第十五話『暴れ蛮族ぎったんばったん』
最近仕事が忙しく更新がおろそかになってしまっております。
申し訳ありません。
「あっ、シオンくん。エクエス様はもうおねむなん?」
「そういうメーコちゃんもなんだか眠そうね」
「あ……すみません、シオンさん。お出ししたお酒に酔ってしまわれたようで」
とろんとした目で、えへへぇ~と微笑むメーコちゃん。ミルカさんが申し訳なさそうにしているのを、気にしないで、と答えつつメーコちゃんの傍に寄った。
お酒で体がぽかぽかしている様子で、さもご機嫌な感じに微笑んでいる。
「さ、メーコちゃん。寝ようね」
「うん、ウチはシオンくんと一緒に寝るんよぉ」
「はいはい」
近づくとぎゅーとしてくるメーコちゃんの温かみを感じながらも、彼女を持ち上げる。
相変わらずぽわぽわした髪の毛が頬に触れてくすぐったい。それを我慢しながらも彼女に用意されたお部屋の中のベッドへと眠らせて……大広間に戻った僕は、ミルカさんさんの真面目な視線に気づいた。
「シオンさん」
「うん。何かな、ミルカさん」
話したい事があるのは真面目な目を見れば分かる。
「少しお時間をいただけますか?」
ミルカさんの部屋へと赴く。
部屋の中は薄暗く、明かりの魔道具はあるけどあえて光を灯してはいないらしい。
光は部屋の外、窓から木々の枝を抜けて降り注ぐ淡い月光のみだった。
さて、中で何の話をするのだろう、とミルカさんの後を付いていったのだけど……部屋の隅、ベッドの脇には大きな布がある。時折もぞもぞ蠢いていて……なぁにあれ? 反射的に質問の声をあげようとした。
「あの……ミルカさ……」
「すみません申し訳ありませんがちょっとだけお待ちください!!」
だが僕の質問を断ち切る勢いでミルカさんは一気にまくし立てる。
そう言うが早いか、ミルカさんは僕の目の前でばたんっと扉を閉めたのであった。
なおここから先の会話は僕には聞こえなかった。しかし理解の一助となるので……後日、ミルカさんが教えてくれた会話の内容を一緒に挙げておくことにする。
『ちょっと、お姉ちゃん! 今から大切なお話をするのにどうしてお姉ちゃんが部屋の中にお邪魔してるの?!』
『だって気になる。……何を話すか、興味いっぱい』
『……お姉ちゃん。わたし、お姉ちゃんの人生に関わるとっても大切なお話をシオンさんとしようと思うの』
『ええぇっ?!』
『……あのね……わたし、お姉ちゃんの事大事なの。お姉ちゃんには幸せになってほしいの。結婚する事が一番の幸せだなんて悟ったようなこと言う気はないけど……もしこの機会を逃したらお姉ちゃんもう一生結婚できない気がするの』
『そ、そんなぁ?!』
『……話はお姉ちゃん自身からさっき聞いたけど、どうして『わーい小さくて可愛い美少年だー、抱き締めさせて』みたいな下心満載のお姉ちゃんをハグしてくれたのか本当に不思議だわ。邪気を感じなかったのかしら? お姉ちゃんが初対面の人に好かれる理由なんておっぱい大きいぐらいしかないのに』
『ひどい!!』
『涎垂らしてなかったわよね?』
『ハグした後でちょっと……シオンの服に涎つけちゃた』
『それでどうして普通に接してくれるのか不思議ね。天使かしら?
だから……この機会を逃さないためなら、わたし何でもするわね。
いい、お姉ちゃん。……黙って聞いていてね?』
『うん』
『動いちゃダメよ?』
『うん』
『恥ずかしくても耐えてね?』
『うん』
『それシオンさんが使うお布団だからヘンな事しちゃダメよ?』
『……!(その手があったか! という顔)』
『お姉ちゃん』
『うん』
『余計な事をしないように、簀巻きにするね』
……僕が扉の向こうの、どたんばたんという格闘音に首を捻りながらしばらく待っていると、ようやく開いた。
「ど、どうぞ、シオンさん」
「お邪魔します」
僕はそう言うと――先ほどの布団がなぜか縄で巻かれている光景が目に入った。
今では床に無造作に転がされている。
「あの。あの簀巻きはいった「気にしないでください」」
……時々じたばたするような動きを見せているけど、動物でも縛っているのかしら?
ただ、ミルカさんの眼差しが真剣みを帯び始めているところから、僕は本題が待っていることを察した。
「シオンさん。お願いがあります」
「うん。なんだろうか」
すぅ、と息を吐き、呼吸をする。
緊張する様子、男女二人きり。もし初対面でなくて。相手が結婚間近でなければ告白でもされるのだろうかと勘違いしたかもしれない。
それほどまで、ミルカさんは緊張し……意を決したように頭を下げた。
「お願いします……ルコッチャお姉ちゃんをお嫁さんとして娶ってくださいっ!」
「……んんっ?」
意味が分からず、僕は首を捻って答える。
なぜか部屋の片隅の簀巻きがやたらと暴れているのも、目に入らなかった。




