夢章一 24『消離夢』
二人は暗い廊下を歩いていた。唯一の明かりは真夢の手にした懐中電灯だけだった。二人の足音が狭い廊下に反響し、一歩ごとに明瞭な残響を残しては、すぐに闇に吸収されていった。
その間、夢映はかすかに闇の中から奇妙な音が聞こえるような気がしたが、振り返っても何も見えなかった。
「ねえ……真夢さん。」
「どうした?」
「あとどのくらいで着くの……?」
「分からない。怖いなら俺の隣に立ってもいいぞ。」
「そ、そ、そういう意味じゃなくて——」
真夢の気遣いに、夢映は戸惑いを隠せなかった。
「……ただ、この廊下、来た時よりも長くなってる気がするんだ。さっきまでは数歩で倉庫の入り口に着いたのに、今はこんなに歩いても着かない。」
真夢は一瞬固まり、懐中電灯を前方に向けた。
先には依然として同じ廊下、同じドア、同じ間隔が続いていた。二人が歩くうちに何度か角も曲がったが、真夢はその角の数が多すぎるように感じていた。
「確かに……さっきよりも道が長いな。」
「そうだよね? やっぱりそう思う?」
「ああ。おそらく進む方向を間違えたか、空間自体が変化しているかのどちらかだ。」
「それで……どっちの可能性が高いと思う?」
「二つ目だ。この場所はそもそも常識通りには動いていない。」
そう言って、真夢は歩き続けた。足取りは先ほどより少し速くなっていた。夢映はその後ろについて、足音がぴったりと寄り添っていた。
二人はさらにしばらく歩き続け、その間も真夢は周囲の環境に注意を払っていた。
「ねえ、真夢さん。あのノート……信じる?」
夢映は真夢の後ろについて、小さな声で尋ねた。
「何を信じるかだ?」
「そこに書いてあったこと。あの人はここで四十日間過ごしたって言ってて、コーヒーがおかしいって言ってて、倉庫は安全だって言ってる……」
「一部は信じる。コーヒーの部分や空間構造の部分は信じる。でも後の方の内容は……あまり信じられないな。」
「それで……最後の部分は? 自分は外に出られないって言ってたあの部分。」
真夢は二秒間沈黙した。
「……分からない。」
「分からない?」
「あの人は最後に自分は外に出られないと言ったが、その結論を出すのに四十日間かかった。俺たちがここに来てまだ一時間も経っていない。出られるかどうかは分からない。」
「でも……もしあの人の言うことが本当だったら?」
「…………それなら、その前に出口を見つけるだけだ。」
それを聞いて、夢映はそれ以上問い詰めなかった。
真夢はさらに歩き続け、懐中電灯の光が壁面を滑らかに進んでいく。二人の足音が暗い廊下に響き、ひときわはっきりと聞こえた。
足音がしばらく続いた後、夢映が再び口を開いた。
「そういえば、真夢さん。夢喰いは本当に闇を怖がると思う?」
「……分からない。」
「さっき、明かりが消えた途端に引っ込んだんだから、闇を怖がってるんじゃないの?」
「それは分からないな。もしかすると、闇の中の別の何かを怖がっているのかもしれない。」
「別の何か……?」
「ああ。例えばあのノートに書いてあった変な音とか。」
「うぐぅ……そんなこと言われると余計に怖くなるよ。」
「なら、あまり考えすぎるな。光に従って進むだけだ。」
二人はさらに歩き続けた。
突然、懐中電灯の光の端に微かな揺らぎが現れた。光の輪の端を何かが一瞬通り過ぎたかのようだった。
真夢が立ち止まり、懐中電灯をしっかりと掲げて前方を見つめた。
「どうした?」
「さっき……何かが見えたような気がした。」
それを聞いて、夢映は真夢の背後から半身を乗り出し、光の方向を見た。
前方数メートルは何も異常はなかった。異物もなく、動きもなく、音もなく、奇妙なこともなかった。
「……何もないよ。」
「……」
真夢はさらにしばらく前方を凝視し、ようやく本当に何もないと確信した。
深呼吸を一つして、真夢はゆっくりと前に歩き出した。同時に、懐中電灯を左右に振って、ドアや壁を照らした。
「……真夢さん。」
「どうした?」
「もしも……もしもの話だけど、私もあの人みたいに、ここに長く閉じ込められたら……あなたは探しに来てくれる?」
「……たぶん来るだろうな。」
真夢は足を止めず、少し歩いてからゆっくりと口を開いた。
「ほ、本当?」
「ああ。だからそんなことを言うな。君はここに閉じ込められたりしない。少なくとも今はな。」
「うん……」
夢映はその言葉を聞いて、何か答えを得たように全身の力を抜いた。
