夢章一 26『明晰夢』
ホテルの部屋は、朝の半透明な灰青色の光に包まれていた。カーテンは完全には閉められておらず、細い一条の朝の光が隙間から差し込み、ベッドの足元の白い布団の上に横たわっていた。部屋の中はとても静かで、壁の奥のパイプが時折発する微かな音まで聞こえるほどだった。
その時————
「ガッ——————!」
真夢が突然目を見開き、その瞬間に胸腔が何かによって内側から押し広げられたように、空気が大口に肺へと引き込まれた。同時に、全身のすべての筋肉が一瞬で緊張し、微かに震え始めた。
汗がこめかみを伝い、頬骨の弧を過ぎ、顎の先で大きな一滴となって枕の上に落ち、小さな暗い染みを残した。それに続いて背中からも汗が滲み出し、服の布が肌に張り付き、呼吸のたびに布と肌の間の微細な引きつれを感じた。
彼の視線は部屋の中を素早く巡った。天井のひび割れは以前と同じで問題はなかった。カーテンの端は自然に垂れ、裾は窓辺に沿っており、異常な皺はなかった。タンスの上のテレビのリモコンは斜めに置かれ、ナイトテーブルの端と指一本分の間隔があり、問題はなかった。どの物も在るべき場所にあった。
自分の右手を見下ろし、何度か開いたり閉じたりした。関節の動きは滑らかで、腫れも変形もなかった。左手で右手首の関節を押すと、指先に伝わるのは皮膚と骨の正常な弾力だけだった。
腰を触ってみると、自分が握っていたはずのハンマーもなかった。腰には服の布が腹部に張り付いているだけだった。
「はぁ……」
自分が現実に戻ったことを確認して、真夢はゆっくりと息を吐き出した。肩の筋肉が緊張から徐々に解けていくのを感じた。
そして彼は横を向き、右側のベッドを見た。
「……?」
ベッドの半分は空っぽだった。
シーツには明確な圧痕があり、横向きに寝た人の輪郭に沿って柔らかな窪みができていた。枕の中央には浅い凹みが残り、その表面には髪の毛が擦れた微かな跡が残っていた。その凹みの形は彼のものより少し小さく、自分より軽い誰かが一晩中そこに横たわり、そしてついさっきまでそこにいたことを示していた。
「夢映……?」
真夢が呼びかけたが、返事はなかった。
真夢は急いでベッドを下り、視線を部屋のあちこちに走らせた。
その時、彼は夢映のキャップが彼女の側のナイトテーブルの上に置かれているのを見つけた。つばを外側に向けて、きちんと整えられている。近づいて手に取ると、キャップの内側にはまだほのかな温もりが残っており、ついさっき置かれたばかりのようだった。真夢は裏返して中を見てから、元の場所に戻した。そしてキャップの隣には、夢映の服がきれいに折りたたまれて棚の上に置かれていた。上着は規則正しい四角形に折られ、袖口は合わせられ、襟は同じ方向を向いていた。
「まさか……」
突然、真夢は洗面所から物音がするのを聞いた。水が蛇口から溢れ出し、陶器の洗面台の底にぶつかる音のように聞こえた。同時に、何か細かな動作音も聞こえた。
奇妙な物音を聞いて、真夢は足音を潜めて洗面所のドアの前に立ち、しばらく耳を澄ませた。
数秒後、水の音が止み、静寂が訪れた。
そして、中から短い衝突音が聞こえた。
「夢映? 中にいるのか————」
「わあああああああ——!!」
言葉が終わる前に、ドアの内側から悲鳴が爆発した。
真夢の直感が判断より先に反応し、ドアノブを回した。その時初めて彼は、ドアの鍵がすでに解除位置で固定されており、金属のラッチが噛み合っていないことに気づいた。彼はほとんど力を入れずにドアを押し開けた。
「夢映! どうした————」
「誰だああああ——!!」
一瞬、風を切って一つの平手が真夢の左頬を直撃した。その力は強く、真夢の頭は横を向いた。視界は一瞬で白くなり、耳鳴りが続いた。鋭い高周波音が彼の耳道の内側で数秒間響き、そして引いていった。彼は数歩よろめいてから何とか体勢を整え、壁に手をついて一、二秒かけて視界を再び焦点に合わせた。
「痛い痛い……夢映? 君か?」
視界に飛び込んできたのは人影で、彼女はバスタオルを巻いて洗面所の入り口に立ち、全身を緊張させ、肩をわずかに上げ、両手でタオルの端を掴んでいた。
真夢の声を聞いて、彼女の視線が彼の方に向けられた。
「…………真夢さん?」
夢映の声は緊張から少し緩んだ。
今の真夢は頬を押さえ、左頬が微かに熱を持っているのを感じていた。右頬はまだ正常だったが、その対称性がすぐに崩れるだろうと予感していた。
