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DFrontier-夢遊辺境  作者: V-CO
第一夢章:明晰夢

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夢章一 23 『別離の予感』

 鈍い音と共に、真夢の肩でドアが押し開かれた。


 夢映を中に押し込んだ後、真夢も続いて跨ぎ入り、振り返ってドアを閉めた。金属製の錠前がカチリと音を立てて噛み合い、廊下の音を遮断した。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 真夢は片手をドアに当て、腰をかがめて荒く息をした。隣では夢映が地面に座り込み、両手を後ろに付いて、同じように息を切らしていた。


 少し落ち着くと、真夢は耳を澄ませてドアの外の物音を確かめた。足音が追いかけてこないことを確認してから、手を離し、ドアに背を預けて滑り降りるように座り込んだ。背中が金属の表面に当たり、顔を上げて呼吸を整えた。


 しかし同時に、右手首の痛みが再びはっきりと感じられるようになった。


「うっ……」


 真夢は下を向いて確認した。手首の関節は腫れ上がり、手のひらも普段より膨らみ、関節の並びも正常な形ではなかった。


 先ほど逃げている間は構っている余裕がなかったが、今はその痛みが止まった瞬間から少しずつ増してきていた。


「真夢さん……大丈夫ですか?」


 夢映の声が横から聞こえた。心配と、まだ完全には整っていない息遣いが混ざっている。


「大したことない。心配するな。」


 そう言って、真夢は指を動かし、手首の状態を確認した。右手首は脱臼し、腫れ、関節が変形し、部分的に痺れていた。決して軽傷ではないが、対処できない程度でもなかった。


 そして、落ち着いた真夢は右手を下ろし、部屋の中の配置に注意を向けた。


 ここは倉庫のような場所だった。何列かの鉄製ラックが整然と並び、大小様々な段ボール箱が置かれている。どの箱の外側にも番号ラベルが貼られていた。


 真夢は一つのラックに近づき、段ボール箱の蓋を開けて中を覗いた。中には工事用の削岩機が入っており、金属表面はまだ新品同様だった。隣の箱を開けると、紙カップケーキがきれいに積み重ねられ、包装も完全だった。その隣の箱には電子部品が、さらにその隣には折りたたまれた衣服が入っていた。


「これらの物……どれもすごく新しいね。」


 夢映も立ち上がり、彼の隣に来て中を覗いた。


「確かに……まるで製造されたばかりのようだ。」


 真夢の視線はそれらの箱の間を移動し、そして一つの異なる箱に気づいた。この箱の縁は少し丸まっており、何度も開け閉めされたようだった。


 近づいて蓋を開けると、中にはノートが一冊入っていた。表紙は普通のクラフト紙で、縁は少し擦り切れていた。


「ノート……誰がここにこんなものを書いたんだろう?」


 夢映も真夢の隣に来て覗き込んだ。


 ノートを開くと、紙は少し黄ばんでおり、ところどころ字が滲んでいたが、大部分はまだ読めた。


 最初のページを開くと、二人はそこに書かれた内容を読み始めた。


 一日目:


「これは個人の記録だ。自分への警告のようなものだ。ここに来てから約三時間が経った。オフィスに時計があって助かった。そうでなければ時間の感覚を失っていたかもしれない。観察する限り、ここの配置は現実世界とほとんど変わらない。ところで、なぜ夢の中でこんな記録を取っているんだ? まあいいや、夢なら適当に書いておくか。」


 二日目:


「ここに閉じ込められて二日目だ。まだここがどういう場所なのか、さっぱり分からない。ただ夢を見たらこの場所にいた。この場所は普通の夢には見えない。部屋の外からは時折あの奇妙な唸り声が聞こえてくる。あの声が誰のものかは分からない。今は倉庫のような場所に隠れている。ここは一応安全そうで、物資も豊富だ。いつになったら目が覚めるんだろう。」


 三日目:


「三日目だ、まだ目が覚めない。それに、自分がここでかなり意識はっきりしているように感じるが、どうやら夢を自由に操ることはできないようだ。何か知らない力にここに閉じ込められているように感じる。この空間は、非現実的な空間のような奇妙な感覚を与えてくる。とにかく、この場所は夢には見えない。」


 四日目:


「もう四日が経った。まだここに閉じ込められている。ここの物資は毎日のようにリセットされているようで、中身も変わる。食べ物の時もあれば、ゲームカセットの時もある。たまに鍵もリセットされる。外のドアには鍵が全く必要ないように見えるが、念のため二本、ラックの一番上に置いてある。」


 五日目:


