夢章二 1 『学医の要領』
午前、ハイリス病院精神科診察室。
陽光がブラインドの隙間から切り込んで、床に平行な縞模様の影を落としていた。空気には消毒液の匂いが漂い、エアコンの微風に攪拌されて、部屋の中にほとんど知覚できない流れを作っている。
本来なら机の後ろの席に座っているはずの真夢の代わりに、そこには別の人物が座っていた。
「よし、今日はこんな感じでいこう。」
真夢は傍らに立ち、両腕を組んで、席に座る人物に言った。
「ちょっと待って待って、これおかしくない? 助手として来たはずなのに、いきなり診察する医者になってるんだけど?」
席に座っていたのは、白衣を着た夢映だった。
白衣は彼女にはやや大きすぎて、袖口は二度折り返してようやく手首が出ている。裾は膝のあたりまで垂れていた。そんな夢映が、今は困惑した表情で真夢を振り返っていた。
「お前の仕事は臨床文書とカルテ管理、それに治療計画の実行も含まれるからな。」
「でも……それって書類を書くだけの仕事だよね? なんでこんな席に座ってるの?」
夢映は机の上に置かれた、真夢のフルネームが書かれた三角プレートをいじり、端に押し出してはまた元の場所に戻した。
「もちろん、それ以外にも、心理カウンセリングやリハビリの補助をやってもらうこともある。これは患者とコミュニケーションを取る仕事だ。」
「うぐぅ……」
聞き終えて、夢映は椅子にだらりと寄りかかり、力ないため息をついた。
朝、病院に着いた後、真夢は夢映を連れて手続きを済ませた。規定には反していたが、上司は真夢の精神状態や仕事の効率を考慮し、特別に二週間の臨時研修期間を認めた。問題がなければ、彼女はハイリス病院で長く働くことができる。
だが今のところ、夢映はそれが良いことだとは思っていなかった。
「私なんて無理だよ? この分野の知識なんて、ほとんどないし……」
夢映は両手で頭を抱え、あごを机の上にのせて、声は腕の間にこもっていた。
「やらずに分かるものか。自分を否定するのは良い習慣じゃないぞ。」
「否定ってわけじゃないんだけど……本当に知識がないんだよ……」
そう言われて、真夢はあごに手を当てて考え込んだ。
彼女は臨時研修期間中で、当面は病院で仕事を補助できる。しかし、二週間で医学の知識を詰め込むのは非現実的だ。
だが、方法がないわけではない。
「こうしよう。患者が来たら、俺の隣に立って、診断から記録、処方箋の書き方まで、一連の流れを見ていればいい。それだけ覚えれば大丈夫だ。」
「え……それだけでも難しそうだけど。」
「心配するな。お前が思うほど難しくはない。」
すぐに、午前中の最初の患者が診察室にやってきた。
扉が少し開き、濃い色のコートを着た中年の男性が入ってきた。
「先生、私——」
そのとき、診察室に入ってきた患者が突然立ち止まり、固まってしまった。
診察室には一人が座り、もう一人が立っている。彼の視線は夢映と真夢の間を二、三度行き来し、真夢と夢映の視線も患者に留まり、三人はそのまま見つめ合った。
「あの……どちらが先生ですか?」
患者がゆっくりと口を開いた。
真夢と夢映は一瞬視線を交わした。短いアイコンタクトの後、真夢が半歩前に出て、両手を机の上に置き、患者に視線を向けた。
「最近、何か気になる症状はありますか? あるいは、周囲で変な現象を感じたりしませんか?」
「は、はい! 夜になると、たくさんの目で見られている気がして、それに時々変な音も聞こえるんです。これはどういうことなんですか?」
患者は自分の症状を話す間、視線を左右に泳がせていた。
その話を聞いて、夢映は目をわずかに見開いた。真夢はうつむき、次の言葉を考えた。
考えられる結果は二つ。一つは普通の心理的問題。もう一つは夢喰い。だが真夢は、カルテに「夢喰いの侵入」などと書くわけにはいかないことをよく分かっていた。それは明らかに通常の対処法ではない。
「今の段階では原因を特定できませんが、最近何かありましたか?」
考えた末、真夢はさらに尋ねることにした。
「はい……数日前、身内が急に亡くなりまして。検査では脳死と診断されました。葬儀が終わってから、ずっと誰かに見られている気がして、夢でもその親戚がよく出てくるんです。」
「親戚の夢……その夢に出てくる親戚は、普通でしたか?」
「普通ではありましたが……普通すぎました。」
「普通すぎる?」
「ええ。夢の中の顔があまりにも鮮明で。目が覚めてからも、その顔がぼんやりと浮かんでくるんです。」
「なるほど……」
真夢は患者の顔を一瞬見つめた。
