命のメール
2人は軽くお風呂をいただいて、早めに寝入った。
次の朝
朝は早くゴンゾが、仕事に出る前に目が覚めたので、奥さんの朝食の準備を手伝った。
ちゃぶ台には、白飯、具だくさんのお味噌汁、ほうれん草と揚げたちくわの和え物、浅漬けが並んだ。
小田「うわーい、なんだか朝から豪華な食事、いただきます。」
鈴竹「コラ、しっかり手を合わせて、言わんか!」
ゴンゾ「昨日の裕子ちゃんも、えらい喜んでくれて、女房も上機嫌やったわい。」
小田「箸が止まんないよ。」
鈴竹「本当に美味しいですね。」
ゴンゾ「そうかそうか。」
そう言って、笑っていた。
2人は朝食をあっという間に平らげた。
朝食を食べ終わり、食器を積み上げた。
その時だった。
食器が崩れ落ちる。
ちゃぶ台が、縦に振るえだす。
地面から大きな轟音が聞こえる。
タンスの引き出しが、吹き飛んでくる。
台所では、調味料や食材が床に転がり暴れまわる。
立ち上がろうとするが、全くできない。
小田「何?何これ?」
予告なく来る地震は、何が起きているのか、数分考えないと分からないものである。
鈴竹「地震だ!とりあえず、外に出るぞ。」
たまらず、転がって居間から縁側を通って庭に出た。
庭に出たとたん竹で作られた塀が、倒れて来た。
小田、鈴竹「キャー」
体の上に塀がのしかかって来る。
竹で作られた塀、軽いものである。
瓦2~3枚が鈴竹たちの上に落ちてきたが、思わず塀が盾になった。
目をつぶり、歯をくいしばりながら、そのまま耐え続けた。
何分この状態に耐え続けただろうか、やがて揺れが落ち着き収まってきた。
辺りが、静まり返る。
鈴竹「・・・」
小田「・・・」
2人は放心状態になっていた。
瞬きをして息を整えて、周りを注意深く観察する。
竹の塀の下からゆっくり、外に出る。
ゴンゾの家は、瓦が所々落ちたが、建物に異常は、無い様だった。
それでも柱や梁は、パキパキと音を立てて、きしんでいた。
鈴竹に習って、ゴンゾも庭に出ていた。
鈴竹「大丈夫ですか。」
ゴンゾ「おっ、おう。」
周りを見ると奥さんがいない。ゴンゾは、家の中に飛び込んで行った。
ゴンゾ「おい、大丈夫か。」
ゴンゾは奥さんに駆け寄る。
奥さんは、足を押さえてうずくまっていた。
足元には飛んできた、タンスの引き出しが散乱していた。
鈴竹「飛んできた引き出しが、足に直撃したか。」
そうつぶやく
「冷凍庫失礼しますね。」
ゴンゾは、流し台にあった桶と手拭いを手に取ると、冷蔵庫前の鈴竹に差し出し、「よし、氷を入れてくれ。」と言う。
鈴竹は、ありったけの氷を桶の中に入れた。
ゴンゾは氷が入った桶に水を入れて、奥さんの元へ持って行った。
そして手拭いを充分冷やして、奥さんの足の患部に当てた。
ゴンゾ「立てるか?」
奥さんは、言葉も出せず目をつむって、首を横に降った。
冷やした手拭いを足の患部に結びつけると、奥さんを強引におんぶした。
ゴンゾ「病院に行くぞ」
奥さん「やだ、もう大げさなんだから。といあえず明日も痛かったら、病院にいきましょ。」
痛みに耐えて、脂汗を流した顔でそう言っても説得力が無い。
ゴンゾ「いやダメや。明日まで痛み我慢せんで、今すぐ行くぞ。」
ゴンゾ「それにな、今ここでグズグズしてたら、このまま被災するかもしれん。今のうちに町まで出といたほうが良くないか?」
奥さんは、ゴンゾの背中でコクリとうなずいた。
ゴンゾは奥さんを車の助手席に乗せて、ガスの元栓、ブレーカを確認、火元を充分見回った後、戸締りを始めた。
鈴竹と小田も雨戸の戸締りを手伝った。
ゴンゾは、軽トラックに乗り鈴竹達にあいさつをする。
ゴンゾ「何かすまんな。こんな分かれに、なってしもうて。」
鈴竹「いえいえ、ここまで良くしてもらって、ありがとうございました。奥さんもお大事に」
小田「お大事に!」
ゴンゾは、手を振ってゆっくり車を発車させ、山を下りて行った。
小田「今から、裕子ちゃん捜索ですね。」
鈴竹「そうだな。謎の戦車のクローラの跡を追うか。」
セダンに乗り込もうとした、その時だった。
”ボーン”
山の頂上から、爆発音が聞こえてきた。
鈴竹「今のは何だ?」
小田「あれ見てください!」
小田が指さした先には、山の頂上から煙が上がっていた。
