若隠居と合同合宿(6)
本日はキャンプファイヤーだ。それで、合宿場へ戻ると、全員で手分けして準備を行う。
まずは薪拾いだ。数人ごとの班に分かれて、合宿場付近の森に分け入り、拾い集める。
幹彦は雅彦さんたちと、大きなバーベキューコンロを設置したり、炭を運んだりという力仕事だ。僕は生徒三人と一緒に薪拾いに出た。
「なあ。探索者なんだろ、この人も」
こそこそと、中学生、高校生の生徒が言い合っているのが聞こえる。
僕は練習に参加しているわけでもないし、そう話をしたこともないので、どういう人物かわからないのだろう。
「魔術師って言ってただろ。じゃあ、魔術の使えないここなら、俺たちの方が強いのかな」
「薙刀はできるとは言ってたけどな」
「手合わせしてくださいって言ってみるか? 勝てるんじゃねえ?」
探るような目を向けてくる。
どうしようか。聞こえていないふりを続けているべきだろうか。やり合ってみる? ううむ。
お互いに悩んでいると、奇妙な気配を感じた。
「何か、いる?」
思わず呟いて、周囲を見回した。
少し離れて何グループかが同じように薪を拾っているほか、これと言っておかしなところはない。
いや、十メートルほど離れたところにある茂みがガサリと揺れ、そこからひょっこりと動物が顔を覗かせた。イノシシの子供だ。
縞模様こそ消えているが、そこまで大きくはないし、凶悪な感じはなく、どこかかわいい。
などと言っている場合ではない。子供がいるということは、親も一緒にいる可能性が高い。
「ブオッ」
「やっぱり」
後ろから大きな親らしきイノシシが姿を現した。大きなイノシシが二頭と小さなイノシシが三頭だ。
「うわあっ!」
それに生徒三人も気付いて大声を上げた。
「シッ! 興奮させないで」
「うわあ、あっち行け! シッ、シッ!」
聞こえていないらしい。三人はわあわあと大声を上げて、拾った薪を振り回して威嚇する。
「ああ……」
溜め息が出そうだ。イノシシはこちらから何もしなければ襲ってくることも少ないが、子連れの場合は気が荒くなるし、威嚇されればもっと反撃してくる。
案の定、親イノシシは三人に狙いを定めたようで、頭を低くして、鼻息も荒く威嚇するように鋭く鳴いた。
「ああ、あっち行けって!」
中のひとりが持っていた薪を投げ、それが子イノシシと親イノシシの間に落ちた。
「何やってるんだよ!?」
「すっぽ抜けたんだよ! 投げたわけじゃないんだよ!」
仲間に責められ、半泣きでその生徒は答えた。
「誰か先生を!」
ひとりが叫ぶまでもなく、向こうで薪を拾っていた生徒が気づき、師範を呼びに走り出した。
だが、間に合うとは思えない。親イノシシは、怒って三人に向かって突進していった。
魔術を使えば簡単だ。でも、誰かの目があるところで使うわけにはいかない。ダンジョンの外で使えるとなれば、パニックやあらぬ疑いの元になる。
僕はそばの手頃な木の枝を目立たないように風の魔術で切断した。
「横に飛んで!」
イノシシは直進するもので、急に横へ方向転換できない。
三人は横へ飛ぶ──と思いきや、その場から動かない。
「こ、腰が、抜けた……」
今度こそ、溜め息が漏れた。




