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殺戮王は笑って言った、「俺を殺してくれ」と ~自己犠牲の輪舞~  作者: 遊可くるみ
11章

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赤目×告白(2)

 ローズを抱えたヨハンは逃げ切るのを諦めて足を止めた。


「やーっと止まった」


 アーリィは印を結んで、にやりと笑った。


六芒星の印(ダビデシール)


 ヨハンの足元に六芒星が浮かび、六芒星の頂点を繋ぐように六角形が浮かび上がって光り出した。


「ローズ様!」


 ヨハンは六芒星から飛び出そうとしたが、見えない壁に阻まれた。


 アーリィはローズの背後に立ち、抱きしめるように後ろから腕を回した。


「ローズ様、逃げてください!」


「逃げなくて大丈夫だよ。今のところ殺す予定はないからね」


 アーリィはローズを置いてヨハンのほうへ歩いていく。ヨハンは刀を抜いたが、見えない壁を斬りつけることができない。


 アーリィの両手は見えない壁をすり抜けてヨハンの顔を掴んだ。そのまま親指でヨハンの下瞼を引き下げて目玉をじっと見た。


「はい、はずれー」


 ヨハンが刀でアーリィを斬りつけようとしたので、アーリィは咄嗟に手を引っ込めた。


「何をした」


「なーんにもしてないよ」


 アーリィはローズの手を握った。


「お母さんのところへ行こうね」


「ローズ様! 過去へ戻ってはいけません。絶対に」


 ローズは足を止めて振り返った。


「未来を変える方法はいくらだってあります。明日を、明後日を、十年後を、未来を生きてください。ローズ様の未来は、ローズ様のためにあるんです!」


 アーリィは振り返ってヨハンに手を振った。


「ところでさ、お嬢さんも過去に戻れるの?」


「……」


「何か計画があるんだろ? Xの正体を教えてあげるから、お嬢さんの計画を教えてほしいな」


 ローズは条件を呑んでアーリィに計画を伝えた。


「意味のないことを……」


「意味のないことなんてないんだよ」


「ま、何事も経験だね」


 アーリィとローズはついにヨハンから見えなくなった。


 ヨハンは柄に太陽が彫られている刀を抜いた。ヨハンは目を閉じて刀にオーラを集中させている。刀がオレンジ色に輝き始めた。


「ヨハン」


 ヨハンは名前を呼ばれて目を開けた。


「アルマス様!?」


 どういうわけか目の前にアルマスが居る。


「お願いしたいことがあるの」


「私もアルマス様に言っておきたいことがあります」


「私に? まずヨハンの話を聞くわ」


「私はあなたを許しません」


「……え?」


「ですからアルマス様のお願いも場合によってはお断りさせて頂きます」


「どうしたの? ヨハンらしくないわ。あんなに私にも忠実だったのに」


「Xは殺させない」


 刀は再びオレンジ色のオーラを纏い、輝きを増していく。


「曇天斬り」


 ヨハンは見えない壁に向かって刀を振り下ろした。曇天斬りは人間以外なんでも斬ることができる。今まで何をしても突破することのできなかった見えない壁も見事に斬ることができた。足元の六芒星も消えている。


「その刀なら止められるかもしれないわ……」


 能力を使ったヨハンの容姿はまた幼体化していた。


「ヨハン、もう一度できる?」


「曇天斬りをですか?」


「ええ」


「元の姿に戻れば可能です。ですが私が曇天斬りを発動させる理由を話してもらわないと」


 アルマスは遠くの空を見つめた。雨雲が一部の空を覆っている。


「もうすぐ来るから……」


「来るって、何がですか」


 ヨハンはアルマスの口元に注目した。大きく開いて、すぼまって、一瞬口が閉じてまた開いた。ヨハンはアルマスが言った三文字を頭の中で何度も繰り返した。


「まさか」


 惨劇が繰り返される? 誰かが犠牲になる? だとすれば誰を? 食い止める術は?


「私、戻らないと」


 アルマスは姿を消した。


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