夢章二 4 『何が真夢か』
「ここで待っていて。そっちの様子を見てくるから。」
「はい……」
夢映を診察室に送り届け、しっかりと席に座っていることを確認してから、栞は真夢の診察室を離れ、整形外科の診察室へと向かった。
廊下には時折、看護師が器械車を押して通り過ぎていく。車輪が床の上で規則正しい音を立てる。栞の足取りは速すぎず遅すぎず、ヒールが床を叩く音は均等にはっきりと響いていた。
そして、彼女は曲がり角の手前で足を止めた。
廊下の少し先に、真夢が立っていた。右手首には白い包帯が巻かれていて、手首から前腕の中ほどまで伸びている。もう一方の手にはレントゲン写真を持ち、首をかしげてその内容を眺めている。
その時、真夢の視界の端に栞の姿が映った。
「……栞?」
顔を上げ、真夢は反射的にレントゲン写真を身体の横にずらした。
「さっきまで探してたんだが……そういえば、どこに行ってたんだ?」
「もちろん撮影だよ。健って奴が、ありとあらゆる怪我の程度とその結果、それにその後の対処法を延々と説明してくれてな。リハビリもやるって言われたよ……」
「それ、確かにあの人らしいね……」
栞はそう言いながら、真夢の右手首に視線を落とした。
「それで、怪我の方はどうなの?」
「言った通り、大したことない。ただ、健にとっては、俺の怪我も彼なりの基準で処理されるんだろうな。」
真夢は自分の右手首を見つめ、諦めにも似た口調で言った。
「まあいいや。それなら、医者との時間を邪魔しないでおくよ。ちゃんと医者の言うことを聞くんだよ。」
「なんだか立場が逆転した気分だ……そういえば、さっきまでどこに行ってたんだ?」
簡単な挨拶を交わした後、真夢は手首から目を離し、栞の顔に向き直って尋ねた。
「もちろん、あなたの小さな助手とちょっと話してただけだよ。」
「……夢映に会いに行ったのか?」
真夢が眉をひそめる。
栞は気にした風もなく、首を軽く傾げ、両腕を胸の前で組んだ。
「心配しなくていいわよ。変なことは聞いてないから。ただ少し話をしただけ。それに、夢映はさっきのことをすごく気にしているわ。あなたからちゃんと話をしたほうがいいと思う。」
「……」
「だから、他人の気持ちにもっと気を遣いなさい。誰かを後悔させたりしないように。」
人差し指を立て、栞の口調には遠慮のない強さが込められていた。
真夢は栞の顔をしばらく見つめ、沈黙した。そしてうつむき、自分の右手首の包帯に視線を落とした。
「わかった。でも……」
「でも?」
「……他人の気持ちって、どうやって気をつければいいんだ?」
真夢の言葉に、栞は一瞬言葉を失った。
「それぞれの感情がとても……特別だってことは分かってる。でも、どうやってそれに気をつければいいのかが分からない。というか……気づけないんだろうな。」
真夢は左手を上げ、ぎゅっと握りしめた。関節が白くなり、そしてゆっくりと開く。血の色が戻っていく。手のひらのしわが目に入る。三本の主要な線と、いくつかの細かい分岐線。ほとんどの人と変わらないものだ。
「たまに考えるんだ——明晰夢者が現実と夢の狭間に閉じ込められて、ありとあらゆる異常な出来事に直面している。彼が見ているものが他人と違う時、狂っているのは世界なのか、それとも他の誰かなのか——」
栞は真夢の横顔を見つめ、唇がわずかに動いたが、何も言えなかった。
彼女は長い間真夢を知っている。彼が疲れている姿も、沈黙している姿も、診察の合間に目を閉じて椅子にもたれかかっている姿も見てきた。しかし、彼がこんな口調で話したのは覚えていない。あの、不確かで——何かを疑っているような口調。栞の呼吸が知らず知らずのうちに浅くなった。
「でも、それはまた今度の話だ。今はまず、健との話を片付けよう。」
手を下ろし、真夢は体を横に向けて、手を振りながら健のいる整形外科の診察室へと歩いていった。
栞はその場に立ち尽くし、真夢の背中が廊下の奥へと遠ざかっていくのを見つめた。彼が一つの扉の中へ消え、白衣の裾がその向こうに見えなくなるまで。そして、ようやく彼女も振り返り、自分の診察室へと歩き出した。
自分の診察室に戻ると、扉が後ろで静かに閉まり、かちりと小さな音がした。
「……」
栞は机の後ろに座り、椅子が微かにバネの音を立て、そしてすべてが静けさを取り戻した。彼女はただそこに座り、机の上の一点を見つめていたが、何かを見ているわけではなかった。