「五日目だ。あちこち歩き回って、探索してみようと思う。それと、マーカーペンのインクがもうすぐ切れそうだ。節約しなきゃ。そういえば、オフィスに新品があったはずだ。とにかく、この場所を探検して、出口を見つけようと思う。」


(内容欠落)


(内容欠落)


(内容欠落)


 次の数ページは欠落していた。紙には破り取られた跡があり、その端は不揃いだった。

 真夢はそのまま何ページか飛ばした。


 九日目:


「九日目だ。自分の精神がおかしくなっている気がする。さっき廊下の灯りが全部消えた。闇の中から何か音が聞こえてきた。怖い。倉庫に戻りたい。壁が最初からずっと見つめているように感じる。ドアの外に何かが歩いているようだ。足音はとても軽いが、粘っこい。オフィスのコーヒーで気を保とうとしたが、効果はほとんどない。しかし(内容欠落)」


(内容欠落)


(内容欠落)


(内容欠落)


(内容欠落)


 十四日目:


「探索中に怪物を見た。はっきりと見た。人型の四肢を持っているが、その比率は異常に歪んでいて、顔には裂けた口しかない。あれが何なのかは分からない。とにかく、当分外には出ないつもりだ。あいつらはどうやら俺を探しているようだ。」


(内容欠落)


(内容欠落)


 …………


 ……


 三十九日目:


「もうたくさんだ。いつになったら目が覚めるんだ。もう三十九日もここにいる。ドアの外のクソ野郎どもが、たびたびここを通り過ぎていく。足音も次第にはっきりしてきている。あいつらが何匹いるのか分からない。もうたくさんだ!」


(内容欠落)


(内容欠落)


(内容欠落)


(内容欠落)


 四十四日目:


「これが最後の記録になるだろう。これを書き終えたら、ここを出て、歩き続ける。永遠に目覚めないかもしれない——————


 ここまで読んで、真夢は背筋が凍るのを感じた。


 最後の日の内容は歪んでいて、字も非常に力強く書かれており、紙面には深い凹みが残っていた。


 最後のページをめくると、真夢は最後のページの紙面にはほとんど余白がなく、びっしりと文字が埋め尽くされているのを見つけた。


「誰かが読むかどうかは分からないが、とにかく、自分が知ったことを伝えておく。ここは現実世界の範疇にはない空間だ。どこまでも歩いても終わりがない。五部屋ごとに角があり、角には特別な場所はない。なぜなら、そんな角を千近く歩いたからだ。どの場所も配置は完全に同じだ。この倉庫だけが違う。この倉庫に入ると、空間全体を行き来することになる。ドアを開けると、前回とは必ず違う場所に出る。計算によれば、以前訪れた場所に到達できる確率は約0.0000000000000000000000341%、あるいはそれ以下だ。もちろん、これは私の計算に過ぎない。また、オフィスのコーヒーは飲まない方がいい。精神に影響を及ぼす作用があるようだ。それと、ドアの外のあいつらは生物の位置を特定できるようだ。どうやってやっているのかは今も分からない。だが、この部屋にいれば、あいつらは見つけられないだろう。私の観察では、この部屋は不安定な存在であり、生命があるかどうかも分からない。この部屋以外では、暗い廊下にいるのも比較的安全だ。あの生物は暗い廊下には足を踏み入れられない。しかし、彼らが闇を恐れているのではなく、闇の中にもっと恐ろしい存在がいるからだと推測している。とにかく、これらは私が最近知り得たこと、推測したことだ。」


 最後の一行は独立しており、前の内容から一段離れて書かれていた。そこにはこうあった。


【もしこの文章を読んでいるなら、この夢から逃げ切ってほしい。】


 真夢はノートを閉じ、しばらく静かに立っていた。


「夢から逃げ切る……」


 真夢は小さくつぶやき、沈黙した。


「真夢さん……あの人は最後に……」


 夢映の声が彼の横から聞こえた。彼女の視線はまだノートの表紙に留まっていた。


「……」


 真夢はすぐには答えず、ノートを再び開き、最初のページからもう一度素早く目を通した。それらの日付の間隔、字跡の変化、内容が最初の困惑から次第に恐怖と絶望へと変わっていく様子。


 ここに四十日間閉じ込められた一人の人間。


 困惑から崩壊へと向かう弧線。


「とにかく、ここにいるのは安全だ。むやみに飲食するな。」


 真夢はノートを閉じ、箱の中に戻した。


「つまり、この部屋は唯一の安定した地点かもしれないということだ。」


「少なくとも、彼はそう言っている。」


 彼の視線は箱から離れ、ラックの上へと向かった。


 ノートの内容を読んでいる時に、記録者が鍵について言及していたことに気づいていた。


 その後、真夢は手を伸ばしてラックの上部を探った。上の物を取り出すと、それは普通の金属製の鍵で、表面に特別な印はなかった。さらに奥を探ると、ラックの上部の奥にもう一本見つけた。最初の鍵と同じ外見だった。


