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殺戮王は笑って言った、「俺を殺してくれ」と ~自己犠牲の輪舞~  作者: 遊可くるみ
3章

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手札×疑心(1)

 軍舎の一室。ヨハンはワイシャツの袖を捲って、皿の上に乗せたケーキを一口サイズに切り分けて口へ運んだ。ケーキを頬張るヨハンとイライラした表情を浮かべるアルテがテーブル越しに向き合っている。


「アルテも食べてくださいね」


「俺は甘いもんは食わねえ」


 痺れを切らしたアルテがバン――とテーブルを叩いたので、ティーカップに入っていた紅茶が跳ねた。


「お前な! 緊急事態なんだよ! 俺らの隊長が攫われたんだぞ? 呑気にケーキ食ってる場合じゃねえだろ!」


「頭を使うのですから糖分を補給しないと」


「にしても食いすぎだろ!」


 ヨハンの前にはケーキの底に張り付いていた包装紙が何枚も重ねられている。


「では、まずアルテの意見を聞きましょうか(ケーキを食べながら失礼します)」


「……」


「特にありませんか?」


「……」


 ヨハンは紅茶を一口飲んでからペーパーナプキンで口元を拭いた。


「追跡能力を持つと言われるゾロメスタスの戦士・コイチに依頼しましょう。イザナミの異常な執着心でも探し出せると思いますが、間違いなく効率がいいのは前者かと」


「俺の意見聞くまでもねえじゃんか……」


「もう少しだけケーキを食べてもいいですか?」


「好きにしろ。ってよくねえよ! 行くぞ!」


 ヨハンが指笛をすると開けていた窓から一羽の白い鳩が部屋の中に飛んできて、ヨハンが差し出した手に止まった。


「お前の飼い鳥か?」


「これは伝書鳩です」


 白い鳩は数秒後にヨハンの手から飛び立っていった。


「アルテが望むならイザナミでもいいんですよ?」


「アイツだけは御免だ」


「頭がイカれてるからー?」


「そうだ。イザナミと話してると俺まで病気になる」


「病気? なんの?」


 アルテの目の前には自分とは百八十度逆さまの向きのイザナミの顔。


 (……イザナミ???)


 アルテは逆さまの顔につられて顔を傾けた。


 イザナミは天井に足を向けて宙に浮いている。


「っておおおおおおおおおおおおおおおおい! なんでいんだよ!」


「キミに会いたくて☆」


「失せろ。ってかどっから入って来た」


「あそこ」


 イザナミはヨハンが空けた窓を指さした。


「イザナミ! 不法侵入だ! 出てけ!」


 イザナミはアルテの肩に手を置いた。


「触んな!」


「あのさ、早くしてくれる?」


「あ?」


 先程までワイシャツ姿だったヨハンは軍服のジャケットを羽織り、ドアの前に立っている。イザナミもまたいつでも出動できるようフル装備の支度を終えてピースをしている。


「アルテって本当に鈍いね。脳ミソまで筋肉だからかな? じゃ、置いてくね☆」


「まてコラあああああああああああああ」


 イザナミは逃げるように部屋を出ていった。


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