暴力の価値は
警察署を出ると、尾高は鈴竹を呼び止めた。
尾高「あの、これ受け取ってもらえますか。」
差し出したのは、連絡先を書いたメモ
鈴竹もメモを差し出す。
考えてた事は同じだった。
鈴竹「あのいっその事」と言って、自分のスマホを取り出す。
尾高「そうですね。直接交換した方がいいですよね。」
お互いに頬を赤らめて、連絡先を交換した。
小田「けっ!イチャイチャしちゃって。」
スマホをしまうと尾高3佐は、オフロード車に乗りこむ。
デレデレ顔で、歩き方がスキップしているようだった。
尾高「それでは、また。」と言って、さっさと行ってしまった。
小田「浮かれて、事故らなきゃいいんだけど。」
鈴竹は、メモを握りしめて晴れやかな顔で、尾高に敬礼をして見送った。
鈴竹と小田も、セダンに乗り込む。
鈴竹はハンドルを握り、小田が助手席に乗り込んだ。
小田「ところで今から、どうするんですか?」
鈴竹「さらに情報集めだ。村に戻るぞ。」
小田「私たちだけで動いてもいいんですか?幕僚の人が動いてるんですよ。」
鈴竹「構わんだろう。国家機密が動いてる分けじゃないんだ。古賀だけにこの件を押し付けて、帰るわけにもいかんからな。私にも古賀の管理責任ていうものがあるんだ。」
小田「そうですね。それに、買ってきたガソリンも渡してなかったですね。」
車は町を抜け山道に入った。
特に共通点もない2人なので、しばらく無言の時間が流れた。
木漏れ日が二人を歓迎し、川のせせらぎが心地よいBGMになる。
鈴竹は何か考え事をしていた。
独り言をポツリとつぶやく。
鈴竹「おだ・・・素敵♡」
小田「気持ち悪るー!。私にそんな趣味無いですよ。」
鈴竹「何が悲しくて、あんたの事を『素敵』とか言わなきゃならんのだ。尾高3佐の事、考えてたら心の声が漏れただけだろう。」
小田「じゃあ『おだか』って、活舌良く言ってください。中途半端に言うと私が、被害被るんです。」
鈴竹「ひらがなで書けば一文字多いだけだし、紛らわしいから今すぐあんた誰かと結婚して、苗字変えなさい。」
小田「カッチ―ン、鈴竹3尉こそ今すぐ結婚すれば良いじゃないですか。相思相愛だったし。行かず後家とか言われちゃいますよ。」
鈴竹「やだー、私たちそんなにお似合い?みんなの前で相思相愛だったなんて、もう恥ずかしい。」
ハンドルから手を離して下を向き赤らめた頬を両手で押さえた。
小田「キャー鈴竹3尉何やってるんですか。ハンドルから手を離さないでください。」
思わず横から手を出してハンドルを押さえる。
鈴竹「お似合いって、誰がどう見てもそう思うよね。」
そう言いながら、小田の背中をバシバシ叩く
そのショックで、ハンドルがふらつく。
小田「わっわっわっ、やめてください。」
プップー
後続車の軽トラックから、クラクションを鳴らされてしまった。
銀平「前の車、ふざけるのもいい加減にしろや。フラフラしよって!」
隣には、奥さんが座っていた。
奥さん「ねえ、ひろき君を家で引き取れない?」
銀平「あの子は、もう限界かもしれん。児童相談所の職員が今夜伺うとか言ってたが、一緒にいたら手遅れになるかもしれん、今から行って強引に、あの子を家に引き取るぞ。誘拐する気でな。」
奥さん「そうね。行ってみましょ。」
銀平「明日も朝から児童相談所に虐待の通報しまくってやる。」
そして、ひろき君の家に到着した。
到着はしたものの、ひろき君は居ないのが一目で分かった。
なにせオニ車と裕子が突入した後だったので、家がメチャクチャになっていた。
あまりの光景を前に、銀平は車から降りた。
銀平「何だこりゃ」
暴力親父「戦車と女が家を壊しやがった。あのクソ女徹底的にぶっ潰してやるからな。」