「ところで、廊下が暗くなってからずっと質問してるな。怖くなったか?」
真夢は振り返らずに後ろに向かって尋ねた。
しかし数秒待っても、夢映の返事はなかった。廊下には彼自身の呼吸音だけが響いていた。
「……?」
真夢は振り返り、懐中電灯の光を地面から後方へと向けた。夢映はその場に立ち、うつむいたまま一言も発していなかった。
「……夢映?」
「……」
夢映は静かにその場に立ち、真夢の声が聞こえていないかのようだった。
「どうした?」
真夢は夢映の元に戻り、腰をかがめて彼女を見た。同時に、光が直接彼女の顔に当たらないように、懐中電灯の光をわずかにずらした。
「……真夢さん。」
長い間待って、ようやく夢映が口を開いた。しかしその声は先ほどよりもずっと小さかった。
「いるよ、どうした?」
「あなたはまだ、オフィスのあの時計を覚えてる?」
「……時計?」
真夢は頭の中で素早く遡った。
数分前のオフィスで、確かに自分は夢映に壁の時計を見せた。その時、彼はその時計に何か奇妙なものを感じたが、何がおかしいのかは言い表せなかった。その後、あの円形の領域に気づいて注意が逸れたため、夢映の言いたかったことを最後まで聞くことができなかった。
「覚えているよ。どうした?」
「……あの時計、私の視点ではすごく速く動いてるんだ。現実で一秒経つと、時計は十秒進むくらいの速さで。」
真夢は眉をひそめた。
「それで、今の感覚はどうだ?」
「……少しずつ何かを吸い取られている感じがする。何かが、私をここから外へ引っ張っているような気がするんだ。」
「これも……正常な反応かもしれない?」
「正常じゃない————!」
夢映の声が突然高くなり、肩が微かに震え、胸の前で組んだ両手を強く握りしめた。
「私、私……なんか……消えている気がする……」
「何——」
突然、真夢は夢映の身体の変化に気づいた。
今、夢映の身体の輪郭はぼやけ始め、その輪郭線は広がり始めていた。まるで水に濡れた紙の上の墨がゆっくりと滲み出しているかのようだ。闇が彼女の足元からゆっくりと這い上がり、少しずつ身体を覆っていった。
「夢映? あなた……」
「私……分からない……」
「……これはどういうことだ?!」
「真夢さん……私……私……」
夢映の声がどんどん小さくなっていった。
ますますぼやけていく夢映を見て、真夢は焦りを感じた。彼は手を伸ばして夢映の肩を掴もうとした。しかし彼の手のひらは彼女の身体をすり抜けた。実体のない映像の中に手を突っ込んだかのように、指先には何も触れなかった。
真夢はもう一度試したが、結果は同じだった。
「だめだ、ちょっと待ってて————」
「真夢さん……私……死ぬの?」
「そんなことはない、君は死なない、信じてくれ!」
真夢は自分の声をできるだけ落ち着かせようとしたが、指は微かに震え、額にも汗が浮かんできた。
「そうなんだ……」
真夢の言葉を聞いて、夢映の声が少し和らいだ。そして彼女は顔を上げ、真夢の方を見た。その表情は穏やかで、先ほどよりもずっと落ち着いていた。
「真夢さん……」
「あ?」
「……生きてね。」
その言葉が終わると同時に、夢映はその輪郭の端から中心へと急速に消え始めた。最初に輪郭線が消え、次に服、顔、髪の先が消えていった。そして闇が彼女の身体を包み込んでいった。
そして、短い残像だけを残して、何も残らなかった。
真夢はその場に立ち、手を前に伸ばしたままだった。懐中電灯の光が空っぽの廊下の床を照らし、夢映が立っていた場所には何も残っていなかった。ただ、地面の埃に彼女のつま先の跡だけが残っており、それがゆっくりと消えていった。
「夢映……?」
真夢は試すように声をかけたが、返事はなかった。廊下には彼自身の声だけが壁に反響し、闇に吸収されていった。
彼はゆっくりと手を引っ込め、その場に数秒間静かに立っていた。
その時、遠くから電源が入る音が聞こえた。
バチン————
次に二つ目、三つ目。
バチン————バチン————
真夢は音の方に振り返ると、遠くの廊下の灯りが一つずつ点灯し、光が廊下に沿って彼の方へと迫ってきているのが見えた。
灯りが点くにつれて、低い音から鋭い音へと変わる音が、灯りの点灯するリズムに合わせて遠くから聞こえてきた。
「ぐるる……はあああああ——————!!!」
案の定、先ほど退いた夢喰いだった。今や彼らは瞬時に真夢の位置を特定し、灯りの進行に合わせて彼に向かって追いかけてきていた。
今、ここには真夢だけが残されていた。




