天は自ら助くる者を助く
オニ車は、頂上の村へ到着した。
裕子は、コマンダーキューポラに登り、辺りを見渡していた。
しばらく走ると、ひろき君とひなみちゃん、てっぺいの3人が家から出て来たところだった。
裕子「あっ!おーい。」
3人を見つけると、大声で呼びかけ、大きく手を振った。
ひろき「姉ちゃん」手を振り返す。
裕子「みんな早く乗って、この村すごく危ない事になってるよ。」
オニ車は、3人の手前で停止した。
てっぺい「はよ乗るぞ。」
ひなみ「うん」
3人はオニ車に乗り込んだ。
コマンダーキューポラから降り、ひなみちゃんを抱きしめ、ひろき君とてっぺいの手を取って喜んだ。
裕子「よかった。3人とも無事で」
3人は安堵の笑みを見せてくれた。
裕子「ところで、銀平さんたちは?」
ひろき「おっちゃんなら、家の前に車止めて、納屋に行ってもうた。おじいちゃんと、おばあちゃんを呼びに行ったんや。」
裕子「なんだかややこしい事に、なってるね。」
てっぺい「そうや。じいちゃんが、いろいろ考えすぎて荷車出してくるとか言って納屋行くし、『家で待っとれ』って言われて待ってたら、岩が突っ込んで来るしで、村から出ようと思ったら、人倒れとるし、家の中に運んで正野のばあさん待ってたら、怒られるし疲れたわ。」
裕子「まだこの家の中に人がいるの?」
ひろき「うん。だけど、今泣いてた。しばらく そっとしといた方がいいよ。」
裕子「そうかー。とりあえず、みんなが合流してから、そのおばあさんを連れ出した方がよさそうね。」
(`・ω・´)「では、てっぺい殿の家にいけばいいでありますな。この道を真っすぐでよろしいですかな。」
てっぺい「おう。真っすぐ行ってくれや。」
走り出すと束の間だった。
この場から、1分もかからない。すぐに到着した。
到着すると、銀平の軽トラックの荷台に家財道具を投げ込んでいた。
てっぺい「まだやってるんかい。はよう逃げな。」
裕子「ここで待ってて、誰も出ちゃだめよ。」
そう言い残すと、外に出て行った。
裕子「ねえ、何やってんの?あれ見なさいよ。」
噴火口手前のネズミ色の山を指さす。
裕子「あれ、火山灰の山なのあれ崩れたら、この村飲み込まれちゃうんだよ。」
おじいちゃん「もうちょっと。あとこんだけや。」
銀平「親父すまん。」
そう言って、おじいちゃんのベルトと首根っこをつかんだ。
おじいちゃん「うわ、何すんだコラ。すまんじゃないわ。放せや。」
荷物から引きはがしオニ車の所まで、引きずっていった。
銀平「金目の物だけ乗せたから、これで充分や。早う降りるぞ」
軽トラックの所まで行くと、乱暴にドアを閉めて、とっとと車を走らせて行ってしまった。
銀平も実は怖いのだ。
軽トラックを見送ると、おじいちゃんもおばあちゃんもオニ車に乗り込んだ。
裕子「はぁー」
やっと、そろった事に安堵して、ため息が出た。
いや、まだだ
正野のおばあさんが残ってる。
裕子は、オニ車の中に入り、コマンダーキューポラに上って、顔を出した。
裕子「さっきの家の前まで行って。」
(`・ω・´)ゞ「ラジャーであります。」
オニ車は、バックで進みだした。
進んでいる途中、周りの建物がすごい勢いで揺れ出した。
塀や壁が倒壊しだした。地震だ。
子供達は、椅子にしがみ付く
裕子「わあああ。こわい。」
コマンダーキューポラにしがみ付く
(`・ω・´)「吾輩の中なら何の問題もないであります。」
地震の間も進み続け、到着した。
やがて、地震が収まりだす。
コマンダーキューポラから出ると、火山灰の山が崩れこちらに、なだれ込んで来ているのを目にした。
裕子「オニあれ見える?」
(`・ω・´)「見えてるであります。」
オニ車から降りる。
ボーン
爆発音が聞こえてきた。
火山が爆発した。
噴火口の方から轟音や振動が響く
噴煙が立ち上がり、火砕流もこちらに向けて、なだれ込んできた。
急いでおばあさんを連れてゆかなければ。
振動で揺れる中、階段を登りおばあさんの元へ行った。
息絶えた旦那さんの横に座ったまま動こうとはしない。
裕子もおばあさんの横に座り、語りかける。
裕子「もう行きましょう。」
おばあさん「もう、いいんだよ。行ってちょうだい。私はこのおじいさんの後を追うよ。」
裕子「そんな事言っても、ほっとけないよ。」
(`・ω・´)「軍曹殿!もう限界であります。今すぐにそのおばあさんを抱えて2階から飛び降りるであります。」
その言葉に裕子は、おばあさんを強引に抱えようと肩に手を掛けた。
おばあさんは、肩に伸びた手を振りほどき、立ち上がって裕子を突き飛ばした。
おばあさんの剣幕は凄まじかった。「もう放っておいて!逃げなと言ったらさっさと逃げな!」
おばあさんは涙を流しながら言う。「私はここ以外の場所を知らないんよ。おじいさんが居ないこの世になんか未練もないんよ。いいから、行ってください。私をこの場から離さないで!」