「ご、ごめんなさい真夢さん、あなただって知らなくて——」
夢映は慌てて近づき、彼の様子を確認しようとした。
しかし彼女の動きは予想よりも急だった。かがんだ瞬間、体に巻き付いていたバスタオルが滑り落ちた。
「……」
「……」
空気が二秒間静止した。
夢映の豊かな曲線が一瞬で真夢の視界に露出した。真夢の視線は半秒も経たずにその肌から離れ、天井を見上げ、壁の隅を見つめ、どこでも焦点を合わせる必要のない場所を見つめた。
彼も自分の視線をどこに置けばいいのか分からなかった。
夢映も自分の姿を見下ろし、短い悲鳴を上げた。
続いて、二度目の平手がまったく同じ力と軌道で彼の右頬を打った。
「——!!」
今回は、真夢はよろめかなかった。
…………
……
夢映が二度目に打った場所は、一度目と完全に対称だった。
真夢は床にあぐらをかいて座り、両手を後ろの地面に付き、顔を上げて天井を見つめた。天井はやはりあの薄いベージュの平面で、細長いひび割れが依然として静かに伸びていた。
「……服を先に着てくれないか?」
「も、もう着てるよ!」
背後から慌ただしい布地の擦れる音が聞こえ、次にジッパーが一気に引き上げられる音がした。
「も、もういいよ……」
それを聞いて、真夢はようやく振り返った。
夢映は真夢の二歩後ろに立ち、パーカーとスラックスはすでにきちんと身につけていた。ただ髪だけはまだ濡れており、数本の髪が額や頬に張り付き、肩の上に薄い水痕を残していた。頬にはまだ先ほどの慌てた時の赤みが残っていた。
それを見て、真夢は立ち上がり、ゆっくりとベッドの端に座った。夢映もついてきて、ベッドの反対側の端に座った。
二人の間には少し距離があり、どちらも先に口を開かなかった。空気にはエアコンが掻き混ぜる微かな風の音と、遠くの通りからかすかに聞こえるエンジン音だけが残っていた。
気まずい空気が二人の周りに漂っていた。
「ところで……どうしてこんな時間に風呂に入ってたんだ?」
「だ、だって……目が覚めたら全身汗だらけで、べたべたして気持ち悪くて……」
「それで、なぜ明かりをつけなかった?」
「その時、あなたはまだ夢の中にいたから、起こしたくなくて、それで……」
夢映の声が小さくなった。
「……正直に言うと、本当に痛かった。」
真夢は親指で自分の頬を押さえ、その部分の皮膚が熱を帯びているのを感じた。
「ごめんなさい……」
「いや、俺にも責任がある。勝手にドアを開けるべきじゃなかった。」
「いいえ、私が……」
二人はそれぞれ自分の過ちを言い合い、その声は次第に小さくなっていった。
「まあいいや、どちらでもいい。情報交換をしよう。」
「情報? 何の情報?」
「レゼロが何を言ったかだ。君が消えた時、レゼロが君を連れ戻したんだろ?」
真夢に言われて、夢映は一瞬固まり、何かを思い出したように言った。
「ああ……そうそう。そうだな……」
夢映はあごに手を当て、眉をひそめて考えた。
「確か……私は夢喰いが私たちを追いかけてくる理由を聞いたんだ。でもレゼロは直接答えずに、そのまま現実に戻されたんだ。」
「答えなかった? 彼は君を教会に連れ戻した後に、何も言わずに現実に戻したのか?」
「うん……だいたいそんな感じ。」
それを聞いて、真夢は微かに眉をひそめた。
彼はレゼロが少なくとも何かを言うと思っていたが、相手は直接質問を回避した。この記述とクローリアの反応の類似性に、真夢は言いようのない感覚を覚えた。
「実は……たぶん私がうるさすぎたからだと思う。」
「……?」
「私が消えた時、自分が死ぬと思ったんだ。でも目を開けたらまだ生きてて、天国だと思って、いろいろ騒いでしまって……後で気づいてレゼロに理由を聞いたんだけど、うるさくてしつこいと思われて、答えずにそのまま投げ戻されたんだと思う……」
夢映はそう言いながら、指先で自分の指を弄っていた。
「……なるほど。それなら彼が質問に答えなかったのも納得できる。」
夢映の説明を聞いて、真夢は軽くため息をついた。
「それで……あなたの方は?」
「クローリアはいろいろ言っていた。夢喰いが積極的に主意識を侵食するのはありえないと言っていた。少なくとも、奴らの行動パターンはそうじゃないらしい。」
「なぜそうなるんだ?」
「今のところ、最も妥当な推測は私たちが狙われているということだ。おそらく能力のせいだろう。」
「能力? どんな能力?」
