夢章一 3『尋夢』
真夢が家に着いたのは、もう夜の八時を過ぎていた。
彼は電気をつけず、そのままベッドに身を投げ出し、蛸のようにそこにのびのびと倒れ込んだ。
背骨が一節一節ほどけていくのが分かった、まるで誰かが後頭部から一本の糸を引き抜いているかのようだった。
さっきまでオフィスで感じていた目まいや胸の圧迫感はほとんど治まっていたが、残った疲労感はまだ骨の隙間を這い回っていた。
真夢は天井を長い間見つめながら、二時間前に起きたことについて考え続けていた。
栞の言う通りだった。真夢の身体はもう警告を発していた。
もしこのまま必死に職場にしがみつき続けたら、いずれ本当に身体を壊してしまうだろう。
しかし一度立ち止まれば、あの奇妙な夢の感覚が追いかけてくる。しかも普段よりさらに強く、さらに密に、さらに速く。
そして自分はその境界線上を延々とさまよい続けることになる。
今日の夢は、これまで見てきた夢のどれともまったく違っていた。
あの本棚、あの黒い霧、あの自分の名前を呼ぶ声……一度も現れたことはなかった。
この何年もの間、真夢の夢にはほとんど誰も現れなかった。
たいていは空っぽの通り、誰もいない駅、明け方まで歩いても抜け出せない廊下。
たまに「誰か」が現れても、決して言葉を発さず、遠くに立ったまま、彼が近づく前に消えてしまう。
さらに悪い時は、追いかけられる夢、押さえつけられる夢、高いところから何かに突き落とされる夢、殺される夢、あるいは一瞬で抹消される夢を見た。
目覚めると全身が冷や汗で濡れていたが、それらの顔は決して覚えていなかった。
そして今日、誰かが彼の名前を呼んだ。女の声で。
「……」
反射的に考えたのは、自分の名前を呼んだのは別の自分自身なのではないか、ということだった。
なぜなら、一定の科学的調査研究において、自分自身の夢を見ることは自己認識や内面の覚醒を象徴するとされており、そのような夢の確率は決して小さくないからだ。
自分自身の夢?ありえない。
あれは自己認識の典型的な夢だ。夢の内容と照らし合わせても、あの声は明らかに女の声だった。どう聞いても自分自身には聞こえない。それに、自分が夢の中でどのような役割を担っているのかもよく分かっている。だから真夢はすぐに「自分自身の夢」という考えを捨てた。
ストレスが原因?そんなことはない。
彼は毎日診察をし、カルテを書き、患者と話をしている。これらのことは彼にとって現実にアンカーを下ろすための道具であり、負担とは言えないし、自分自身にもそのようなストレスはまったく感じられなかった。
過去の経験が原因?それもない。
本棚、黒い霧、魂の奥深くまで突き刺さるあの声——自分の記憶を隅々まで探しても、それに対応する場所は一つも見つからなかった。
「くそっ……一体どういうことなんだ。」
この理解しがたい出来事に対して、真夢は自分の顔を覆い、心の中は苦悩で満ちていた。
「もしかして、こうするしかないのか……」
真夢はスマホを取り出し、休暇を申請すべきかどうかを考え始めた。
画面の明かりを見つめながら、真夢はふと一つの方法を思いついた。
「できるかどうかは分からないけど、試してみる価値はある。」
そう言って、真夢はスマホのロックを解除し、インターネットの検索バーにゆっくりと一行の文字を打ち込んだ:
明晰夢、副作用、声。
検索ボタンを押す前に、親指が画面の上で二秒間止まった。
「この三つ以外に……」
しばらく迷った後、真夢はさらにゆっくりと一つの言葉を追加した。
——現実との重なり。
真夢はネットを通じて、自分の症状と一致する症例を探そうとした。
しかし、彼の目の前に現れたのは、いくつかの夢に関するスレッドで、その内容のほとんどは無関係な雑談だった。それ以外にも、明晰夢の訓練方法や睡眠麻痺の原因についての科普記事が数件あった。
真夢はそれらを一つずつスクロールしていったが、見れば見るほど自分とは無関係に思えた。
あの人たちが描写する夢は、どこも陽光が降り注ぎ、空はどこまでも広がっていた。黒い霧に閉じ込められている者もいなければ、本棚の奥から自分の名前を呼ぶ声に悩まされている者もいなかった。
簡単に検索しても成果が得られず、真夢の心にほのかに灯った希望の火は、再び消え去った。
「結局、こういう内容はどこにもないのか……」
真夢はため息をつき、不本意そうにこの怪異な出来事の捜索を諦めた。
ベッドから起き上がると、真夢は上司に休暇申請を送信した。
休暇申請の承認はほぼ即座に届いた、画面に「承認済み」の表示がポップアップしたのを見て、真夢はむしろ一瞬戸惑った。
休暇を取ったことがなかった彼は、休暇の申請は難しいものだと思っていたからだ。しかし結果はこれほどスムーズだった。おそらく栞が事前に上司に真夢の最近の状況を伝えていたのだろう。
真夢はスマホを脇に投げ、仰向けに倒れた。
「まあいいや、これ以上やっても答えは出ない。」
真夢はあの奇妙な光景を頭の中から追い払おうとしたが、無駄だった。
その考えは常に真夢の脳裏に留まり続けた。それは脳の襞に刺さった細い棘のように、痛くも痒くもないが、動くたびにその存在を彼に思い知らせた。
——もしも、通常の投与量ではもう十分でないとしたら?