鈴竹「なんて事だ。」
改めてセダンに乗り込もうとしたところ、どこかで見たオフロード車が走って来て、鈴竹のセダンの後ろに停車した。
尾高「おはよう!」
鈴竹「尾高さん」
小田「おはようございます。」
尾高「戦車追うんだろ。一緒に行こうか。」
鈴竹「はい。どこまでも付いて行きます。」
小田「式場の予約は、終わってからにしてくださいね。」
助手席に鈴竹、後部座席に小田が乗り込んだ。
林道に入るとクローラーの跡は、すぐに見つかった。
しかも新しい。
谷底から、林道まで登り頂上村の方へ行ったらしい。
尾高は車を降りて、クローラーの跡を見つめていた。
ため息を1つ
尾高「来るのが1日おそかったか。」
鈴竹「古賀の通報をまともに信じていれば、把握も早かったのですが。でもAI積んだ戦車が、勝手に動いてるとか信じる方が難しいですよ。」
尾高「いやそうじゃないんだ。あの戦車のAIシステムは、俺の親父が作った物なんだよ。」
「俺の親父は、祖父の日記を見て超ド級戦車を興味本位で掘り出し、人命救助ロボットに改造したんだ。」
「それもAIの元になったプログラムが、株や為替取引なんかを勝手にしてくれるAI作ってたら、出来がすこぶる良くてそれを戦車の頭脳にしたらしい。それで人命救助戦車と言って完成させて放置すれば、この有様だ目も当てられない。」
鈴竹「何が鍵となって、突然動き出したんですか?」
尾高「災害の前兆が見えれば、動き出すようになっているんです。」
鈴竹「それでは、尾高さんが知る由もないでは、ありませんか。尾高さんは東京におられるんですから、神様でも管理できませんよ。」
尾高「そうですね。とりあえず我々は、これ以上動けなくなりましたよ。」
小田「どうしてですか?てっきり、クローラーの跡を追うんだと思っていました。」
鈴竹「災害が起きてしまったんです。我々が車で跡を追ったら我々の方が危なくなるでしょ。」
小田「なるほど!」
尾高「この谷の下に戦車の基地があるんです。案内しますので見て回りましょう。」
鈴竹「はい。」
それからAI戦車の基地を見て回り、何時間かを過ごす事となった。
基地内には、戦車につないでいた機器や資料、当時の中型戦車が数台置かれていた。
鈴竹には、そこら辺のテーマパークより、よほど楽しい時間を過ごせた。
隣には尾高3佐
小田が邪魔だが、デートしている気分だった。
やがて基地内に見る物も無くなり、谷の斜面を徒歩で登っていた。
わざとらしく足を取られる鈴竹
その手を取る尾高
小田「あーあ面白くも何ともない。私ただの邪魔者じゃない。」
尾高「ん!エンジン音が来るぞ。」
鈴竹「例の戦車ですか?」
尾高「戦車にしては、軽い音だな。」
3人は急いで斜面を駆け上った。
消防車だった。
ポンプ車が2台
その1台は、真ん中が大きくへこんでいる。
先頭の消防車に乗った女と鈴竹の目が合う。
消防車は、少し通り過ぎたところで停車した。
女が消防車から降りてくる。
裕子「鈴竹3尉!」
裕子は鈴竹達によろけながら、歩み寄った。
裕子「えーっと」
鈴竹「戦車が動いていただろう。戦車はどうした。」
裕子「・・・谷底に落ちて爆発しました。」
鈴竹「そうか、詳しくは帰って聞く。」
裕子の周りに、ひろき君とひなみちゃん、てっぺいが集まってきた。
鈴竹「その子たちは・・・」
鈴竹は、言葉を飲み込んで考え深くうなずいた。
鈴竹「仕事はしっかりしてきたみたいだな。」
裕子「はい、ただいま頂上村より戻りました。」
鈴竹「とにかく、ふもとの村まで戻るか。」
ひろき「裕子姉ちゃんこの人は?」
裕子「私の上司よ。さあふもと村まで戻りましょ。」
その場にいた全員は、車に乗ってふもと村まで戻っていった。
ふもと村まで戻った裕子は、自分の車にガソリンを入れて、後部座席を見た。
スマホにメールが来ていた。
差出人は、”オニ”
件名には、”吾輩のともだち”とあった。
裕子とひろき君が円陣を組んで拳を高らかに突きあげた写真が、添付してあった。
さらに、リンク先が貼り付けてあった。
リンク先をさっそく踏んでみる。
暴力親父が、ひろき君に暴力を振るっているダイジェスト版の動画だった。
裕子「これで暴力親父から、ひろき君を守れる。」
これを児童相談所に提出すればいい。




