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殺戮王は笑って言った、「俺を殺してくれ」と ~自己犠牲の輪舞~  作者: 遊可くるみ
13章

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輪廻×真実(2)

 アーリィの腕の中でローズは目を覚ました。


「お目覚めですか、お嬢さん」


 ローズは慌ててアーリィと距離を取った。


「ここはどこ?」


 部屋を見渡すとベッドの上でアルマスが寝ている。


「お母様!」


 ローズはベッドに駆け寄ってアルマスの身体を揺すったが、アルマスは目を覚まさない。


「お母様ごめんなさい。私……何回も失敗しちゃった……全然上手くできない……」


「もーやめたら?」


「やめない。私はXを殺して救世主になる」


「救世主になるのはアルマスのためなんだろ?」


 ローズは頷いた。


「それならもうやめたほうがいい」


「どうして?」


「君のためにならないから」


「でもお母様が救世主になってほしいって」


「アルマスは昔からなーんも変わってない。自己中で、思い通りにいかないと機嫌を悪くする」


「お母様のことを悪く言わないで!」


「よーく考えてごらん? 君がイザナミを殺して過去からイザナミが消えたとしよう――」


 ローズは頭の中が真っ白になった。心の中に積みあがっていた希望や期待が「どうして?」という疑問に押し潰されるように、一気に崩れていった。


「そしたら未来で君が消える。アルマスはそれを分かってて、君にやらせてるんだ」


 救世主になって過去を変えれば未来が変わる。そして変えた未来に自分は存在しない。そしてそれは自分の母親が望んだことである。


 ローズはいつかのアフララの「お前のことを置いていった母親は本当にお前のことを思っていると言えるのか?」という言葉を思い出した。


 ローズは首に下げた勾玉の形をした笛を握りしめた。


 母親が自分のことを必要としてくれたと思っていた。世界にたった一人しかいない母親の役に立って褒められたいと、認められたいと、もっともっと必要とされたいと強く願っていた。それがすべてだった。


「アルマスは最初から君のことなんて気にかけてない」


 アーリィは天使の羽が生えた小瓶を傾けてみたり回転させてみたりして眺めている。


「返して」


 アーリィは天使の羽が生えた小瓶のなかに誰かの面影を探していた。


「懐かしい感じがした。共通点もたくさんあった。リボンを上手に結べないとか、俺に異常なほど執着してるとことかねー」


「誰の話?」


「君の母親であり、俺の母親の話」


「?」


「……ダメだ、少し休む」


 アーリィはそのまま横になり、眠りについた。


「……」


 ローズは寝ているアーリィに近付いて、腰に刺さっている短剣を抜いた。


「私、何のために生まれてきたんだろう」


 ローズは泣きながら、短剣の切っ先を自分の心臓に向けた。


「誰にも……望まれてなかったのに……」


 深呼吸をして目を閉じた。手が震えている。


「……?」


 震える手を掴まれてローズは目を開けた。


「何のために神の力を授けたと思っている」


「アフララ様……!」


「命が輝くときだけ神の力を使えと言ったはずだ」


「どうしてここに?」


「お前が余を呼んだからだ」


「え?」


 アフララはローズの胸倉を掴んだ。


「お前が言ったのだろう!」


 ローズは目を丸くした。


「意味のないことなんてないと。お前がこの世に生を受けたことも、お前と余が出会ったことも、お前が神の力を得たことも全て意味がある。そうだろう?」


「……」


「お前が信じたいものを信じて、お前が生きたいように生きろ」


「はい」


「それから絶対に忘れるな」


 アフララはローズを抱き締めた。


「余は何があってもお前の味方でいる」


「…………はい」


 ローズの目から大粒の涙が零れた。


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