「これを使うのか?」


「分からないが、持っていないよりはマシだ。」


 そう言って、真夢は二本の鍵をポケットに入れた。


「あの人はここで四十日間過ごして、結局外に出られなかったんだ……私たちも……」


 夢映が隣で低くつぶやき、その口調には不安が混じっていた。


「私たちはあの人とは違う。」


「……?」


「私たちは二人で、やるべきことも分かっている。」


 真夢の説明に、夢映は一瞬固まり、そして軽くうなずいた。


「それに——」


 真夢はラックの先の壁に顔を向けた。


「——私たちには守夢人がいる。」


「クローリアさんたちのこと?」


「そうだ。ここには対応する出口があるはずだ。今はそれを見つける必要がある。もし見つからなければ、守夢人たちがどうするか見てみよう。」


 そう言って、真夢は倉庫全体をもう一度見渡した。


 ラックの上の段ボール箱は依然として静かに並び、頭上では蛍光灯が低い唸りを続けている。床は平らな灰色のタイルで、特別な印はなかった。


 真夢は先ほど調べた段ボール箱の前に歩み寄り、蓋を開けて中を覗いた。中にはやはり削岩機と建設工具が入っていた。別の箱には依然として紙カップケーキが入っており、すべての物が元の場所にあった。


「今から外に出るのか?」


 夢映が真夢に尋ねた。口調は先ほどよりいくぶん落ち着いていた。


「いや、今はまだだ。もう少し待つ。」


 真夢はラックの反対側に歩き、箱から携帯用の懐中電灯を取り出し、電池ケースを確認して使用可能であることを確かめた。そして予備のバッテリーパックも見つけてポケットに入れた。


 続いて、建設工具の入った箱からハンマーを手に取った。柄を握り、それを腰の後ろに差した。


「よし、行こう。」


 真夢はドアの前に立ち、ドアノブを握った。頭を傾けてドアに近づけ、数秒間耳を澄ませた。外に夢喰いの気配がないことを確認してから、真夢はドアを開けた。


「ついて来い。迷子になるな。」


「うん……」


 そう言って、二人は一列になって部屋を出た。


 外に出ると、そこは依然として廊下だったが、廊下の配置が変わっていた。以前は廊下の中央にあった倉庫が、今は角の位置に現れていた。両側には依然として整然と並ぶオフィスのドアがあり、頭上では蛍光灯が唸り続けている。そして、先ほど追いかけてきた二匹の夢喰いは姿を消していた。


 これはノートに記録された内容が確かに事実であることも示していた。


「やはりな……」


 その光景を見て、真夢は思わず感嘆の声を漏らした。


「そういえば……真夢さん。」


「どうした?」


「どうして夢喰いがここにいるんだ?」


 夢映が振り返って真夢に尋ねた。その声には困惑が混じっていた。


「現実では私たちはホテルにいる。人を休ませるための場所だ。だから人間の身体を乗っ取ろうとする夢喰いは、この好機を逃さない。」


 真夢は低く説明しながら、周囲の気配に警戒していた。


「でも……クローリアさんは、夢喰いは夢喰の症状がある時にしか現れないって言ってなかったっけ?」


「——!」


 その言葉に、真夢はその場で固まった。視線を廊下の先から外し、横を向いて夢映を見た。


 夢映の言う通りだ。クローリアは夢喰いの行動論理を明確に説明していた。彼らは人間が夢喰になった時に夢に侵入し、少しずつ意識を侵食していくという。


 しかし、真夢と夢映の二人には夢喰の症状は全く見られない。そして先ほどの夢喰いの行動パターンも意識の侵食というより、むしろ二人を直接捕まえようとしているように見えた。


「まさか……」


 真夢がその問題を考えていると————


「ああああああああああああああ————————!!」


 二人の背後から鋭い叫び声が聞こえた。


 振り返ると、視界に飛び込んできたのは先ほどの夢喰いだった。今、彼は廊下に沿って二人に向かって突進してきている。四本の手足が交互に地面に着くリズムは均一で、一歩ごとに地面に明確な衝突音を残している。


