、真夢は慌てて頭を引っ込めた。心臓が胸の中で大きく跳ねた。
夢映は彼の表情が急に変わったのを見て、何かを言おうとしたが、真夢に口を覆われた。もう一方の手は人差し指を立て、唇の前に当て、ゆっくりと首を振った。
(……?)
夢映はよく理解できなかったが、それでも微かにうなずいた。
真夢は彼女を数秒間見つめ、声を出さないことを確認してからゆっくりと手を離した。そして再び頭を少し外に出し、外の様子を確認しようとした。
しかし、頭を出した瞬間、全身が白い生物が目の前に現れた。
「……」
「すぅ……はぁ……ぐるる……」
距離は非常に近く、その湿った、生臭い息が直接真夢の顔に吹きかけられた。
同時に、その喉から低い唸り声が聞こえた。よく見ると、その生物の腕と掌は一体化し、細長い刃に変形していた。その刃先は薄く鋭く、街灯の残るかすかな光の下で冷たい輝きを放っていた。
空気が一瞬にして死の静寂に包まれた。
そして——
「うおおおおおおおああああ————!!!!!!」
刃が空気を裂き、風を切る音と共に、まっすぐに真夢の首筋に向かって振り下ろされた。