クローリアの説明に従えば、顔が異常に鮮明になるのは夢喰い初期の特徴の一つだ。しかし確診はできない。だが、その鮮明さ、持続性、侵入性——それらの表現は彼の判断を後者へと傾けさせた。
答えの確度が八十パーセントに達していると分かっていても、患者に伝えて信じてもらえる確率は依然としてゼロだった。なぜなら、ほとんどが虚構で構成され、同時に事実でもある話を信じる者は誰もいないからだ。
少なくとも真夢が患者の立場なら、自分もその言葉を信じないだろう。
そして真夢はその内容を口にしなかった。
「おそらく、親族の死による精神的な影響でしょう。精神を安定させる薬を処方します。帰宅後、一日二回、一回二錠のペースで服用してください。」
真夢は処方箋を取り、数行書き込んで、患者に差し出した。
「あ、ありがとうございます、先生。」
「どういたしまして。しっかり休んでください。」
患者は処方箋を受け取り、一礼して診察室を出ていった。
ドアが閉まると、部屋は再び静かになった。壁の掛け時計の針だけが、一定のリズムを刻んでいる。
「真夢さん……」
「どうした?」
「さっき、どうして事実を教えなかったの? もう原因が分かってたんでしょ?」
夢映は席に座ったまま、顔を上げて真夢に問いかけた。
「……彼が信じると思うか?」
「信じなくても、せめてヒントくらいはあげるべきじゃないの? このままじゃ何か起きるに決まってる。彼のことを放っておくつもり?」
「聞け、今はまだ彼の状況を完全に確認できない。もし本当にあいつらなら、俺は彼のために祈ることしかできない。救おうとは思わない。もし違うなら、標準的な治療方針に従えばいいだけだ。」
閉じられたドアを見つめながら、真夢は自分の見解を一つ一つ口にした。
「でも、もし本当にあいつらだったら?」
「もし本当なら、俺は手を出さない。今の俺の能力では、介入する余地すらないからだ。」
「……たとえ一人でも、ダメなの?」
「そうかもしれない。もし彼が俺たちの言葉を信じるなら、わずかな可能性はある。だが、現時点で二人しか知らない情報で、科学的根拠もなく、史料にも記録のない内容を、この地で何十年も生きてきた人間が、素直に事実だと認めると思うか?」
真夢は振り返り、夢映の不安げな顔に視線を落とした。
「でも——」
「お前はまだ甘い……何を言い、何を言わないか。それも医者の能力の一つだ。もし患者が本当に不治の病にかかっていたとしても、医者は直接それを伝えたりはしない。代わりに、SPIKESというコミュニケーションの枠組みに従うんだ。」
「でも……さっきの人も、もう不治の病だよね? もう夢喰いに入ってるんだし……」
夢映はうつむきながら言った。
「違う。もし不治の病なら、処方箋なんて渡さない。」
「え……?」
「彼に処方したのは睡眠薬だ。彼の症状が本当に夢喰いかどうかは分からない。だが、精神的なストレスや不安を効果的に軽減できる薬なら、夢喰いの症状を一時的に回避できる。睡眠薬はそれを可能にし、彼が安らかに眠れるようにもしてくれる。」
「でも……もし夢喰いがもう彼の部屋に浸透してたら、対策する時間なんてないんじゃない?」
「彼に対策は必要ない。夢喰いは、能力もなく、しかも夢喰いの末期に達していない者に、理由もなく手を出したりはしない。忘れるな、夢喰いが俺たちに手を出したのは能力のせいだ。他の者についてはどう思う?」
夢映は目を見開いた。
真夢の臨床経験は、夢映の想像をはるかに超えていた。彼は一つの方法で二つの状況を一時的に緩和できる。今の夢映はまだ一つの側面しか考えられない。
「もし次も彼が来るなら、それは確かに問題に直面している証拠だ。だが、もし来なかったなら、それは単なる精神的な問題だった可能性が高い。」
「でも、もし来なかったら、それって危険がもう起こったってことじゃないの?」
「そんなに急な話じゃない……彼はまだ最終段階には達していない。それに、来なかったらそれは良いことだ。精神的な問題がなくなった証拠だからな。精神に問題のない人間が精神科に来る方がおかしい。」
真夢は首をかしげて説明した。
「つまり、複雑なことも、シンプルな視点で考えれば解決することがある。複雑なことばかり考えていると、ますます複雑になって、最後には一番シンプルな視点すら見えなくなる。」
「……なるほど。」
夢映は考え込むようにうなずいた。
「よし、分かったなら、次の患者を待とう。二人目はお前がやれ。」
「え? もう私がやるの?」
「心配するな。隣でフォローする。」
簡単に励ますと、真夢は一歩後ろに下がり、夢映の斜め後ろに立った。
部屋の中は再び静まり返り、壁の掛け時計の音だけが続いていた。




