夢章一 25 『詰問』
「まずい————」
真夢は振り返り、全力で走り出した。
しかし、長時間の走行はすでに代償を現し始めていた。真夢の足取りは先ほどよりもずっと重く、ふくらはぎの筋肉は持続的なだるさを発していた。呼吸のリズムも乱れ始め、吸うたびに明らかな力みが混じっていた。
「うおおおおおおおおおおおおお————!!!!」
夢喰いの叫び声が背後から聞こえ、どんどん近づいてくる。
真夢が振り返って一瞥すると、白い影たちが廊下に沿って追いかけてきており、四本の手足が交互に地面を叩くリズムは速く、一歩ごとに床に明確な衝突音を残していた。距離も目に見えて縮まっていた。
「ちっ……面倒だな。」
真夢は急に足を止め、振り返って腰からハンマーを引き抜いた。動作はまだスムーズだったが、右手首の痛みがまだ微かに感じられたが、それでもハンマーをしっかりと握りしめた。
その時、彼は二つの物を同時に使うことはできないと気づき、一秒も迷わず懐中電灯を地面に投げ捨てた。そしてハンマーを握りしめて立ち、夢喰いが突進してくるのを待った。
夢喰いの姿が視界の中でどんどん大きくなり、青白い影が蛍光灯の明かりに照らされて次第にはっきりと浮かび上がった。そして、夢喰いの動きは先ほどよりも速くなっており、まるで獲物を狙い定めたかのようだった。
「うおおおおお——————!!!!」
「——!」
最初の夢喰いの腕が彼の目前に迫った瞬間、真夢の身体が急に後ろに引っ張られた。その振幅は大きくないが、あまりに突然だったため、彼は二、三步後退し、重心を崩してよろめいた。
横を向くと、視界の端には誰もいなかった。しかし、彼の視界の端に一つの木製のドアが現れた。
「な——」
言葉が終わる前に、真夢の身体はそのドアの中に引き込まれていた。最後に彼の視界に飛び込んできたのは、夢喰いの指が彼の服の端に触れかけた瞬間だった。
浮遊感が一瞬で押し寄せてきた。
真夢の身体は重力を失ったかのように浮かび、周囲の音も次第にぼやけ始めた。ただ、叩くようなドンドンという音だけが耳元で反響し続けた。その後、彼は目を閉じ、そしてゆっくりと目を開けた。
—————————
「……」
本棚。果てしない本棚。
それらの高い木造の構造物は整然と並び、空間全体を貫いていた。背表紙の文字は微かな光の中でぼんやりと浮かび上がっている。床は冷たい石板で、空気には紙と古い木の匂いが漂っていた。
そしてその前に、一人の女性が立っていた。藍灰色の長衣に墨色の長い髪、手は前で組まれ、視線は地面に落ちていた。
「……クローリア。」
真夢は一目で目の前に立つクローリアを認識した。
「真夢……あなた……」
「正直に話せ。これは一体どういうことだ?」
クローリアの挨拶を無視して、真夢は直接質問した。その口調には遠慮のない率直さが込められていた。
最初から、真夢は様々な場所に疑念を抱いていた。クローリアに対しても、夢喰いに対しても、正体不明の場所に対しても。彼にはもうクローリアの余談を聞いている余裕はなかった。
「教えろ、クローリア。お前は何もかも知っているんだろう?」
「……」
「聞こえないふりをするな、答えろ!」
真夢は次第に苛立ち、声のトーンが一段上がった。
クローリアが依然として沈黙を守っているのを見て、真夢はゆっくりと彼女に近づいた。その足音が石板の上でますますはっきりと響いた。
「………………あなたは彼らにアンカーされたのよ。」
クローリアの声はいつもより低かった。
「誰にアンカーされた? アンカーって何だ? なぜ俺がアンカーされるんだ?」
「夢喰いよ。アンカーは一種の位置特定能力のようなもの。あなたがアンカーされた理由は……おそらくあなたの能力のせいだと思う。」
「何の能力だ? まさか明晰夢の能力のことか?」
「……分からない。」
「分からない——?」
真夢は眉をひそめ、二歩前に詰め寄り、クローリアとの距離は身一つ分もなくなっていた。
「お前は俺の守夢人だろう? どうして俺の能力さえ分からないんだ? 一体何を隠している——!」
「……」
クローリアは答えず、視線を横にそらして隣の本棚の一点を見つめた。
「くそっ! 答えろ! クローリア————!」
真夢は我慢の限界を超え、クローリアの襟を掴んだ。その力は指の関節が白くなるほどだった。
「分からない……」
クローリアの声は依然としてか細かった。
「お前——」
真夢がクローリアの襟を掴む手にさらに力が入り、関節の軋む音がかすかに聞こえた。
それでも、クローリアは口を閉ざしたままだった。
