表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殺戮王は笑って言った、「俺を殺してくれ」と ~自己犠牲の輪舞~  作者: 遊可くるみ
11章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/33

赤目×告白(3)

 コイチの一撃で大広間の壁は破壊された。壁に空いた大きな穴の向こうにはアルマスとアーリィが居る。


「アルマス!」


 コイチの背後から飛び出したルイーズは一目散にアルマスの元へ向かった。


「待てルイ! 囮かもしれねえだろうが!」


「とーんで火に入る夏の虫♪」


「……!」


 アーリィは印を結んだ。


「六芒星の印」


 ルイーズ、コイチ、イザナミの足元にそれぞれ赤い六芒星が浮かび、六芒星の頂点が繋がって六角形が浮かび上がり、光り出した。イザナミは真っ先に逃れようとしたが、見えない壁に跳ね返されて六角形の外に出ることができない。


「さーてと。まずは宿題を片付けなくちゃね」


 アーリィは先程と違う印を結んで暴風の印(カトリーナ)と呟いた。


 コイチが砕いた壁の欠片が舞うほどの暴風が吹き荒れる。アルマスはその場に立っていられず、地を這いながら、暴風の被害が少なさそうな壁の後ろに避難した。


「アーリィ、何のつもりだ」


 砂埃が目に入るので目を開けていられない。


「見てないでいーの? アルマスが殺されちゃうかもしれないのに」


「アーリィ……君ってやつは、本当に……」


 ルイーズは銃を抜いて発砲したが、六角形のなかでは意味がないようである。


「ああ!」


 イザナミが声を上げた。


「イザナミどうした!」


「ううん、なんでもない。目にゴミが入っただけ」


 イザナミは片目を押さえている。


 暴風が治まった。


「ルイ、お前には残酷な結末が待ってる」


「なんだよ急に」


「お前の愛が偽物だったらいーのにね。それじゃ」


「待て!」


 ルイーズは声を上げたが、アーリィは姿を消した。


「アーリィはどこ」


「分からない。アーリィに何もされてないかい?」


「深い傷を負ったわ」


「傷を見せて」


 アルマスは胸に手をあてて俯いている。


「諦めが悪くて何がいけないのかしら」


「アルマス……?」


「ルイ許して」


 顔を上げたアルマスは号泣していた。


「それでも私、諦められない」


「行くなアルマス! 僕の目が届くところに」


 ルイーズの声は届かず、アルマスは走って行った。


 ルイーズとコイチは何度も何度も拳で見えない壁を突いたが、手を痛めるばかりでヒビすら入らない。イザナミは片目を手で覆ったまま立ち尽くしている。色白の肌は青みがかり、こめかみからは冷や汗が噴き出して顎から滴っている。


「イザナミ?」


「……ルイ、ここから抜け出したい?」


「何か策があるのかい?」


「六芒星の印を解かないと赤目クソ野郎に殺される。六芒星の印を解けば醜くなって焼き尽くされる」


「?」


 イザナミはルイーズを見た。


「ルイ、それでもボクを好きでいてくれる?」


「……」


「そうだ。まずはボクがルイを信じなくちゃ」


「イザナミ……その目……」


「さっきレンズを落としちゃって……。ヘンだよね」


 イザナミの片目が赤色になっている。


「ボクのこと好きでいてね。絶対だよ。約束だよ」


 イザナミは印を結んで目を見開いた。


反故の印(ディセーブル)


 六芒星が強く光り出し、全員の足元から真上に向かって強風が吹き抜けた。


「……」


 風が止んだ。六芒星は消え、見えない壁もなくなっている。


「ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」


 獣が唸るような声がして振り向くと、イザナミの顔や全身に硬く黒い毛が生えていき、背丈は約二メートルになり、筋肉が増幅し、鋭い爪が伸び、頭部には立派な角が生えた。山羊のような姿をした魔獣である。


「!?」


 ルイーズは身を震わせて腰を抜かした。


 変わり果てたイザナミを見て脳裏に甦るのは、激しい雨、悪魔、心臓を貫かれた兄、アルマスの叫び声――、あの日の惨劇。


 イザナミは雄叫びをあげながらコイチに襲い掛かった。イザナミが振り下ろした腕はコイチに命中せずに地面を割った。イザナミの攻撃は素早く、威力も大きい。イザナミは割れた地面の破片を投げてコイチの逃げ道を塞ぎ、行き場を失ったコイチの腹部に一撃を喰らわせた。


「ぐはっ……」


 コイチは吐血して動かなくなった。イザナミがコイチに向かって再び拳を振り上げた時、イザナミの頭に銃弾が当たり、イザナミは後方を向いた。銃弾はイザナミの頭を貫通せず硬い毛に弾かれた。


 ルイーズは震える手で銃を握り、銃口をイザナミに向けている。


「イザナミ……君、君が悪魔なのかい?」


 イザナミは雄叫びをあげて今度はルイーズに襲い掛かった。ルイーズが何発発砲しても硬い毛に弾かれてしまい、ダメージを与えることができない。


 ルイーズは洋館の外へ移動した。イザナミは追いかけて来たが、洋館の外までは追いかけてこない。


「どうして来ない」


 ルイーズは銃のダイヤルを回して再び銃をイザナミに向けた。放たれたワイヤーはイザナミの足首に巻き付いた。ルイーズは歯を食いしばって力いっぱいにワイヤーを手繰っていく。手に巻き付けたワイヤーは食い込み、皮膚を切って血が流れ出している。


イザナミはバランスを崩して転倒した。


「ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」


 ワイヤーに引っ張られて太陽に照らされた足元が燃えている。イザナミは燃える足を日陰へ引っ込めてワイヤーを千切り、洋館の中へ消えていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