表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
下世話なあの娘が正直初心可愛いくて仕方ないから彼女にしたかったのに嫁になった  作者: 爆微風


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/39

ちゃんと待ってる



 22




 女の子の部屋に二人きり。

 で、彼女は詫びてきて、(ビンタ)をせがむ。

 ……どうしてこうなった。


 僕にS気質は無い、と思うので、遠慮しておこう。

 女の子は優しく扱わなきゃいけないし。


「伽耶ちゃん、落ち着いて」

「……ビンタしないの?」

「しません」

「じゃあ、エッチなコト……?」


 しまった罠だ。


 伽耶ちゃんはテーブルに身を乗り出し、僕の顔に手を添えて近付き…… 潤んで輝く瞳が、細くなっていく。

 後ずさろうにも、後ろにはベッドが。

 ベッドが!

 そこにもドギマギして、息が詰まる。

 手のひらが頬に触れる。

 吐息が…… かかる。

 唇を、寄せて……。


「しません!」


 全力疾走仕掛けた欲望を、完全武装の理性で殴り付けた。

 ギリギリ負けそうだった。

 なんとか伽耶ちゃんの肩を掴み、引き離す。

 肩細っ。


「何で、私じゃ不満なの……?」

「待って待って、許してる、許してるから!」


 不満なわけがない。

 むしろ欲にまみれた僕を曝したくない。

 君にヒドイ事を、したくない。

 君に笑顔で居て欲しい。

 抜群に好みの君に、嫌われたくないんだ。


「いつものお返しにからかっただけだから、ゴメンて」


 僕が詫び叫ぶと、やっと引き下がってくれた。

 ああ、肩が柔らかかった。


「……今ならお試しでも……」

「ダメだからねっ」


 お試し、なんてセリフは伽耶ちゃんからのからかい返しだろう。


「……ちぇ……」

「なぜ拗ねる」


 そんなやりとりをして。

 伽耶ちゃんは少し睨みながら、尋ねてきた。


「じゃあ、改めて教えて、桂くん」

「何が知りたいのかにもよるけど……」

「現在の3大オカズは?」

「じゃ、お邪魔しました」


 鞄を手元に抱えて、立ち上がる。

 三なんとかは意味が分からないな、僕は帰ろう。


「うそー!!」

「また学校でね」

「違うのよ! 手違い!」


 少し自重しようよ。

 更にお返しと、からかってるのは分かってるけどさ。

 勘違いしそうになっちゃうから。

 立ち上がった僕の服を、座ったままの伽耶ちゃんが引っ張る。

 あ、これは攻撃力が半端ない。

 上目遣いで、半泣きで、顔を赤らめて……。


「さっきまでの緊張感を解そうとしたの、分かってるくせにい……」


 ……可愛い(確信)。

 卑怯だ(歓喜)。

 分かってても、男としてはその拗ねた顔が見られたってだけで、仕方ないと許してしまう。

 良い表情(かお)見れたし、座っておこう。


「本当は何が知りたかったのか、教えて」

「……うん」


 伽耶ちゃんは深呼吸をすると、真面目な顔になった。


「ごめんなさい。夢中になって調べてたから…… ちょっと調子に乗ってて……」

「錯乱だね、気にしないで」

「さっきのは忘れてくれる?」

「うん、まだ何も聞かれていない」


 伽耶ちゃんに、しっかりと頷いて言葉を待つ。


「……じゃあ、桂くん?」

「ん、なにかな」


 伽耶ちゃんが、無表情でこちらを向く。


「何で、そんなに体を鍛えてるの?」


 久し振りに真面目な伽耶ちゃん、吸い込まれそうな瞳が綺麗だ。

 でも、体を鍛えてるのかって?

