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殺戮王は笑って言った、「俺を殺してくれ」と ~自己犠牲の輪舞~  作者: 遊可くるみ
5章

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祈り×邂逅(4)

 ルイーズ、ヨハン、アルテ、イザナミ、コイチ、コモモは水中にあるコモモの家に集まっていた。イザナミは相変わらずガラスに張り付いて水中生物を眺めている。


「ルイーズさん、アルマスさんが未来でご無事だと分かってよかったですね」


「僕は助けてもらってばかりだ」


「それは、アルマスさんにとってルイーズさんが大切な存在だから」


「いや違う。違うんだ」


「……」


「なあルイーズ隊長」


「?」


「ルイーズ隊長の銃で石になった人間を砕くとどうなるんだ?」


「死ぬよ」


「一部でも?」


「うーん、それは試したことないからなあ。でも頭を砕けば確実に死ぬ」


「だったらさっさとアーリィを石にして砕きゃいいじゃねーかよ」


 ヨハンは小声で「その件についてはこの間話をしたばかりじゃないですか」と言った。


「あ? なんだ?」


 ヨハンはそれ以上何も言わずに、溜息を吐いた。


「その件? 僕も教えてほしいな」


「いえ。大した話ではありませんので」


「あ! 思い出したぞ! お前が探偵気取ってたやつだな!」


「アルテ……あなたという人は本当に……」


 ルイーズはヨハンに銃口を向けた。


「僕に隠し事するの?」


「そんなつもりは」


 ルイーズは銃をホルスターに戻した。


「それなら僕も探偵に依頼しようかな。……追想の旅の謎を」


「追想の旅の謎ですか?」


「追想の旅で過去に戻ったあと、未来が変わるときと変わらないときがあるんだ」


「実体験でそう思ったということですか?」


「うん。僕が深手を負ったときとか、やり直したいときにアルマスに頼んで何度か過去に連れて行ってもらったんだ。過去の自分と鉢合わせないようにして僕を助けるんだけど、うまくいったと思って現在に戻ってきても、結果が変っていないときがある。それと、僕にピンチが訪れると未来のアルマスが僕の前に現れて助けてくれるんだけど、毎回ってワケじゃない。何か制限があるのか、条件が揃わないと発動できないのか……」


「何をトリガーにして過去へ戻っているのか、未来を変えるための条件は何かということですね」


「ルイーズ隊長が大蛇に襲われたときもアルマス様が助けてくれたのか! すげえな!」


「あれは僕を助けに来たんじゃない」


 ルイーズの声のトーンが下がったので、全員が気を遣うように沈黙した。


「アルマスは僕を助けた後でわざとアーリィに捕まったんだ。僕を助けるために来たなら僕を助けてさっさと現在に戻るはずだろ? だから、あの時も、アルマスは僕以外の誰かに用があったんだ」


 ヨハンは腕を組んで、自分の指先をトントン動かし始めた。


「それならアルマス様は誰の過去を変えるために戻ったんでしょう。違和感がありませんか? わざわざ電撃を浴びて姿を消したんですよね?」


 ヨハンの指先がピタリと動きを止めた。


「アルマス様の目的が過去を変えることじゃないとしたら……。未来を変えるための手段として過去へ戻っているんじゃないですか」


「ん? それ同じことじゃねーのか? 過去が変われば未来も変わるだろ」


「過去を変えた結果未来が変わるのと、未来を変えるために過去に戻るのは、同じようで違います」


「いやいや、お前今、同じこと二回言わなかったか?」


「アルマス様の能力が追想の旅だけとは限らないと言っているんです」


「やっぱりそうか……。前にアーリィも同じようなことを言っていたよ。過去を覗く能力と過去を変える能力があるんじゃないかって」


「追想の旅が過去を見る能力なら、未来を見る能力を持っている可能性だってあります。あくまで私の想像ですが、覗き見た未来が自分の望まないものだった時に過去を変えに戻っているとか……」


「アルマスさんが過去を変えたことで未来が変わるのではなく、未来を変えるために過去へ戻っているということなのでしょうか」


「やっぱり僕じゃないんだ。僕を助けに来たわけじゃなかったんだ。アルマスはいつもアーリィのことばかり気にかけてた……」


 ルイーズは部屋を出て行った。


「ルイーズさん」


 後を追いかけようとしたコモモの腕を掴んでコイチが引き留めた。


「放っとけ」


「でも私なら」


「伝説の医療班隊長なんて言われて過信しちまったんじゃねえだろうな」


「そんなことありません! 私はただ、ルイーズさんを助けてあげたくて」


 ヨハンもアルテもコイチに圧倒されてコモモを擁護できずにいた。


「くだらねぇ」


「なにがくだらないのですか」


 コモモはコイチの手を振り払った。


「助けてあげるだぁ? 笑わせんじゃねえ。誰が偉そうに言ってんだ」


 コモモは顔を歪めて、悔しさを堪えるように拳を握りしめている。


「誰かのためなんてどれも嘘っぱちだ。ワシらは誰も救えねぇんだよ」


 パシン――と頬を叩く音が響いた。コモモがコイチの頬を引っ叩いたのだ。


「ルイーズさんに好かれたいとか、ルイーズさんを助けて他の誰かの気を引きたいとか、自分に良い事がありますようにとか、そんなこと思ってません。それでも助けたいと思う私が間違っているというんですか」


「誰かを助けたがる奴ぁ、自分が救われてぇのさ」


「私は救われたいなんて思っていません」


「ワシが見てきた限り、お前はずっと苦しそうだろうが」


「私……救われたいなんて……思ってないです」


「最後の忠告だ、これ以上他人の人生に干渉するな」


「干渉なんてしてないじゃないですか」


「中途半端な関わり方しかできねえのに、飾った台詞ばっかり並べて、誰かを救った気になってんじゃねえっつってんだよ!」


 コモモは震える手でコイチの襟元を掴んだ。


 コモモの手は怒りに満ちているというより、コイチだけは自分の理解者であってほしいという思いを押し付けるように襟元を掴んでいるように見える。


「あなたになにが分かると言うんです。私の気持ちなんて、なにも、なにも……知らないくせに」


 コモモはコイチの襟元を掴んだまま項垂れるように泣き崩れた。


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