「それも聞いたが、彼女も分かっていなかった。」
夢映はそれを聞いて、水をかけられたように沈黙し、肩を落とした。
そして、夢映はゆっくりと顔を上げた。
「それじゃあ……昨日の明け方のことは……」
「おそらく夢喰いが君をアンカーしたんだろう。俺の方も、多分カルテを改ざんされた。奴らは知能が低くないから、俺の筆跡を真似るくらいは難しくないだろう。」
真夢はそう言いながら、背中から冷たさが上がってくるのを感じた。
彼は自分の言葉が単なる推測に過ぎないと分かっていたが、その一言一言がますます真実のように思えてきた。
「とにかく、君も俺もアンカーされた以上、彼らに備えるために気を引き締めるべきだ。」
「でも……私に何ができる? ただの普通の人だよ……」
夢映の声はどんどん小さくなり、その視線は落ち、自分の膝の前のシーツに落ちた。
それを聞いて、真夢は手を伸ばし、夢映の頭の上にそっと手を置いた。その力は、夢映が真夢の手の存在を感じられる程度のものだった。
「え……?」
夢映は顔を上げ、茫然とした目で真夢を見た。
「あまり考えすぎるな。少なくとも君には常人にはない能力がある。それだけで君が普通の人ではない証拠だ。だからこそ、今は立ち上がるべきじゃないか?」
真夢はそう言いながら、口元に微かな弧を描いた。
彼自身もなぜこの動作をしたのか分からなかった。何を言えばいいのか分からなかったからかもしれないし、何を言っても無駄だと分かっていたからかもしれない。しかし、何もしないよりはましだった。二人が黙って座っているより、相手が怖がっているのに見て見ぬふりをするよりはましだった。
優しい微笑みを浮かべる真夢を見て、夢映は少し照れくさそうに頭を少し下げた。
「は、はい……」
「うん、それで約束だ。」
とは言うものの、真夢は「約束した」ことと「できる」ことが別のことだとよく分かっていた。
朝の光は次第に明るくなり、カーテンの隙間から差し込む光は細い一本から幅広い帯へと変わり、床に明確な明るい痕跡を落としていた。部屋の中では、微細な埃が光の柱の中でゆっくりと漂い、目的地はないが常に動いている小さな生き物たちのように見えた。
真夢はその話を続けなかった。次に彼らがいつ現れるか、もしかすると次の夜かもしれないとは言わなかった。その言葉が何の助けにもならず、既に存在する恐怖をより具体的で重いものにするだけだと分かっていたからだ。彼はただ窓辺に立ち、通りの向こうの屋根の輪郭が朝の光の中で次第に鮮明になるのを見つめていた。
そして真夢は振り返り、まだベッドの端に座っている夢映を見た。
「……行こう。まずは朝ごはんだ。」
「え? 今から……?」
「うん。君も空腹だろう。」
夢映は口を開き、何かを言いかけたが、最後に軽くうなずいた。
「……うん。」
そう言って、夢映は立ち上がり、ナイトテーブルの上に置いてあったキャップを手に取ってかぶった。つばは以前より少し深くかぶられていたが、その状態は数日前よりずっと良くなっていた。そして彼女は入り口に向かって歩き出した。その足取りはさっきよりもいくぶんしっかりしていた。真夢はその後ろについて、部屋を出る準備をした。
入り口に差し掛かった時、真夢は振り返って部屋を見た。洗面所のドアはまだ開いており、部屋の中の灯りはすでに消えていた。シーツの上の圧痕はゆっくりと元に戻り、枕の中央の浅い凹みはまだ完全には形を戻していなかった。
「……」
その光景を見て、真夢は言いようのない感覚を覚えた。
三日三晩、彼は多くのことを知った。最初は奇妙な夢、次にクローリア、そして夢喰、夢喰い、夢映、レゼロ、アルイエスの遺産、階層……
これらの情報が彼にとって役立つのかどうか、あるいはこれらの情報が彼が現実に【アンカー】するための鍵となるのかどうか——
真夢はその問題を考えないことにした。
一、二秒ほど部屋の中を見つめてから、真夢はドアを閉めた。鍵がカチリと軽く音を立て、その後は完全に静まり返った。
廊下に二つの足音が響いた。一つは落ち着いた音、もう一つは少し軽い音。足音は一列になってエレベーターの方へと向かっていった。陽光が廊下の突き当たりの窓から差し込み、カーペットの上に一面の暖かな黄色を広げていた。
そしてホテルのあの部屋は、朝の光に照らされたまま、静かに次の夕暮れを待っていた。
真夢は、次に夢の縁をさまよう準備を始めていた。