「くそっ………………」
真夢は手を離し、半歩後退した。
「……夢映はどこにいる?」
「……」
「もしその質問にも答えられないなら、俺は連結体になるのを拒否する。その時は他の者を探せ。」
そう言って、真夢は振り返り、本棚の間へと歩き出した。
「待って————」
その時、クローリアが背後から真夢を呼び止めた。
「夢映は……レゼロのところにいるわ。」
クローリアはついに口を開いた。そしてそれによって一つのことが明らかになった。
——クローリアは確かにレゼロを知っている。
それを聞いて、真夢は立ち止まり、ゆっくりと振り返った。
「……そうか。」
真夢はクローリアの前に戻り、約三歩の距離で立ち止まった。
「では、二つ目の質問だ。俺と夢映の二人には夢喰の症状はないのに、なぜ夢喰いに引き寄せられた? お前の情報にはそんなことは書かれていなかったぞ。」
「それについては……」
クローリアはゆっくりと顔を上げ、真夢と視線を合わせた。
「……俺が言える答えはやはり『分からない』だ。しかしこれは事実だ。本当にどうしてこんなことが起きたのか分からない。能動的に主意識を侵食する夢喰いなんて……完全にありえないことだ。」
クローリアの表情にはごまかしの跡はなく、目もそらさなかった。真夢はその表情を見て、彼女が嘘をついていないと判断した。
「それなら——」
真夢はハンマーを腰の後ろに戻し、背筋を伸ばした。
「——しっかり話し合おう。夢喰いが俺と夢映を追いかけてきたことについて。」
「夢喰いがあなたたちを追いかけることについて……唯一説明がつくのは、彼らがあなたたちの能力を狙っているということよ。」
クローリアの声は先ほどより少し落ち着いていた。彼女も襟を整え、両手を再び前で組んで、表情は普段の穏やかな状態に戻っていた。
「ああ、そう言うなら、次は俺の能力について研究すべきだな。」
「分からないわ。もしかすると誰かが妨害しているかもしれない。」
「この小説みたいな展開はどうなってるんだ……」
クローリアの説明を聞いて、真夢は現在の状況にツッコミを入れ、その口調にはわずかな諦めが混じっていた。
彼はSF作品を読んだ時に確かに似たような筋書きを見たことがある——主人公が特殊な能力を持ち、何らかの勢力に狙われ、様々な出来事を通じて徐々に真実を明らかにしていくというもの。しかし自分がそのような展開を経験するとは思ってもみなかった。今に至っても、この件が小説のように簡単に進むとは思えなかった。
「もう一つ質問がある。」
「どうぞ。」
「俺と夢映が……さっきまでいた場所はどこだ? あの場所は決して夢ではないだろう?」
真夢はあの無限に続く廊下、絶えず変化する配置、そしてあの倉庫を思い出した。それらの特徴の組み合わせは、彼の夢に対する理解とは合致しなかった。
クローリアはその質問を聞いて、唇を微かに動かし、そして閉じた。
「………………ごめんなさい。」
「やはりそれも分からないか。」
真夢はそれ以上問い詰めなかった。彼はクローリアがある種の質問に対して沈黙することに慣れていた。
「でも、確かに少しは分かっていることがあるわ……」
「何だ?」
「あなたはまだ、あの場所の配置を覚えている?」
「配置……」
真夢は頭の中で先ほど歩いた道をもう一度なぞった。廊下の幅、ドアとドアの間隔、そして角の出現頻度。
「広い廊下が無限に続いていて、地域全体が網目状の構造になっているのを覚えている。現実世界には存在しそうにない配置で、強いて言えば異空間のようだった。」
「それ以外に? 例えば特別な場所とか。」
「特別な場所……」
真夢はあごに手を当てて、じっくりと考えた。
「一つ特別な場所がある。」
「どこだ?」
「そこには倉庫があった。入ってから出ると、この地域のどこにでもランダムに移動できるんだ。倉庫の中にはノートが一冊あって、ここでの状況が書かれていた。それに、倉庫の中の物はランダムにリセットされる。俺が持っているこれらはそこから手に入れたんだ。」
そう言って、真夢は腰からハンマーを抜いて振り、ポケットから二本の鍵を取り出して掲げて見せた。
クローリアの視線は真夢の手にあるそれらの物に留まり、眉をひそめた。
「何か……心当たりがあるかもしれない。ここで少し待っていて。」
そう言って、クローリアは振り返って最も近い本棚へ向かい、指を背表紙に沿って滑らせ、一冊の本を引き抜いた。
表紙の色はくすんだ黄色で、表面にはタイトルも印もなかった。そして彼女はそのページを開き、指を紙面に止めた。視線がページをゆっくりと辿ると、クローリアは唇を噛んだ。