銀平「お前の場合は、自業自得なんだよ。」
暴力親父「んだとー!」
銀平の胸倉をつかもうとしたが、手を振り払われてしまった。
振り払われた拳を握りしめ、振り降ろした。
しかし軽く避けると、前につんのめって、コケそうになったので、軽く背中を押したら顔面から地面に着地した。
鼻を押さえ、うめき声を上げて地面に転がった。
鼻血まみれの顔を上げて、暴力親父が言う。「今俺に暴力ふるったな。」
銀平「お前が、パンチ打ってきたのが先だろう。」
「お前は、弱いものにしか暴力振るってこなかったから、自分が強いと勘違いしてる。」
「心の中がガキのままで、その年まで成長してないし、喧嘩のやり方も分かってない。」
「暴力ってのは、人を守るために振るうものなんだよ。」
「お前が振るった暴力の価値は後から、お前の生活や気力も全部蝕んでゆくもんなんだ。」
「勘違いしてるあんたの思い上がりが周りの人達から、徹底的に嫌われ孤独になる。」
「孤独なまま誰にも相手にされず、年老いてゆくだけ」
「そして誰にも見とれらえずに最後を向かえる事になるんだ。」
「今のお前には、実感は湧かないだろう。今は孤独じゃないからな。」
「しかし必ず実感する時が来るよ。必ずな」
暴力親父「うるさい。帰れこの野郎!」
銀平「ああ、ひろきも居ない事だし帰るわ。」
そう言って軽トラックに乗り込んだ。
暴力親父は、なおも地面に転がったまま奇声を上げていた。
何か文句を言っている様だが、活舌が悪すぎて聞き取れなかった。
銀平は窓を開けて、唾を履くと車を走らせる。
奥さん「唾履くのよしなさいよ。みっともない。」
銀平「仕方がないだろ、あんなのと口を聞いちまったんだ。唾ぐらい履きたくなるわ。」
「ところで、ひろきは俺ん家かな。」
奥さん「そうね。てっぺいには、ひろき君に付いて居てあげてって、言ってあるから心配ないでしょ。」
銀平夫婦は、家に帰っていった。
家に帰ると、ひなみと鉄平から、ひろきの事、裕子の事、オニAI戦車の事を聞いた。
銀平「でかした!あの親父とひろきを引き離せたか。よし、籠城できるように食料持って行ってやろう。」
銀平は、近くにあった手提げ袋を手に取り、食べ物と水を入れて、車に飛び乗った。
そして、オニ車の基地の真上から、手提げ袋を放り投げた。
ドサッ
裕子「うっ!?」
ひろき「警官?」
裕子「かもね。ちょっと様子見てくる。」
懐中電灯を持って、2人で外の様子を見に行く。
それは、ひなみちゃんの手提げ袋だった。
一方、鈴竹と小田は、ゴンゾさんの家にいた。
夕方ごろに、お邪魔したのだが奥さんの話が長い。
話を聞いているだけで、暗くなりそのままお泊りとなってしまう。
夕食頃になると、晩酌が始まった。
会話の内容と言えば、オニ車の話で持ちきり
お酒を飲んでも鈴竹のキリリとした顔と、固い話し方は、変わらなかった。
鈴竹「恐れ入ります。裕子ならびに、我々までもお世話になりまして、後から裕子もそろってお礼に伺います。」
ゴンゾ「まあ、硬いこと考えんなや。気楽にいこうや。」
プルルル
鈴竹のスマホが鳴った。
鈴竹「失礼します。」ポケットからスマホを取り出し画面を見ると尾高からの電話だった。
目を輝かせながら電話に出る。
鈴竹「はーい。鈴竹でーすぅ♡。」
小田「え!・・・」
ゴンゾ「今までの、話し方とぜんぜん違うやんかい。」
もう目に余るイチャイチャぶりで、溶けてしまいそうなデレ顔
小田「もうイチャイチャ!見せつけちゃって、なんだかムカついてきた。」
そう言って日本酒をあおる。
鈴竹「尾高さんこそ素敵ですぅー♡。ヤダー、モー」
ゴンゾ「何か、あそこだけ温度高けえな。」
夜は、更けていった。




