グローブ合戦
運動場では、ひろき君の友達がキャッチボールをして遊んでいた。
キャッチボールをしている子供たちの目線が一気にこちらに向く。
よそ見をしながら打った球が、オニ車に当たる。
頑丈な車体に当たると音もなく地面にはじかれた。
オニは停止し水蒸気をモクモクと出す。
小学生たちが集まってきた。
野球少年「何だよあれ!」
ひろき「おう!てっぺい、ジンチ、コウヤンおはよ」
てっぺい「おお、ヒロやんけ?」
てっぺい君は痩せて筋肉質、気の強い顔をしている芯の強い感じの子だった。
半袖のYシャツにシャツの裾をズボンの外に出しネイビー色のカーゴハーフズボンとバスケットシューズを履いていた。
その場にいる小学生20人全員がオニAI戦車をポカーンと見上げていた。
そこには、ひなみちゃんもいた。
ひなみ「おはよ!お兄ちゃん」
ひろき「おはよ。ひなみ」
ジンチ「なあ、これなんなんや?お前もしかして入隊したんか」
ジンチは冗談交じりで笑いながら、話しかけてきた
ジンチは、顔が面長で背が高くヒョロっとしている。
手には使い古された野球のグローブと空色のTシャツに紺色のトレパンと蛍光色緑の迷彩柄のランニングシューズを履いていた。
ひろき「おうよ、ジンチ、ついに俺入隊してもうたんや。みんな乗ってええぞ」
ひろき君も笑いながら返した。
ジンチ「マジで?」
ひろき「マジや、みんなも乗って来いや。」
コウヤン「わしらもか?」
コウヤンは丸顔でズングリしてひろき君より少し背が低いくらい。
なんだか怒った顔をしているが、そういう訳でもない。
ブカブカの赤いTシャツにジーンズとビーチサンダルを履いている。
ひろき「おう全員乗ってええよ」
友達に良い顔をしたくて、勝手な事を言い出す。
オニからしてみれば迷惑な話だ。
(´・ω・`)「ハッチを開けるので、怪我しないように、ゆっくり登るでありますよ。」
オニも渋々口に出した。
ジンチ「戦車がしゃべった!」
(`・ω・´)「吾輩は、この戦車に搭載されたAIであります。」
ジンチ「エイアイ?」
(`・ω・´)「昨今のコンピューターの新化に伴い組みあげられたプログラム生命体とでも言うべきですかな。」
ジンチ「えっと・・パソコン?」
(#^ω^)「パソコンみたいな物かも知れないでありますかな。」
コウヤン「家の母ちゃんパソコンで家計簿付けてるわ。お前も家計簿付けれるんか?」
щ(゜Д゜щ)「余裕であります。オーバースペックであります。」
コウヤン「おーばあ?」
(´・ω・`)「何でもないであります。そんな事より改めて自己紹介するであります。」
(`・ω・´)ゞ「吾輩、大型2号戦車、略してオニ車であります。」
ジンチも面白がって、敬礼をした。「ジンチであります。」
てっぺい「てっぺいであります。」
コウヤン「コウヤンであります。」
みんなで面白がって敬礼をして自己紹介をした。
背の低い痩せた子が、タラップに足をかけて登りだした。
だが、体の大きい太った子が巨体で、背の低い痩せた子を押しのけて登りだし、背の低い子がタラップから落ちた。
落とされて怒った背の低い子が、太った子の大きな尻に蹴りを入れる。
太った子は蹴りを入れられた尻をかきながら「虫でも止まったかな。」と言いながら、何も無かったようにタラップを登る。
太った子は、わざとやったのだが、悪意があるわけじゃない。
ジャレているだけだ。
一人が登り終えると、ヤンチャ盛りの男の子達が我先にタラップを登りだした。
ひなみちゃんだけ取り残されたように、オニに触らず木陰に座り木に背を預けあくびをしていた。
子供たちは勝手に入り口を見つけて入ってくる。
中には関係の無いところをいじくりだす子もいた。
ジンチが、エンジンルームの扉に手を掛けて開けようとしていた。
