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異世界空中活劇!  作者: 八針来夏
第三章『陰謀編』
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第八話『対魔獣空戦』

「ザスモー、超音速巡航形態(ハイパークルーズ)へ」


 両足、そして腰部の前推力器の推力ベクトルを後方へと集中。

 同時に腕を覆う装甲の内部にある操縦桿を入れて推力を上昇すれば、ギュスたちの乗る縦横無尽(フラーヴィ)号を置き去りにして瞬時に戦闘領域へと侵入する。

 その時だった。


『レグルスーーーーー!』


 脳内を貫く、強烈な危機感と恐怖が、念話を通じて僕の脳内を錐のように貫いた。

 誰かの命が危機に陥っていることを瞬時に悟ると、超音速巡航形態(ハイパークルーズ)を解除し、瞬時に目標に狙いを定める。


「させるかああぁぁぁぁぁ!!」


 視界の向こう側、ワイバーンに宙へと持ち上げられた鎧姿の男性の姿。

 僕はそこへと飛び込む。

 ……魔術銃(マージライフル)を初めとする射撃は使えない。空中でもみ合う両者に対し、人間だけを狙わずに当てるなどという芸当は僕には不可能だ。

 一刻を争う事態では、腰部に搭載したメタルセイバーを悠長に準備する暇もない。

 その時、僕の脳内に一瞬だけ過去の戦闘の記憶がよぎる。

 地上に降りてきて真っ先に出くわした戦闘。あの四機編成の魔女騎士(ヘクセリッター)たち、髑髏を取り扱うもの(スカルブローカーズ)の一機が見せた……滑らかな蹴り技を思い出した。


「でああぁぁぁ!!」


 大推力蹴撃(ブーストチャージ)。

 ザスモーの操縦システムは僕の思念を正確に汲み取ってくれる。

 脚部を構えて、その大推力と質量をキックという形でワイバーンの頭部へと叩き付けた。

 魔獣の強靭な筋肉と骨格も、桁外れの速度と大質量を前にしては無力。ぐしゃっ、とか、べきっ、とか肉と骨のひしゃげる恐ろしい音と共にワイバーンの頭を蹴り飛ばし……そのまま手を伸ばして鎧姿の男性を掴む。

 そこで、ようやく相手が少し前に出会った冒険者パーティーのリーダー、レグルスさんであることに気づいた。


「風よ、其の身でかの人を受け止めよ、大地が敵ではない事を示せ。落下制御《フォーリングコントロール》」

「お前はっ……?」


 魔女でありながら、男特有の少年の声。

 それは、男でありながら、男には操れないはずの飛翔甲冑(メイル)を操る、シオン=クーカイという人間の異質さに気づかせる要因になりかねない。


「悪いが、事情の説明はなしだっ!!」

  

 誤魔化す事の面倒さに頭を抱えるような気持ちは一瞬だけ胸をよぎったが、今は後回し。

 レグルスさんから離れつつ敵を睨んだ。まずは、すべてのワイバーンを撃墜せねばならない。僕の存在に気づいたワイバーンたちは羽ばたきの音と共に上昇し、それぞれが魔術障壁(シールド)を展開する。


「……冒険者という職業があるけど、僕はそれにはなれなかった。

 かつて楽しんだ冒険譚とは少し違うけれども……飛龍殺しの武勲なら得られそうだな」


 魔術銃(マージライフル)を構え、円盤盾(ラウンドシールド)を握り締める。

 

「一匹だけじゃ名誉としては不足だ。飛龍百匹堕としとでも名乗ろうか……!!」


 僕の言葉が聞こえたわけでもないだろうし、理解できる知性など欠片ほども持ち合わせてはいないだろう。

 だが、仲間の報復とばかりにワイバーンはその口蓋を一斉に開き、喉奥から強烈な熱の光を吐き出してきた。


 まるで空中を走る炎の槍。相手の魔術障壁(シールド)を突破し、魔女(ヘクセ)を殺害するために追いかけ射殺す息吹(スマートブレス)が一斉に吐き出された。

 オレンジ色の炎熱の塊。それらは衝撃波によるペイパーコーンを引きながら一直線にザスモーへと追尾する。

 