「あなたたちはおそらく……夢でも現実でもない場所に迷い込んだのよ。」
「夢でもなく? 現実でもない?」
「そう。簡単に言えば、あなたたちがさっきいた場所は異次元の閾限空間で、現実世界とつながる一つの階層なの。」
「異次元閾限空間……」
これらの言葉の組み合わせは、何か架空の設定の中の用語のように聞こえた。
真夢は疑念を抱きながらも、今はそんなことを疑う余裕はなかった。
「それなら、ここは鏡域なのか?」
「違うわ。鏡域と夢は同格のものよ。強いて言えば、あなたたちがさっきいた場所は、それら二つと現実の間の階層に位置するの。」
「階層……」
真夢はその言葉を低く繰り返した。
彼の理解では、この区分はおおよそ次のようになる——現実が最上層で、彼が普段生活している場所。夢と鏡域はより深い場所にあり、それぞれ異なる位置を占めている。そして彼と夢映がさっきいたあの無限に続く網目状の廊下は、その中間に位置する。
「とにかく、私もこの本でかすかに見たことがあるだけよ。詳しいことは分からない。この本の後のページも空白だからね。」
クローリアは数ページめくった後、本をゆっくりと閉じて脇に挟んだ。
「ところで、あなたはどうやって私を見つけたの?」
「簡単よ。あなたが初めてここに入った時から、私はもうあなたに【アンカー】を設定していたの。何せ、あなたはここに入れる数少ない人物だから、勝手に消えさせるわけにはいかないでしょ。」
「それなら、お前が俺をアンカーした意図も、俺の身の安全を守るためか?」
「うん? そうじゃなきゃ何だと思ってるの? 現実では守れないけど、夢の中では私が一番あなたを守れるんだから。」
そう言って、クローリアの口元がわずかに上がり、優しい微笑みを浮かべた。
真夢は彼女を見て、その場にしばらく立ち尽くした。彼はクローリアの言葉を完全には信じられなかったが、少なくともクローリアは先ほど真夢の命を救った。
「……ありがとう。」
「どういたしまして。それで……他に質問はある?」
「今はない。」
「質問がないなら、もう帰っていいわよ。何せ一人暮らしの女性は、気性の荒い男を歓迎しないからね。」
クローリアはそう言いながら、顔を横に向けて唇を尖らせた。その顔には不快感が浮かんでいた。
「はいはい……」
真夢は振り返り、歩き出そうとして、急に立ち止まった。
「……違う。」
「どうした? まだ質問があるの? 先に言っておくけど、私と一夜を共にしようってのは却下よ。」
「そういう問題じゃない……」
真夢はクローリアの変な発言を遮り、ため息をついた。
「前回出ていく時、俺を無理やりここから出したのはお前か?」
「……私?」
その言葉を聞いて、クローリアは首をかしげ、その表情に変化が現れた。
「ちょっと待って、根拠のない罪を着せないでよ。あなたが勝手に消えただけじゃない。」
「でも、あの時は確かに俺を呼び起こす可能性のある機器はすべてオフにしていたのに、耳障りな音が聞こえたんだ。その場にいたお前以外に、俺に影響を与えられる者は誰もいなかった。」
真夢はよく分かっていた。自分は確かに自分の目覚ましをオフにしていて、目が覚めた後にも変な音は聞こえなかった。夢の中のあの耳障りな音は完全に彼の鼓膜を迂回し、聴覚内部に直接現れたもので、外界とは関係なかった。
クローリアの眉間の皺は先ほどよりも深くなった。
「でも——私は本当にこれがどういうことか分からないのよ?」
クローリアの表情は嘘をついているようには見えなかったが、真夢にはそれを見極める余裕はなかった。
「ふざけるな、さっさと——」
言葉が終わる前に、鋭いブザー音が真夢の意識に直接突き刺さった。
「うっ——————!」
真夢はこの音を二度も経験していたが、それでもその貫通力には耐えられなかった。しかも今回は前の二度よりも激しく、真夢はその場に跪き、全身の力が四肢の先から急速に失われていくのを感じた。
同時に、視界の端が暗くなり始め、本棚とクローリアの輪郭がぼやけ始めた。
「くそおおおおおおおお——————!!」
真夢は自分の声が遠くなっていくのを聞き、そして地面、本棚、微かな光——すべてが目に見える速さで消えていった。
彼の意識が完全に消える直前、クローリアが何かを言ったようにかすかに聞こえた。しかしその言葉はブザー音に大半がかき消され、わずかな音節だけが彼の耳に届いた。
最後に、真夢はアルイエスの遺産から完全に消え去った。




