真実の愛1
服は前よりずっと綺麗なものを着ている。
洗濯も綺麗にできるようになった。
竜は魔法使いに頼んで、鱗を売っているらしい。
竜の血には驚くような値が付くと聞いて驚いた。
お姫様はお金の意味を知った。
だから自分でもお金を稼ぎたいと思った。
最初に始めたのは塔の前の畑で魔女に言われた薬草を育てて街で売る事だった。
それから刺繍をしたハンカチやリボンを売った。
魔女に紹介された店はお姫様の作ったハンカチやリボンをまた買い取りたいと言ってくれた。
胸がドキドキした。
竜にその話をすると、「それはうれしいな」と言った。
「嬉しいは、愛に似ている?」
「うーん。感謝は愛に似ているかもしれないけれど……」
残念ながらこの姿になる前から、そんなことは無駄だと忘れてたからね。
と、もごもごと竜は言った。
「恋はしたことはある?」
「何故そんなことを聞く?」
「だって、恋も胸がドキドキするんでしょう?」
「店主に恋をしたかもしれないって話かい?」
お姫様は少し悩んで「それは、違うと思うわ」と言った。
それから少しずつお姫様は仕事を始めた。
そのころからお姫様はどんどん体が成長して大人の体になっていた。
お姫様は刺繍を気に入ったお客から、「絵も描いてみたらどうだい?」と言われた。
刺繍の図案の中に伝統的なもの以外にお姫様が考えたものが独創的だったからということらしい。
その話を竜の研究にきている魔法使いにすると、それは面白いとお姫様に画材とキャンバスを何個か渡した。
「好きなものを描くといい」
そう言われたけれどお姫様は何を描いていいか分からなかった。
刺繍の図案は伝統的なものは昔から決まったものを刺す。
オリジナルのものも、用途に合わせて図案を考えただけだった。
用途に合わせて考えるという教養が付いたことは素直にうれしいことだけれど、好きなものを描くということがとてつもなく難しいことにお姫様には思えた。
真っ白なキャンバスを前にお姫様は途方に暮れた。
絵具の使い方はちゃんと教わっていた。
薬草のスケッチの仕方も、野生の薬草を取るためにやり方を教わった。
だけど、好きに描いていいと言われてもお姫様には分からなかった。
寝る前に、お姫様はいつものように竜に聞いた。
竜は「目をつむってみて」と言った。
お姫様は竜の言った通りにした。
「最初に思い浮かぶものは?」
竜の静かな声が言った。
お姫様は目をつむったままだ。
最初に思い浮かぶもの……。
竜の姿だった。
今まさに竜と話しているからかもしれないけれど、お姫様が最初に思い浮かんだものは竜だった。
「ありがとう!!何を描いてみるかきまったわ」
お姫様は竜に言った。
「それはよかった」
竜はそれだけ言った。