裕子「うわ~ん」その言葉に裕子は、泣き出してしまった。
裕子「だって、ここに居たら死んじゃうんだよ。ダメだよ。」
おばあさん「いいんだよ。早く行って。」
山の方から轟音や振動がものすごい高速で近づいて来ている。
裕子は涙を袖で拭い、おばあさんに深々とお辞儀をした。
おばあさんは、裕子にペコリっと軽くお辞儀をして、おじいさんの亡骸に抱き着き最後の言葉を語り掛けた。
裕子は、オニがいる方向に向き直り、勢いよく走りだした。
ガラス窓を蹴破り、そのままオニ車の回転砲塔に飛び移りコマンダーキューポラのハッチから指令席に座った。
オニはすぐにハッチを閉めてロックをかけた。
そのタッチの差、轟音と共に車内に強烈な激突音が何百回と鳴り響く。
オニ車はモーター音を鳴り響かせ、バックで進みだした。
周りの建物が一気に火に包まれ崩れ落ちて行く。
おばあさんが居たその建物も
コマンダーキューポラの覗き穴から、おばあさんを思い、裕子は指令席に座ったまま、また泣き出してしまった。「うわ~ん」
助けることが出来なくて、くやしかった。
オニは裕子に優しく語り掛ける。
(`・ω・´)「天は自ら助くる者を助く」
「イギリスの作家が、聖書を引用した言葉であります。」
「おばあさんは、お爺さんとこの場に留まる事を1つの助けとしたでありますな。」
裕子「うん」
建物の残骸が火に包まれだした。
(`・ω・´)「みんな吾輩の内壁を触ると火傷するであります。」
ひろき君「何かあるんか?」
(`・ω・´)「火砕流がとても熱い空気も運んで来たであります。外から吾輩が焙られているであります。」
裕子「火砕流から、逃げられないの?」
(`・ω・´)「火砕流は低いところを流れるであります。吾輩達が来た道も低いところを通っているので、火砕流と道の行き先が被っているであります。」
裕子「このまま火砕流に耐えながら進まないと、いけないの?」
(´・ω・`)「その通りであります。」
ひろき「今、後ろに進んでるやろ。クルッて回って前に進まないの?そっちが早く走れるやん」
(´・ω・`)「後ろにモーターがあるので、それを岩の転がってくる方向に向けるのは、危険であります。それに戦車の前面は頑丈に作られているので、岩がぶつかっても平気であります。」
その時だった。裕子が座ってる席の故障インジケータのセンサー故障が全部点灯して警報がなりだした。
(`・ω・´)「緊急事態発生であります。副砲塔に搭載された、センサーが全部燃えてしまったであります。」
裕子「え゛え゛!?!」
しばらく裕子は、そのまま、思考が停止してしまった。
(`・ω・´)「前面に付いていた目が無くなったであります。」
裕子「周り何にも見えないの」
(`・ω・´)「幸いバックモニターはまだ生きているであります。でも前方から大きな岩が転がってきた時、いくら何でも吾輩大破してしまうであります。」
裕子「大砲で打ち砕けないの?
(`・ω・´)「大砲の向きを指示して欲しいであります。」
裕子「じゃあ私が覗き穴から外見張ってるね。」
(`・ω・´)「良い物があるであります。」
裕子の目の前に潜望鏡が下りてきて足元の床が、せりあがってペダルが左右の足元に1つづつ出てきた。
裕子「わあ~なんかすごい」
ひろき「わあ~なんかええな」
裕子「後で触らせてあげるわよ。」
ひろき「う゛~」
(`・ω・´)「赤外線サーモグラフィも積んだ潜望鏡であります。覗きながら外の周囲を確認できるであります。」
裕子が早速、潜望鏡を覗き込むと同時に、右のペダルを思いっきり踏み込んでしまった。
右方向に席が勢いよく回りだす。
裕子「うぎゃー」
(`・ω・´)「ペダルは座ったまま席を回転させる装置であります。右ペダルを踏めば右に回転、左を踏めば左に回転するであります。踏み込みすぎると、結構早いので気を付けるでありますよ。」
裕子「おえー、すでに5~6回回ったわよ。そういうことは先に言いなさいよ!」
(´・ω・`)「何遊んでるでありますか?余裕でありますなこんな時に」
オニの速度は、時速30kmだが、火砕流の速度は時速100km以上
大量の火山ガスや火山灰が押し寄せてくる。
オニ車の周りには火山灰が濃く舞っている。
だが赤外線サーモグラフィのおかげで、熱された岩がクッキリと見えた。
赤い塊が転がってくる。
潜望鏡から、大砲の向きも分かりやすく見えた。
裕子「左1時の方向大きい岩がくるよ。」
ウイーン、ガランゴロン、ガチャン
オニは主砲塔を動かす。
裕子「もうちょい上・・・ゆっくり左に旋回して・・そこ!撃って!」
ズドーン
強烈な爆音が響き渡る。
砲弾が岩の真ん中に命中して、木っ端微塵に砕け散った。




