真実の愛3
ある時。
それは、本当にふとした瞬間の事でした。
お姫様はいつものように木苺のパイを竜にふるまっていた。
竜は時々しか人間の姿になれない。
本来の姿をゆがめるというのは大層大変らしい。
けれど、時々食卓を一緒にかこんでくれることがあった。
それが竜自身の楽しみというよりもお姫様のために行われていることに気が付くだけの教養は授けてもらえた。
だから、これが初めての二人きりの食事という訳ではない。
特別な日だったとか、誕生日だとかそういう訳でもない。
何かが特に上手くいった日という訳でもなかった。
理由はお姫様自身にもよくわからなかった。
けれど、ただ二人でいつもの木苺パイを食べていた瞬間、唐突に気が付いたのだ。
お姫様は竜のことを好きになっていた。
普通であれば、ここで悩むのかもしれない。
年齢の事、竜と人間であること。
お姫様は強制されてここにいること。
色々悩むのかもしれない。
けれど、お姫様は知っていた。
彼は真実の愛を求めていると。
貰ったところで、それは違うものかもしれない。
意味がない可能性が高いことはお姫様にもちゃんとわかっていたし、説明もされた。
けれど、今のところ誰も『真実の愛』というものがなんだかわかっていない。
それなら試さなければならない。
もしもそれで、竜が心に抱える問題が解決するならそれ以外の問題はどうでもいいとさえお姫様は思った。
「ねえ竜。
私、竜のことが好きよ。
愛しています」
まるで普通のお茶の時間の会話の様にお姫様は言った。
けれど、お姫様の心臓は不安でドキドキと音を立てていた。
お姫様は竜とどうこうなりたいということは何も考えていなかった。
そんなことを考える前に竜に告白してしまったからだ。
けれど、試せることはすべて試したかった。
お姫様は竜のことが好きだったし、それにお姫様が人として生きられているのは竜のおかげだった。
何か一つでも、一粒の何かでも返したかった。
それに、お姫様は竜に何も望んでいなかった。
想いを返してほしいとも、それこそ夫婦になることも何も望んでいなかった。
竜はお姫様を見つめた。
そして、お姫様が何も望んでいないことに気が付いて、小さくため息をついた。
「ありがとう、気持ちは嬉しいけど、それは真実の愛ではないみたいだ」
と答えた。
お姫様は竜がお姫様をどう思っているのか少しだけに気になったけれど言葉にはしなかった。
「そうですか。
残念です。
恋愛感情が愛としてあなたに贈られるのならよかったのですが」
金を集めている竜の様に、少しでも竜が健やかに暮らせるのならと思ったけれど駄目だったようだ。
竜は変わらないように見えたし、真実の愛を受け取ったという気分にはやはりなっていなかった。
「それでは私は、他の愛を渡せるように頑張りますね」
お姫様がまるでめげてない様子に竜はいささか驚いてしまった。
「他の愛?」
「……そうですね。敬愛は、もう充分あなたのことは尊敬していますし、うーん難しいですが色々あると思いますよきっと」
お姫様は言った。
そして話はそれだけという感じで、木苺の群生地の話に話題は移ってしまった。




