祈り×邂逅(3)
アーリィが統率するヴィダートは薄暗い洞窟に仮宿を移し、半年振りに全員が顔を合わせた。ヴィダートはアーリィを含めて六人いる。
「シヴァ、結局あんたヒョロチビにやられっぱなしじゃん」
ドルジャスは鎌の刃に映った自分の顔を見ながら前髪を整えている。
「シヴァも本気を出してないんですよねぇ」
アコマノはそう言いながら、イザナミと手合わせしたときのことを思い出していた。
イザナミはアコマノが踊る火柱を発動させた時もマグマが噴出するパターンを読み解き、マグマ柱の間を上手に縫って避けるだけでなく、死角から鉄球による攻撃を仕掛けてきていた。イザナミが遠くにいるほど戦況が不利になるので肉弾戦に持ち込んだが、華奢な身体であることを甘く見過ぎたと後悔するほど、鬼の両腕を持ってしても仕留めることができなかった。
「シヴァ、彼を相手にするなら単独行動じゃなくチームでやりませんか」
「世話焼き、飽き飽き」
「彼を舐めてかかると、今度こそ痛い目に遭いますよ」
「指図不要、心配無用」
「シヴァじーさんだからマジ頑固だし、言うだけ無駄じゃん?」
「シヴァ、おじいさんナノ?」
「そーそー、マジウケるよね。前回ゾロメスタスとやり合ったとき、敵の能力者に子どもにされちゃったの」
「若返りの能力を使う……ロクシイとか言いましたか。今回はまだ姿を見ていませんね」
「シヴァがボッコボコにしたから最前線は無理じゃん?」
「ああ、そうでしたね」
「おこちゃまのほうが可愛くていいじゃん。ねー? シヴァ」
「黙れ、馬鹿垂れ」
「ごめんなさーい」
「となると残るゾロメスタスは……」
「チョットチョット待ってヨ! 獲物早いもん勝ちナノ? 可愛いコ譲らない」
ロリィタドレスを着たデナーリリアの両目にはボタンが縫い付けられている。
「リリアは敵の見た目でモチベ変わるからね~」
「女性が一人いたと思いますよ。コモモとかいう名前の」
「キャー♪ 女のコ大好きネ! 両目にボタン、身体にファスナー、心臓に生け花、リリアの思い通りデショ♪」
「リリアさあ、素顔可愛いんだからいーかげん仮面外したら?」
「リリア自分の顔キライ。呪われた顔」
「えー? 可愛いじゃん。あたしのすっぴん見たらビビるよ?」
「この顔がスキ、自分スキになれる」
「絶対素顔のがいいと思うけど」
「これアーリィ様にもらたネ」
「マジ!? アーリィ様からプレゼントされたの!? あたしなんももらったことないのに!」
「リリアの宝物」
「超嫉妬なんだけど!!!!!!」
「んアアアアアアアアアアアアアアーーーーーー!」
薄汚れた白衣を着て背を向けていたモスモスが突如奇声を上げた。
モスモスは瓶底眼鏡をかけて棒アイスを咥えながら発狂している。
「ボクも……ボクも美人なヒトの内臓食べたいよオオオオオオオオオオオ」
「マジきっしょ黙れ」
ドルジャスは鎌の刃をモスモスに向けた。
「なーに、騒いでるの?」
アーリィが現れた途端に仮宿内は静まり返った。
ドルジャスは鎌を背中に戻して、アーリィを見るなり頬を赤らめた。
「ルイだけは生かしておいてね。あいつは俺の大事な――」
「生贄っしょ?」
アーリィはニコッと笑っただけで何も言わない。
「え? 何? やば(マジクソかっこいいいいいいい)」
「あの、アーリィ様……」
アコマノが神妙な面持ちで話を切り出した。
「マテイユ帝国に悪魔が潜んでいるという噂を耳にしたのですが」
「正確には"悪魔の遣い"ね。どーこに紛れてるんだか。あの日からずーっと探してるのに手掛かりもない」
「ということは、アーリィ様に力をお与えになった悪魔と関係しているのですね」
「うん」
「悪魔遣いの特徴さえ分かれば私たちも探します。ヴィダートにも悪魔の力を授けていただけるかもしれませんので」
「目が赤い――。悪魔も、悪魔の遣いも、目が赤いんだ。俺も」
「赤目……。あの磁力を使う華奢な男は赤目ではありませんでしたか?」
「あのヒョロチビは紫じゃん。超綺麗な紫色だったから覚えてる」
「でも異様な感じがするんですよねぇ。鬼の手があの男を拒絶しているんです」
ドルジャスは目を輝かせてアーリィに擦り寄った。
「それよりアーリィ様、リリアに仮面プレゼントしたって聞いたんだけど~」
「うん。あげた」
「アタシもなにか欲しい」
「ダメ」
「えー? なんでー?」
「なんでも」
「アーリィ様のケチ!」
「君はモノで救われないから、モノで満たそうとするんだ」
「みーたーさーれーたーいー!」
アーリィはドルジャスの額にキスをした。




