若隠居と合同合宿(7)
まず薪を一本、三人に迫る親イノシシに投げつけた。
すると首尾よくそれは親イノシシの顔に当たり、親イノシシは、足を止めて不機嫌そうに僕を見た。
「ナイスコントロール!」
思わずガッツポーズが出た。
「こっちだよ」
ヒラヒラと手を振って、三人から離れるような方角へと移動する。
親イノシシは僕に狙いを定めたまま少しずつ向きを変え、そして、突進してきた。
それを寸前でかわして、首に鋭い切断面を見せる枝を振り下ろす。
こっそりとその枝の先に魔術を絡ませて、より鋭利に、より固くすることは忘れない。
親イノシシは僕の横を走り抜け、数メートル先で首から血飛沫をまき散らして倒れた。
もう一頭の親イノシシは、僕を敵と定めたらしい。同じように突進してきた。
「ブフォオオオ!」
鳴いて、飛びかかってくる。
その喉の奥に向かって枝を突き出し、横へ避ける。
親イノシシは口から手首ほどの太さの枝を突き出したまま地面に着地、というより落下し、その場で痙攣しはじめた。
子イノシシはと見ると、オロオロとするかのようにその場をうろついていた。
「向こうの山に帰れ」
言いながら、軽く魔力を子イノシシへと流す。
それで子イノシシは怯え、転がるように茂みの方へと走っていった。たぶん隣の山に帰るんだろう。
「ここに合宿場があって、美味しいものが簡単に手に入ると覚えたのかなあ」
それを見送っていると、慌てふためいて雅彦さんとほかの師範が数名、それと少しのんびりと幹彦やチビたちが走って来た。
「大丈夫かー!?」
僕はそんな雅彦さんたちにニコニコとして片手を上げた。
「あ、二頭仕留めましたよー! 何で食べますー?」
雅彦さんたちは唖然としてイノシシを見下ろし、それから思い出したように生徒三人に目を向けた。
「ケガはないか?」
「はい。あの、えっと」
青い顔でもごもごと言うばかりだ。
その頃追いついてきた幹彦やチビたちは、イノシシのそばにしゃがみ込んでイノシシを突いた。
「うむ。まあまあの脂のノリだな」
「でも史緒。ここ、禁猟区だぜ」
「あ……まあ、正当防衛だよ。うん」
僕はそう言い張って、何の料理に使おうかと思案し始めた。
夕方からキャンプファイヤーだ。
「さあさあ、どんどん食べてね」
大きな鉄板と網では、ウシの魔物肉や焼きそば、野菜を焼いているし、大鍋では豚汁ならぬシシ汁を作っている。
全員に食べさせて共犯にしてしまおうと考えたわけではない。決して。
「魔物でなくとも美味しいぜ」
「うむ。鍋も好きだが、これも悪くないな」
「残りはどうするのー?」
「うん? 明日の朝は味噌焼きで、昼は牛丼みたいな丼にして。残りは少しずつだけど分けるかな」
答えたが、目を輝かせて生徒が訊いた。
「牙とかどうするんですか」
それは考えてなかったなあ。
「どうしよう。素材ってほどでもないし……欲しい人にあげようか」
すると、生徒たちがハイハイと手を上げた。
「欲しい!」
「え、私も!」
「ジャンケンか?」
それに雅彦さんがにやりとした。
「よし。明日の勝ち抜き戦の賞品にしよう。欲しいやつはがんばれ」
うおおお、と雄叫びがあがり、キャンプの夜は更けていった。