「よし、来い、僕を狙え!!」


 僕への攻撃が苛烈で激しいほど、それはギュスやメーコちゃん、そして地上にいるレグルスさんを初めとした仲間達がフリーに動けるという事になる。

 敵の攻撃警告が、僕の視界を覆うザスモーのゴーグルめいたディスプレイ(HMD)に表示される。

 戦闘機の回避セオリーで考えるなら、敵の高速ミサイルに対し、僕は推力を上げながら、森の木々を舐めるような降下飛行を行うべきだ。

 高い坂道を自転車で下れば勢いが付くように、高度を下げれば機体速度が増して相手の攻撃を回避し易くなる。また敵の射撃に対して直角に動くことで回避率は飛躍的に上がる。


 しかし、今回その判断は取れない。

 なぜなら地上には助けなければならない人々がいて、低空を飛べば僕を狙い損ねた追いかけ射殺す息吹(スマートブレス)の流れ弾の被害に合わせてしまうかもしれないのだから。

 それでも、僕はにやりと笑う。


「だが……生憎とこのザスモーはその常識を置き去りにして飛ぶパワーがある!!」


 メインブースターに魔力を集中。真上に上昇する。それは本来、悪手も悪手。

 自転車で坂道を登ればスピードが落ちるのと同じ道理で、上昇すれば速度が落ちる。そして速度が落ちれば、敵の攻撃が命中し易くなる。

 だが、そんな回避のセオリーは、このザスモーには必要ない。これまでにない強烈で巨大な推進炎が、ザスモーの背部ユニットから噴出される。まるで瞬間移動めいた強烈無比の加速性能。

 高度を下げて速度を稼げないのであれば、基礎スペックの圧倒的な高さによる大推力で振り切ってやる!!

 追いかけ射殺す息吹(スマートブレス)の初弾を回避。それらは命中するべき僕の位置を見失い、熱エネルギーを無為に大気へと撒き散らしながら四散していく。回避(ブレイク)成功。

 だが、僕の回避上昇に追いかけるように、十何発かの攻撃は、未だ僕を狙ってくる。

 円盤盾(ラウンドシールド)を構える。


 僕の直線的な機動を追いかけ、未来予測位置へと殺到する追いかけ射殺す息吹(スマートブレス)。


「……期待に添えないようで申し訳ないけど、別にこれが最大出力と言った覚えもないな」


 左右へと機体を振って回避運動をする気はない。更に推力を上昇。先ほどよりも巨大な推進炎を噴出。相手の予測位置よりも遙かに高い位置へと上昇。それでもなお執拗な魔獣の殺意が至近距離で弾けた。

 まるで近接信管。僕の纏うザスモーとの再接近距離に近づいた瞬間次々と炸裂する爆炎に僕のザスモーが飲み込まれる。


「問題なし。シールドは正常に作動しているな」

 

 青白い燐光の結界、目視可能なまでの超高密度な魔術障壁(シールド)が、爆炎をかき分けて脱出する。

 このザスモーは高機動力に重装甲を両立させている。

 例え直撃であろうとも、僕のザスモーが展開する桁外れに分厚い魔術障壁(シールド)は相手の攻撃を受け止めきる。ましてや直撃より威力の劣る至近爆発程度で損害を受けるはずがない。

 そのまま僕は空中から獲物を睥睨する猛禽のようにワイバーンを眼下に見下ろした。


「格闘と近接射撃で仕留める……まずは目くらましだ、受け取れ……!!」


 脚部に内臓された増幅装置を展開。

 選択する魔術式は爆炎の蛇(エクスバイパー)にアレンジを加えた、爆炎の多頭蛇(エクスヒュドラ)。

 両足から発射される二発の炎は、ワイバーンの一群目指して飛翔。一定の距離に至ると同時に十何発もの炎弾に分裂し、一斉に襲い掛かる。

 鈍足のワイバーンが、多弾頭ミサイルに匹敵するこれを回避できるわけもない。予想通り命中し――予想通り、魔術障壁(シールド)に防がれてしまう。

 だが、爆炎で注意の逸れた相手と距離を詰めるのは難しくない。

 地表激突のリスクを孕んだ、墜落にも似た|死と隣り合わせの急降下《パワーダイブ》。

 戦闘機にとってパワーダイブはタイミングを間違えれば死ぬリスクを抱えた危険な機動だが……その分、自由落下加速と大推力の相乗効果は、次元の違う超高速を実現する。


「まずはブレーキ代わりに一匹を蹴り殺す!!」


 勢いのついたまま、再び大推力蹴撃(ブーストチャージ)。

 狙いはワイバーンの胴体。まるで流星のような勢いで蹴り足をワイバーンに叩き込み――へし折り、粉砕し、ぶち抜いた。

 圧倒的なパワーが奴の筋肉や胴体を粉砕し、貫通する。

 まるで鮮血の浴槽(ブラッドバス)で水浴びしたかのような血染めのザスモーを操り、腰部に装着されたスラスターを作動。独楽のように180度旋回を行い地上へと背中を向ける。

 再びメインブースター点火。急制動と急加速。そのまま隣にいた仲間が一瞬で血水と化して動揺するワイバーンに襲い掛かる。


「二つ目!!」


 魔術銃(マージライフル)を零距離発砲。

 強烈な焦熱光(スコーチレイ)がワイバーンの龍鱗を魔術障壁(シールド)もろともに貫通し、殺傷する。


 ガアアアアアァァァァ!!


