真実の愛2
辺りが騒がしかった。
お姫様が慌てて塔の外に出ると竜の姿はなかった。
そこにいたのは一人の青年だった。
「俺、こんな顔でしたっけ?」
竜に似た声の青年は言った。
「変幻魔法で再現してるだけだからなあ」
魔法使い達は言った。
「あなた、竜なの?」
お姫様は恐る恐る言った。
「はい」
青年はお姫様を見て言った。
「……呪いがとけたの?」
お姫様はもっと恐る恐る聞いた。
竜は真実の愛を見つけたのかもしれないと思った。
それはお姫様にとって、世界を知ってしまったお姫様にとっては、少し怖い事だった。
「まさか。
そんなに簡単にとける様なものだったら他の竜なんて存在しないよ」
竜は言った。
それから説明された。
姿かたちだけを竜になる前の魔法使いに似せているのだと。
「これで街に買い物に行ける」
そう言いながら竜は周りの魔法使い達に礼を述べていた。
「それにこの体の間は研究を纏められる」
竜は嬉しそうだった。
「その姿なら、真実の愛を見つけられるとは思わないの?」
お姫様は聞いた。
魔法使いは嫌な顔一つせずに言った。
「恋をされたら真実の愛が手に入る。
みたいな簡単な話じゃないと思うよ」
竜ははっきりと言った。
その姿であれば誰かと愛し合って、彼が竜として欲し続けている真実の愛が手に入りそうなものなのに。
けれど、彼は違うと言った。
お姫様は「本当に愛し合える人が必要ということではないの?」と聞いた。
「うーん。その質問は難しい」
竜は答えた。
「世の中の恋人たちは皆真実の愛を手に入れたと思うかい?」
竜がたずねるように聞いた。
お姫様は首を振った。
ただし、お姫様が思い浮かべたのは自分の父と母だった。
お姫様を捨てると決めて生んだ母と、父。
そこに真実の愛があるとはとても思えなかった。
「じゃあ、本物の愛って何だろうね。
一生をかけて浮気をしなかったなんて、後になってようやく分かることだ。
命がけだよそんなもの」
お姫様は命がけという意味がよく分からなかった。
「つまりは、真実の愛というものが恋愛の愛だとしてそれが分かるのは伴侶のどちらかが死ぬ瞬間だけだ」
そういうものかとお姫様は思った。
心の奥底でそれは違うのではないかとも思った。
すくなくとも、その時に分かったことは竜の呪いはとけていないし、真実の愛はそんなに簡単には見つからないらしいということだけだった。




