こころを鬼に
ひろき「考えるんや。まず俺なら、どう動く?」
「おじいちゃんが『家で、待ってろ』って言う。」
「家にいたら、岩が飛んで来る。」
「家から出る。」
「村に居たら、危ない。」
「そんで村を出る事を考える。」
「ひなみだけでも森を抜けた所まで、連れてく。」
「そやけど森は、火事や。抜けられん、だけど森の入口にもおらんかった。」
「村の外では寄り道する場所は無い」
「おるなら村の入口に行く途中までのどこかや」
「村の入口に行くまでに、何か事件が起きて、今は寄り道しとる。」
考えが、まとまった。
てっぺいの家の前まで、走るとエンジンのかかった軽トラックが停まっていた。
銀平は、家の玄関の前に立っていた。
どうやら1人で、来たばかりの様子
ひろき「銀平のおじちゃん」
銀平「ひろき無事やったか。」
ひろき「森通れたんか?」
銀平「ああ、あの戦車が森の火事、吹っ飛ばしてくれたぞ。ところで他に誰もおらんのか?」
ひろき「おじいちゃんと、おばあちゃんなら納屋におった。」
銀平「あの親父とお袋何やってんだよ。」
イラ立ちながら腕を震わせて言う。
銀平「てっぺいと、ひなみは?」
ひろき「行方不明や。どこにおるか分からん。」
銀平「なんてこった。もうバラバラじゃねえか。とりあえずひろきは、車に乗れ!」
ひろき「てっぺいと、ひなみの場所なら、だいたい目途付けとるから、行かせてくれ」
頑固なのは、死んでしまった弟つまり、ひろき君の実の父親と同じだ。
父親譲りの頑固さなら、こう言う事を言い出すと、1人でも突っ走ってしまう。
ダメだと言っても勝手に行ってしまうだろう。
だが、約束は守る方だ。
ならば約束を言い聞かせてから、行かせた方がいい。
銀平「そうか行ってくれるか。おじいちゃんとおばあちゃん連れてくるから、3人で車に乗っとるんやぞ。見つからんかったら1人でも乗っとけ。本当に危なくなったら、戦車が来るから、そっちに乗るんや。分かったな約束や。」
ひろき「分かった。約束」
ひろきは、手を振ってその言葉に答えて走り出した。
ひろきは、周りを見渡す。
周りの家は、玄関や窓をしっかり閉じている。
歩いていると、見たくない物がまた見えてきた。
道端の血痕と、血の付いた岩
その横には、開け放たれた玄関
なぜかここだけ戸締りされていない。
表札には、正野とあった。
玄関を覗き込む。
子供用の靴が2足あった。
ひろき「ここか、あいつら道に倒れている人、放っておけんかったんや。」
玄関に飛び込むと、ひろき君は大声で呼ぶ
ひろき「ひなみ、てっぺいおるか!」
2階の方から、ひなみの声が聞こえてきた。
ひなみ「おにい・・・」
声がかすかに聞こえた。
土足で2階に登ると、ふすまが開け放たれた和室があった。
和室の入口に正座で座る、ひなみとてっぺい
頭から血を流し布団の上に寝かされた、おじいさん
その横で泣き崩れる、おばあさんがいた。
今、息を引き取ったのだろう。
重い空気が流れる。
だが、心を鬼にしてでも、他人のお通夜に付き合っていられない。
今はひなみの安全が一番大切
強く呼びかける。
ひろき「ひなみ、てっぺい、行くぞ!ここにおったら死んでしまう。」
正野のおばあさんは、振り向いて怒鳴り散らした。
「あんたら、まだおったんかい!さっさと出ていけ!」
耳をつんざく、強烈な怒声で空気が震えた。
ひなみとてっぺいは、ビクッと肩を震わせ無言で立ち上がり、あわてて玄関に向かった。
靴を履いて外に出た。
ひろき「大砲の音より、耳キンキンしたわい。」
ひなみ「うーなんで?こわかった。」
てっぺい「怒る事ないやんか!じいちゃん運んだんやぞ。」
一方森を抜けて、左のなだらかなカーブを進む、オニ車は頂上村に向かう。
あと、5分とかからないだろう。
コマンダーキューポラから顔を出して裕子は、山を見上げた。
山の頂上からは、噴煙が立ち上がっている。
村と噴火口を一直線に結んだ間にネズミ色の山が見えた。
裕子「何あれ?」
裕子はコマンダーキューポラから降りる。
裕子「ねえオニ。噴火口の手前に何かネズミ色の山が出来てるんだけど、拡大して見せて。」
(`・ω・´)「ラジャーであります。」
画面を拡大して映し出した。
(`・ω・´)「火山灰だけで出来た山でありますかな。」
裕子「温度高いの?」
(`・ω・´)「サーモグラフィで温度計測するであります。」
「計測中・・・」
「遠いので正確な計測できなかったでありますが、およそ200度から400度であります。」
「噴火で巻き上げられた火山灰が、風向きも相まって、あそこに溜まったでありますな。」
裕子「あれが崩れたら、村に覆いかぶさりそう。」
(`・ω・´)「風向きがこちらに変わったら、村は終わりであります。」
裕子「そうねその前に、みんな連れ出さないと。」
ひろき君は、ひなみちゃんと、てっぺい君に会えたのだろうか。
裕子「ねえ、もっとスピード出せないの?」
(`・ω・´)「フルスピードであります。」
裕子「重いからでしょ。もうちょっと、ダイエットしなさいよ。」
(# ゜Д゜)「ムカー!20トン、ダイエットしたであります。軍曹殿もダイエットしたら、その分 速く走れるでありますー。」
裕子「ムキー!私は充分軽いわよ」