窓の外の光は午後の明るさからゆっくりと移り変わり、床に斜めの影を落としている。空気には消毒液と紙が混ざった匂いが漂い、彼女がここで過ごす毎日とまったく同じだった。彼女の手は机の上に置かれ、指先が机の縁を軽く叩いている。
栞は階段口のあの光景を思い出していた。夢映がしゃがみ込み、肩を震わせ、涙が頬を伝う。その涙が照明の下できらきらと光っていた。
(「現実でも夢の中でも、真夢さんはずっと私を助けてくれて」)
その言葉が栞の頭の中で何度も反響していた。
その言葉自体が特別だからではない。それを言った人の、それを言った時の表情がそうさせるのだ。まるで溺れかけている人がようやく何かに掴まって、やっと力を抜けるようになったような表情。
栞はたくさんの涙を見てきた。毎日、彼女の診察室には患者が涙を流す。悲しみのせいで、怒りのせいで、ただ疲れきってしまったせいで。彼女はたくさんの泣き声も聞いてきた。鋭いもの、低いもの、抑えられたもの、解放されたもの。でも夢映は少し違っていた。そこには、彼女がまだ完全には理解できない何かがあった。自己嫌悪と感謝が混ざり合い、まるで粘り気のある、容易には分離できない混合物のように。
「はぁ……」
栞はふと気づいた。自分が次の患者ではなく、夢映のことを考えているのだと。
実際、こういうぼんやりした状態は珍しい。栞の仕事の習慣は、患者が来る前に心を空っぽにし、次に耳を傾けるべき人に注意を向けることだ。しかし今日、その習慣は普段よりもゆっくりと動いていた。彼女はそっと息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。机の上のコップを手に取り、一口水を飲む。それからカルテを開き、紙面に視線を落とし、患者の資料を読み始めた。
彼女はしばらく真夢に問い詰めるのをやめることにした。しかし、彼女は注意を払うだろう。真夢自身も気づいていないかもしれない、その細かな変化に。
窓の外から風が吹き込み、カーテンの端がかすかに揺れた。栞は垂れた髪を耳の後ろに掛け、再びカルテに目を落とした。
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三人目の患者は予約時間より五分早く到着した。
患者は濃い藍色のコートを着た若い女性で、二十五歳前後だった。入ってくる足音は軽く、中に入ると視線が診察室内を素早く一周した。真夢を見て、隣に座る夢映を見て、そして首を少し傾げた。
「……お二人とも先生ですか?」
「私が医者で、こちらは助手です。」
「あ、はい。」
患者はそれ以上質問せず、席に座り、両手を膝の上に置き、指を揃えた。
真夢の声は相変わらず落ち着いていて、話す速度もいつも通りだった。まずは患者の睡眠状況、気分の変化、最近の生活状態を尋ねた。彼女の答えは少しためらいがちだったが、基本的には明確だった。
簡単に言えば、患者は自分はただ少し疲れていて、時々不安を感じると言った。最近新しい仕事に変わったのだという。真夢はうなずき、ノートに数行書き込み、穏やかな睡眠導入剤を処方し、生活リズムの調整についても簡単に説明した。
処方箋を受け取った時、患者の顔にはほっとした表情が浮かんだ。おそらく来る前は自分の精神に問題があるのではと心配していたのだろうが、その判断が出なかったことに安心したようだ。
「ありがとうございます、先生。」
「どういたしまして。お気をつけてお帰りください。良く休めますように。」
ドアが閉まり、診察室は再び静かになった。
「彼女は……ただの不眠症なんですか?」
問診の流れを全て見終えた後、夢映は少し疑問そうに真夢に尋ねた。
「そうだ。ただの新しい環境への適応期間だ。転職後三ヶ月から六ヶ月の間に軽度の不安や不眠が見られるのはよくあることで、過剰な介入は必要ない。」
「じゃあ……さっきの患者さんは? 物を投げるって言ってた人?」
「あの人の場合は別だ。定期的な経過観察が必要で、症状が改善しなければ治療方針の見直しが必要かもしれない。」
真夢はそう言いながら、カルテに数行補足を書き足した。
「でも、今はそれを区別する必要はない。まずは記録を覚えろ。判断はその次だ。」
「……はい。」
夢映はうつむき、ノートに数行書き込んだ。今回は、さっきよりも字が少ししっかりしていた。