「何だよ、出たと思ったらすぐに遭遇するなんて!」


 真夢が夢映を連れて倉庫に戻ろうとしたその時、角から突然白い手が現れた。別の夢喰いが側面の廊下から半身を乗り出し、倉庫に戻る道を塞いだ。


「すぅ——ぐるる————はぁ——————ごぉ————————」


「くそっ————!」


 真夢は迷わず、夢映を連れて反対側の廊下へと走り出した。


「わああああ! なんでまた追いかけてくるの——————」


 夢映の声が真夢の背後から聞こえ、明らかな慌てた様子が伝わってきた。


「文句を言ってる暇はない、走れ!」


 真夢は後ろを振り返った。二匹の夢喰いが廊下に沿って追いかけてきており、その速度は先ほどより少し速く、互いに一定の間隔を保っていた。


 廊下には二人の足音と夢喰いの叫び声、そしてそれぞれの息遣いが絶え間なく響き渡っていた。


 その時、頭上で明かりがちらつき始めた。


「……?」


 蛍光灯がまず数回不安定に明滅し、次に蛍光灯の列全体が突然激しい光を放ち、二人は目を開けていられなくなった。


 そして灯りが一列ずつ消え始めた。


 バチン。


 バチン。


 バチン。


 光が廊下の一端からもう一端へと徐々に後退し、闇が徐々に二人に迫ってきた。


 同時に、夢喰いが突然足を止めた。


 灯りが少しずつ消えていくにつれ、夢喰いの足音も徐々に後退していった。灯りが消えるたびに、彼らは一歩後退した。灯りのある場所が彼らの限界だった。


 最後の灯りが消えると、廊下は完全に闇に包まれた。


「…………」


 真夢は息を殺し、耳を澄ませて闇の中の物音を聞いた。


 ……


 静かだ。


 驚くほど静かだ。


 夢喰いの足音も叫び声も消え去っていた。


 真夢は懐中電灯のスイッチを押した。一筋の光が筒口から放たれ、前方数メートルの範囲を照らし出した。


「やはりか……」


 その光景を見て、真夢はノートの内容を思い出した。灯りが消えた——記録されていた内容と同じだ。


 しかし彼はその先の内容も思い出した。夢喰いが闇を恐れているのではなく、闇の中に夢喰いが恐れる何かが存在する可能性があるということを。


「いや、ここに長居はできない……」


 真夢は声を潜めて言った。


 しかしその前に、彼にはもう一つ解決すべきことがあった。彼は横を向いて、ゆっくりと口を開いた。


「もう大丈夫だ。だから……離れてくれないか?」


 見下ろすと、夢映は両腕で真夢の身体をしっかりと抱きしめ、その頭を真夢の背中に埋め、全身が微かに震えていた。


「……………………?」


 真夢の言葉を聞いて、夢映はゆっくりと目を開けた。


「わあああ、ご、ごめん……」


 夢映は慌てて手を離し、半歩後退した。全身が一瞬で真っ赤になった。


 真夢はそれについて何も言わず、懐中電灯の光を壁に向けた。光が平らな壁面に当たり、彼は壁にひび割れがあることに気づいた。それらのひび割れの分布は不規則だったが、縁の弧は真夢にとって見覚えのあるものだった。


「これ……見たことがある気がする。」


 夢映の声が横から聞こえた。


「どこで見た?」


「あの……オフィスのあの円形の部分だよ。夢喰いが出てきた場所。」


 それを聞いて、真夢は前に進み、ひび割れの縁に触れた。そして腰をかがめて目をひび割れに近づけ、中を覗き込んだ。


 しかし、彼が見たのはいくつかの砕けた石と壁の内部の薄暗がりだけだった。


「特に何もないな……」


 真夢は背筋を伸ばし、手のほこりを払った。


「それで……今、どうすればいいの?」


「今は? とにかくあの倉庫を探すんだ。闇の中にはもっと大きな危険が潜んでいるかもしれないからな。」


「え? 闇の中に他にも何かいるの?」


「ああ。ノートに書いてあった。闇の中から変な音が聞こえてくると。」


 真夢の言葉に、夢映は全身に震えが走った。


「よし、まずは元の道を戻って探してみよう。いつ照明が戻るかも分からない。」


 そう言って、真夢は懐中電灯を掲げて二人が来た道を戻り始めた。


 光は彼の前方に小さな円形の明るい領域を形成し、その外側は闇で満たされた廊下だった。足音が静かな廊下でひときわはっきりと響く。


 夢映はその場に立ち、自分の右手を見下ろした。彼女の指の縁がぼやけ始めていた。まるで水で薄められた墨がゆっくりと周囲に広がっていくかのようだ。


「……」


 自分の手を数秒間見つめてから、夢映は拳を握りしめた。顔を上げて真夢の方向へ駆け出した。

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