若隠居と合同合宿(5)
翌日は、ご飯と味噌汁、だし巻き卵、一夜干しのアジという朝食を摂ると、少々休憩して、全員で山の頂上を目指して歩いた。
これは僕たちも参加で、「正直行きたくない」という女性陣もいたが、ゆっくりでもいいからということで、最後尾を歩いて行くことになった。
僕はチビたちと張り切って歩く。
山は舗装されていない道だが、階段もあるし、そこまで大変ではない。だが、いくらスポーツで鍛えている子供たちでも、山道に慣れていないときついようだ。ふうふうと大きな息をつき、顎を上げて歩いている。
それでも山頂に着くと、ぱっと広がる景色と爽やかな風に気持ちがよく、全員が歓声を上げて周囲を見回し、はしゃぎ始めた。
「ふう。子供は元気だなあ」
師範の方が数人、意地だけで平気な振りをしてここまで登ってきており、早々に座り込む。
この山はそれほど高い山ではなく、周囲にも同じくらいの高さの山がいくつか連なっている。
そのとき、ターン、と音がした。何人かが、銃声であると気付く。
「ああ、隣の山は狩猟できる山だから。間違っても入り込むなよ。間違えて撃たれても知らないからな」
冗談半分、脅し半分に師範のひとりが皆に注意し、生徒達は、怖がったり面白そうだと目を凝らしたりした。
「さあ、昼食にするか。食べたら休憩して山を下りるぞ」
雅彦さんが言って、各々、出発前に配られたお弁当の包みを取り出す。
おにぎらずで、牛肉の細切りを甘辛く炒め煮にしたものとニンジンのナムルとほうれん草のナムルを挟んだものや、ハムとチーズとレタスを挟んだもの、あっさりと鰹節を挟んだもの。それに梅干しとカットフルーツ。飲み物も各々水筒を渡されており、水分を自分で管理しながら飲むようにと言われている。
中にはほとんど飲んでしまって水がもうないという者もいるし、ほとんど飲まずに頂上まで来たという者もいる。
「水分はとるようにしないと、熱中症が怖いんだけどな」
言いながら、僕はチビたちにも幹彦と手分けして昼食を食べさせる。
「うむ、これはいいぞ。鰹節のあっさりもいいし、牛肉のやつも食欲が増す」
「ハムのやつもあっさりとしていて食べやすいでやんす」
「お出かけしてお弁当食べるの、楽しいー」
「そうじゃの。また来たいのう」
ピクニックみたいなものだが、名目上はオリエンテーリング、稽古の一環だ。
「そうだね。こういうのも楽しいし、またやってもいいね」
「そうだな。行くか」
僕たちも景色とお弁当を楽しんだ。
そうして、集合写真を撮って、帰路に就く。
帰りはほぼ下り坂で、また登りのように一列になって、スピードを上げて歩いて行く。
「帰ったら今晩のキャンプファイヤーの準備だからな。全員でやるぞー。転ぶなよー」
師範が言うのに、元気よく「はい!」と返事が返り、息も絶え絶えだった者も元気よく下っていった。
「狩猟かあ。何がいるのかな」
ふと、そう訊いた。
「罠猟がメインとは聞いたことがあるけどな。シカとかかな。麓の店にジビエとして時々出てるらしいよ」
雅彦さんが答える。
「シカかあ。あっさりとしてるし、カロリーも低いし、いいよな」
幹彦が隣の山の方をチラリと見て言う。
「狩猟の許可が出ているところでしか狩猟はできないし、それも狩猟に行く前に許可を取ってからじゃないとダメなんだっけ」
雅彦さんの友人が言うのに、僕たちは途端にガッカリとして、雅彦さんたちに笑われた。
「嫌ってほどいいジビエを食ってるだろうが」
「そうだけどさ、兄貴ぃ」
「まあ、仕方ないね。あきらめよう幹彦」
チビたちもガッカリとする。
「せっかく獲ってきてもいいのかと思ったのにー」
「うむ。人間は法律とかいろいろと面倒だな」
「でも、人間のテレビとかは最高でやんす」
「それはそうじゃの」
それに雅彦さんたちは爆笑し、僕たちは楽しく山を下りていった。




