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竜の塔に閉じ込められたお姫様、但し英雄は来ない  作者: 渡辺 佐倉


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傷物の姫君1

お姫様は今までよりも綺麗な服を着ました。

そして歩きやすい靴ももらいました。


歩きやすい靴は姫君用のものではないということを教わりました。

それ以外にも色々、この世界の成り立ちの事、お姫様の国の事、貴族のルール、どうして貴族はうまれたか。

そして魔法使いというのは何なのか。


色々なことを習いました。

三日にいっぺん、魔法使い達がかわるがわる来ては色々な勉強をしてくれました。

塔の横に小さな小屋も立ててくれました。

そしてそこに本を少しずつ持ってきて読むように言われました。


お姫様は言われた通りにしました。

言葉遣いや色々なことも教わっていたので、大人用の本も読めるようになった。


お姫様はもし竜が倒れることがあってもお姫様として城に戻れないことを知りました。

それをキズモノだということも。


けれど、そもそもお姫様は今までお姫様として暮らしてなかったことも理解しました。

ただ、王族の血が流れているいらない存在であったことをきちんと理解しました。


悲しくならなかったといえば嘘になる。

竜がお姫様に同情的だったのは多分そういう部分を知っていたからなのだろう。


竜がどうなろうとお姫様に帰るところはない。

魔法使いの一人が言った。


「だから、あの呪われた魔法使いのことは忘れて、一人で幸せになる方法があるよ」


授業の時間の後、お姫様が入れたお茶を飲みながら言われた言葉をお姫様は考えた。

竜は真実の愛を見つけても竜のままで。

竜の力は強大で、誰も倒しには来ない。


そして竜はずっと竜のままなら、お姫様はお姫様で別の人生をおくればいい。


魔法使い達の中で何人か新しい生活に協力してもいいというものがいる。

そう言われた。


お姫様は世の中に色々な職業があることを知っていた。

平民が暮らす家やアパルトメントがあることをもう知っていた。


刺繍も、繕い物も、そしてお菓子作りも料理作りも教わってできるようになっていた。

そして、塔の周りは畑になっていて自給自足ができるようになっていた。


お姫様には残念ながら魔法の素養はまるでなかったけれど、それ以外でできそうなことは色々あった。


けれど、そうします。とどうしてもお姫様は言えなかった。


竜は本当にひとりぼっちになってしまうかもしれないと思ったからだ。

竜に出会う前のお姫様みたいに。


ずっとずっとひとりぼっちになってしまう。


それに――


お姫様はまだ、真実の愛というものが何かよくわからなかった。

家族愛というものがあるという事実は知った。

お姫様はもらえなかったものだ。

忠誠心というものがあることも知った。

お姫様に忠誠を誓うものは誰もいない。


少しずつ知識は増えていき、本来お姫様が受け取るべきものがどこかでかすめ取られているのでまともに塔に物が届かないか、それとも最初から見殺しにするつもりなのか。

そういうことはだんだんと分かってきたけれど、竜の呪いが欲している真実の愛というものが一体何なのか。

それが分からなかった。

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