(´・ω・`)「そこはダメでありますよ。高圧電流が流れているので、下手に触ると感電するであります。」
ジンチは、扉に掛けていた手を引っ込めた。
一方オニ車の中は子供達でいっぱい
息苦しくなってきたので、裕子とひろき君は外に出てきた。
裕子「ふー息苦しいって!」
ひろき君も外の空気で深呼吸した。
オニ車の中では子供たちの対応で、天手古舞している。
(´・ω・`)「ボタンを乱暴に、連打してはダメであります。」
(´・ω・`)「液晶パネルのコードを抜いてはダメでありますよ。」
(´・ω・`)「椅子の上に乗って飛び跳ねては、壊れてしまうであります。」
全員で、もう大はしゃぎ。
オニAIの言う事に全く聞く耳を持ってくれず暴れる子供達。
そのうち来るべき時が来た。
”バキャ”
嫌な音がした。
椅子の上で飛び跳ねて子が、音がした部分を見るとプラスチック製の椅子にヒビが入っていた。
(#`□´)「コラーいい加減にするであります。」
スプリンクラーから水が勢いよく噴射された。
一斉に子供たちの悲鳴が上がる。
蜂の巣をつついたようにオニ車から子供達が一斉に出てきた。
全員ずぶ濡れ
ジンチ「ひでえな、靴の中までベチャベチャだよ。」
靴を脱いで水を出しながら言う。
コウヤン「全くだよ。」
着ていたTシャツを脱いで絞りながら言う。
てっぺい「一張羅が台無しだよ。」
(#`□´)「中で暴れるからであります。この陽気だったらすぐに乾くであります。」
子供たちは、ずぶ濡れになった服を脱いで両手で絞り、近くの木やフェンスに掛けていた。
上半身だけ脱ぐ子がほとんどだが、パンツ1枚になる子もいる。
パンツ1枚になった子は、そちらこちらに走り回っていた。
ひろき君達は、体育館の壁に背中を預け口をぽかんと開けて空を眺めていた。
雲は流れ蝉がうるさく鳴き続ける。
コウヤン「あじ~な。」手で自分の顔を扇ぎながら、顔の汗を拭う
ジンチ「おうよ」
裕子は、子供たちに囲まれていた。
太った男の子「ねえちゃんが、この戦車の持ち主なんか?」
裕子「違う違う。たまたま通りがかったら、動いてただけ」顔の前で手を振りながら言う。
痩せた男の子「ねえちゃん何処から来たん?」
裕子「2つ隣の県よ。」
太った男の子「ねえちゃん!彼氏おるん?」
裕子「え!・・ええまあ」裕子は何と言おうか困ってしまった。
太った男の子「おらんのや、ワシが彼氏になってやってもえんやぞ。」
裕子「あ゛~ん!うっさいわね。デリカシーってもんをわきまえなさいよ。」
「どこに住んでいるの?」
裕子「都会よ、都会」
「パンツの色は?」
裕子「忘れた」
「黒やろ、黒、黒」
裕子「うっさい」
「大人になると、うんこもデカくなるんか?」
裕子「あたりまえでしょ」
男の子たちは、知らないお姉さんと、会話がしたいのが半分、大人をからかって面白がりたいのが半分で、楽しんでいるのだ。
その後も根掘り葉掘りと、飽きもせずにデリカシーの無い質問を立て続けに質問しつづけた。
「ブラジャーは着けてるの?」
裕子「どうでもいいでしょ」
「着けてるか分からんなら、おっぱい触ってみてもいいか?」
裕子は、返事の代わりに地面に落ちてるグローブを投げつけた。
男の子もグローブを投げ返し、グローブ投げ合戦が始まった。
投げてから後悔したが、飛んできたグローブに当たると結構、痛い。
裕子はグローブを投げ返しながら、中学生の修学旅行でやった枕投げを思い出した。
30分もそうしていただろうか。
てっぺいが木の枝に掛けた自分のYシャツを手に取りながら言う。「おおこれ乾いとるやんか」
コウヤン「俺のも乾いた。みんなのも乾いとるぞ」
みんなその声に、各々の服が乾いているか確認して服を着始めた。
裕子はヘトヘトに疲れていた。