 気になって確かめたくなった事は、それだけかい。


「ま、趣味半分くらいで、鍛えるのが目的ではないんだけど……」

「目的じゃないなら…… 何のため?」


 誰にも言っていない訳じゃないから、伽耶ちゃんは知っているのかも。


「桂くんが目指してる事が何かあるらしい、までは先輩とかセンセから聞けてたよ。勿体振らされて、聞けなかったけど……」


 スゴいな、本物の探偵みたいだ。

 じゃあ、そこら辺は話そう。


「もう、なんなのー! 教えてよ……」


 黙っておきたい訳でもない話題だからいいんだけどね……。


「僕は、消防士になりたくて鍛えているんだ」


 なりたい理由は、あんまり言いたくないけど……。

 表情を読んでくれたのか、伽耶ちゃんがそれを聞いてくる事はなかった。


「……ふぅん?」


 妙な視線を感じて、伽耶ちゃんの顔を見る。

 向かいに座り直して、頬を膨らませて…… 怒ってる?

 な…… 何故に?

 正直に答えたのに。


「それじゃあもう一つ」

「うん、何だろう」


 また、真面目な顔になって、僕を見据えた。

 この顔、何時間でも見てられるな……。

   挿絵(By みてみん)

「何でそんなに穏やかでいるの? 何か言っても、からかっても受け流して…… 同い年とは思えないくらいに落ち着いた感覚で。言い合いになるなんて稀も稀…… でも、それって誰にも期待していないみたいに見えてさ」


 そんなことはないよ。


「あ、見えるだけよ。桂くんが気配りしてくれてるのも、先回りして頑張ってくれてるのも、優しい人だというコトも、最近は分かってるから安心して」


 やっぱり、絶対に伽耶ちゃんは賢い。

 しかも、目が良いんだ。

 でも、だからこそ、教えられない。

 僕の中の、利己的(ひとりよがり)な想いは。


「伽耶ちゃん、あのね……」

「教えて、桂くん」


 伽耶ちゃんは一瞬微笑んで。


「なぜ、そんなに強がっていなくてはいけないの」


 聞かれたくない辺りに、踏み込んできた。

 自分の顔が、緊張にひきつっているのが分かる。


「……そんな風に、見えるのかな」

「教えて、貰えないのね……」


 伽耶ちゃんが落ち込み、溜め息を溢す。


 ゴメン、ちょっと込み入っているんだ。

 ウチが、母子家庭な事とか。

 僕の、傷の事とか。


 いつかは、話したい。

 でも、今は、僕がまだ納得出来る状態じゃない。


「……正直、まだ話せないかな」

「あっ、本当?」


 さっきまでの暗い顔が、一気に明るく笑ってくれた。

 ……今、僕、何か良い言葉言ったかな?


「ありがとう! 頑張る!」

「え。え、何を」

「待っていていいのよね?」


 あ、「まだ」って事か。

 その言葉だけで、考えてくれるのか……。

 伽耶ちゃんの優しさに、弱音を今すぐ吐き出したくなったが耐える。


「……うん、待ってくれるなら、伽耶ちゃんには絶対に話したい」

「いっっっし、やぁ!」


 笑顔に、掛け声が弾けて鼓膜を揺らした。


「こんな質問の答えに、待たせてしまっても、いいの? いつまで待たせるか分からないよ?」

「うん! 大丈夫、何年でもホントに待ってる!」


 伽耶ちゃんが、近くで炸裂させた掛け声は、耳鳴りを残して脳まで揺さぶったみたいだ。

 クラクラする。


「私、桂くんの彼女だから!」


 僕と手を繋ぎ、嬉しそうに振り回す姿が、愛おしい。


 ……伽耶ちゃんが待ってくれるなら、僕は?


 この状態を打破して、気持ちを、過去を、本音を言えるように。

 一刻も早く、早く。

 そんな僕の心を見透かすかの様に、伽耶ちゃんが見詰めて、囁く。


「……彼氏の言葉を、ちゃんと待ってる」


 その言葉にはからかいなんて微塵もなくて。

 僕の胸に添えられた掌から、熱以外にも伝わってくる気がした。

 ……伽耶ちゃんの気持ちを、今、聞いてしまった気がするが気のせいだ…… 目を瞑って忘れよう。

 鈍感扱いにも頷こう。


「ありがとう伽耶ちゃん。僕も頑張るよ」


 これからやるべきは、何かな。

 伽耶ちゃんの情報網を頼って、真相究明に身を乗り出すかな?





評価とブックマークしていただけると喜びます☆


ヨロシクお願いします☆(°▽°)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