火砕流の嵐
ボーン
山の頂上から、爆発音が聞こえてきた。
噴き出した火山灰が崩れ落ち、火砕流が発生した。
火砕流とは、火山灰、火山ガス、溶岩片が1団となって、山の斜面を流れ落ちる現象である。
高温の塊が落ちてくるので、巻き込まれたら一たまりもない。
車の中にいても、強烈な熱風がガラスを溶かし身を焼き尽くす事だろう。
火砕流が、山の向こう側に消えてゆく
山を囲んで道が走っている。
向こう側に行ったという事は、向こう側の道に向かって行ったという事
一方ジンチの一家を乗せた消防署の赤いバンでは
揺れる車内で、疲れ切った家族が、うなだれていた。
ジンチは助手席に座っている。
ボーン
山の方から爆発音が聞こえてきた。
上を見上げると、火砕流がモウモウと火山灰をまき散らしながら、こちら側に落ちて来ているではないか。
ジンチ「こっち来っぞ!あれヤバイんじゃねえんか?」
消防隊員の山渕は、ジンチの見ている方向を見上げると火砕流を見て絶句した。
顔が恐怖で引きつる。
アクセルを全開にして思いっきりスピードを上げたのだが、火砕流から逃れられない。
進んでも
止まっても
引き返しても
結果が見えてしまった。
どうあっても車が火砕流に飲み込まれてしまう事を悟った。
隊員の山渕は、自分が来ている防火服を脱ぎ、ジンチに着せた。
山渕「生きろよ!」ジンチに向かって言う。
つづけて天を仰いで叫ぶ「明美!夢月を頼んたぞ!」
「夢月・・生まれたばかりなのに、せめてもう一目だけでも」
目に涙をうかべる。
岩がフロントガラスを叩き割る。
山渕は、ジンチを防火服の上から抱きしめ車の床に伏せた。
飛んできた石が頭に当たる。
車はゆっくり速度を落とす。
火山灰の煙が、車をおおいつくす。
割れたガラスが、飴のようにグニャリと溶けてしまった。




