若隠居と合同合宿(8)
翌朝は、言っていた通りにイノシシの味噌漬けを焼いて出したが、これはおかわりを準備していないと言ったらガッカリされた。
午前中はエキシビションだが、ここで雅彦さんたちから提案があった。僕も出ないかということだ。
「剣同士ばかりじゃなく、薙刀相手の場合というのも勉強になると思うんだよ」
とのことで、幹彦やチビたちからもやってみろと勧められ、挙げ句、「不甲斐ない結果だと、今度薫子に報告しなくてはならんな」とチビにしみじみと言われたので、真剣にならざるを得ない。
練習用の薙刀はここにはないが、麓の食料品店の娘さんが薙刀をしているということで、それを借りることになった。
エキシビションは、2つに分かれた参加者がひとりずつ打ち合い、負けたら反対の列の最後にまわる、というものだ。
僕はまず師範と当たった。リーチもこちらが長いし、これでも日々魔物を相手にしている身だ。そうそう後れをとることもなかった。
しかし、雅彦さんは子供の頃からこうして同じようなことをしてきたし、そういうところは慣れている。そこそこ苦戦させられた。一番苦戦したのは予想通り幹彦で、こちらも予想通り、僕の負けという結果になった。
やっぱり、純粋な武術だと敵わない。
「うむ、まあ、幹彦に敵わないのは当然ともいえるしな。気を落とすな、フミオ」
「そうでやんすね。でも薫子さんが知ったら、次の修行は厳しくなるでやんすね」
「フミオ、ガンバー」
「今から足腰を鍛えるのじゃ」
僕も幹彦も苦笑したが、内心では震える思いだった……。
師範たちも健闘をたたえてくれたし、またやろうと誘ってもらった。
そして生徒たちからは、意外と薙刀って強いんですねとか、薙刀で嫌な相手はなどと訊かれたし、何より、見くびられていた態度が改められた。
今日でおしまいだが、それでも嬉しいものだ。
そして昼ご飯はイノシシ丼だ。甘辛く炊いたイノシシ肉と玉ねぎをたっぷりとご飯にのせ、かきこむ。
数キロ残ったのは全員で均等に分けることにしたので、ウシの魔物肉の残りも分け、全員のお土産になった。
午後の生徒の勝ち抜き戦は、熱の込もった試合が展開され、上位三名と、惜しくも敗れたが内容がよかったという一人を敢闘賞として、牙を一本ずつ与えた。
そのあとはまたバスに分乗して帰り、こうして合同合宿は終了した。
うちの分の肉は雅彦さんにあげようかと思っていたが、一緒に食べようということになって、周川家にお邪魔した。
「チビ、ピーコ、ガン助、じい、よく来たねー」
「もう、もっと顔を出してくれたらいいのに、二人共」
小父さんも小母さんもそう言って歓迎してくれたし、お腹が目立ち始めたお義姉さんも、手土産の肉に目を輝かせながら歓待してくれた。
料理を待つ間、こっそりと幹彦が訊く。
「ところであのイノシシを仕留めた枝。あんなに鋭い断面のやつがたまたま落ちてたってマジか?」
それに僕もこっそりと答える。
「まさか。生木の方が丈夫だと思ったから、その辺の枝をこっそりと風の魔術で斬り落としたんだよ。イノシシを斬るときも刺すときも、バレないようにこっそりと、ね」
「バレてねえみたいでよかったな」
「ほんとだよ」
それで僕と幹彦は肩を竦めて苦笑した。