 至近距離でワイバーンが怒りと憎悪の咆哮を上げる。

 三つ目、その始末に取り掛かろうとした瞬間――もう一匹のワイバーンが爪を振り上げ組み付いてくる。咄嗟に円盤盾(シールド)を構えて僕を引き裂こうとする爪牙を食い止めた。

 だがワイバーンの口蓋に輝く炎の光。炎の息吹(ブレス)を組み付いた状態で零距離発射する気だ。僕は笑った。その笑顔の意味が魔獣に理解できるとまでは思っていないが。


「……畜生の分際でなかなか知恵が回るじゃないか。確かに魔術障壁(シールド)はここまで至近距離に踏み込まれると意味を成さない。

 しかし真面目に取っ組み合いに付き合ってやる趣味もないぜ! 見ろ、これが初見(わからん)殺しだ!!」


 サイコスレイブ・オートマティックによる思念操縦に従い、ザスモーの装甲スカートの下に隠された隠し腕(サブアーム)が展開。 

 その先端部に凝縮された高エネルギーの剣であるレイブレードを翻し、ワイバーンの爪を切断――そのまま翼を切って落とし、自由落下での死を与える。

 瞬時に数体を殺傷――だが、ワイバーンはそれでも強烈な戦意と共に追いかけ射殺す息吹(スマートブレス)を発射してくる。

 この執拗さ、攻撃的な性格。古代王国の生物兵器と言うのも納得だ。

 僕は残りの敵を掃討するために、再度魔術銃(マージライフル)を構えた。

縦横無尽(フラーヴィ)号



 この世界で滑走路に該当する湖や海を必要とせずに空中へと飛翔する『垂直離着陸(V-TOL)』機能と、空中にとどまり続けるホバリング機能を搭載した飛行機械。

 形状は涙滴型で、四方に四機の可動式サブエンジンを搭載。これを真下に向けて垂直に飛行する。

 これら四機の可動式サブエンジンを使いこなせば高い機動性能を発揮できるが、現在は主操縦者のギュスターヴが慣れていないことと、中の積荷がひどいことになるという理由で封印されている。

 積載量と機動力を両立させるため、居住性を犠牲にしている。


 船体下部、上部に武装を搭載する設置部分(ハードポイント)を持つが、現在は非武装。



白銀嶺(シルバービュー)


 帝国初代皇帝、デュナンナータ=サンシメオン公から、バルアミー公爵家に下賜された飛翔甲冑(メイル)。

 設計、製作は既に滅亡した古代王国期であり、現在では再現不可能なロストテクノロジーで生産されている。


 熱属性:負方向の魔術、一般的に凍結魔術と呼ばれる系統の使用に高い適性を誇る。

 純白の塗装を施された優美で美しい、戦う美術品とまでと称される連合のフラッグ機。

 堅牢な機体構造に加え、氷結装甲魔術のマナ消費を減らす工夫がなされており、恐ろしく頑丈に出来ている。


 

 基礎性能は優秀だがそれ以上に、搭載された特殊魔術式であり甲冑名でもある結界魔術『白銀嶺(シルバービュー)』の性能が極めて凶悪。

 結界内のすべての熱属性:正、火炎魔術を用いた魔術機関の性能に大幅な阻害を行うというもの。

 大抵の飛翔甲冑(メイル)が熱属性:正の火炎魔術による攻撃、機動を行っているため、敵対する魔女騎士(ヘクセリッター)は攻撃力、機動力を大幅に低下させられた状態で戦う事になるため、相手は極めて不利な状況での戦闘を強制される。


 機動性能は高くないため、守勢に置いて真の能力を発揮する。

 帝国の皇女であるクラウディア=サンシメオンの操る火眼光(フレアレイ)の姉妹機。



EX=超スゴイ。A=かなりスゴイ。B=優秀なレベル。C=平均的。D=悪い。E=最悪。



攻撃能力=A

機動性能=D

防御性能=A+

操縦性=C

魔力効率=B

拡張性=C

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