真夢の頭の中に突如として一つの考えが浮かんだ。
すると真夢は勢いよく起き上がり、慣れた手つきで白い薬瓶を手に取り、そこから二錠の錠剤を取り出し、手のひらに乗せた。
これまでとは異なり、今の真夢はその錠剤を口に入れるのではなく、手の中の錠剤を見つめ、長い間沈黙した。
「……」
真夢の頭の中に一つの考えが浮かんだ。
それが自分の脳内の判断なのか、それともどこか別の場所から染み込んできた声なのか、彼には区別がつかなかった。
——もしも、四錠なら、どうなる?
真夢がこの薬を飲み始めてから、標準的な摂取量は一度に二錠だった。
しかし、どんな薬にも一定の毒性はある。成分の如何を問わず。
「違う……いや違う違う……こんなに飲んだら絶対に何か起きる。」
医者としての真夢は、薬の過剰摂取がもたらす危険性をよく知っていた。急性中毒、慢性的な臓器障害、副作用の増幅——それらを引き起こす可能性があった。
なぜか、真夢の頭の中には今この考えだけが浮かんでいた。
「……」
カイネイソの主な効果は抗うつ作用に加え、精神を安定させ、意識を正しい軌道に戻すことだ。真夢は長い間これを飲み続け、確かに意識を正しい軌道に戻すことができていた。
しかし最近の数日間、彼は自分の精神が安定していると感じたことはほとんどなく、夢と現実の区別がつきにくくなり始めていた。
夢の断片が昼間に何の前触れもなくフラッシュバックし、一秒にも満たないとしても、それだけで背筋が凍る思いがした。
明らかに、薬効が弱まっていた……あるいは、夢の力が強くなっていた。
いや、これは単なる薬剤耐性だ。夢の力が強くなったなどということはあり得ない。
真夢は専門的な立場からしばらく考えた。今の彼がすべきことは再診を受け、治療方針を調整することであって、自分勝手に薬の摂取量を増やすことではない。
それでも、真夢は手にした薬瓶を置くことができなかった。
「飲めば……せいぜい中毒になるだけだ。でも飲まなければ……この機会を逃してしまうかもしれない。」
真夢は自分がなぜこの言葉を口にしたのか分からなかった。まるで無意識に行動しているかのようだった。
瓶を傾け、そこからさらに二錠を取り出した。
瓶のラベルには禁忌症、副作用、そして摂取基準が記載されていた:子供は一度に一錠、成人は一度に二錠。そして特別な活字で目立つ位置に表示されていた。
しかし真夢はそれにまったく構わなかった。
その後、真夢は手の中の四錠の錠剤をすべて口に放り込み、水も飲まずに飲み込んだ。
錠剤が喉を擦りながら通り過ぎていく感触は粗くて現実的で、同時に乾いた焼けるような感覚を残した。
それが今夜、彼が自分がまだ現実にいると確信した最後の瞬間だった。
「とにかく……」
真夢は薬瓶を元の場所に戻すと、自分のベッドに仰向けに寝そべり、部屋の天井を見上げながら、ゆっくりと目を閉じた。
部屋の暗闇がゆっくりと閉じていった。
数秒後、彼の呼吸は均一になっていった。




