話したいんだ、キミと
21
「お邪魔します……」
「どうぞドーゾ」
おお…… 女の子の、部屋だね……。
伽耶ちゃんの部屋には、本棚、勉強机、椅子、ベッドと普通な品々が置かれていたけれど、全体的に白く、こう……。
『乙女な感じ』
だった。
奥まった位置にあり、他の部屋とは違いドアが付いていて、洋風になっていた。
そりゃあ女の子だもんな、鍵も欲しいよね。
香里の部屋も鍵付きにするために交替したんだったな。
「…… ゴメンね、騒がしくしちゃって」
伽耶ちゃんはそう言いながらテーブルにお茶を並べ、カーペットに座り込むと、僕を正面に促した。
「いや、楽しいご家族だよ」
お母さんの『ボケ』にはビビったけど。
「普段は、あんなに喋らないんだけどね~」
「今日は機嫌良いんだろうか」
「疲れる位にね」
伽耶ちゃんが溜め息をついて足を伸ばした。
ハーフパンツだから、全体的な肌色にドキドキする。
あ、今日はポニーテールではないから髪が波打って、キラキラしてるね。
この髪型もすごく可愛いな。
と、扉がノックされた。
「はい、何」
「私と柾軌で昼食の買い出しに行くから、その間はごゆっくりね」
「ああ、はいはい、行ってらっしゃい」
お母さんか。
伽耶ちゃんは不機嫌そうな声で対応してたが、からかいを言って手を振るお母さんを追い出し、ささっとドアを閉めた。
「ちゃあぁんすぅ……」
伽耶ちゃんが悪い顔してる気がする。
後ろ姿で見えないけど。
……今なんかカチャンって聞こえたような。
振り返った伽耶ちゃんは、顔を真っ赤にして、僕を見詰めた。
「桂くん…… やっと…… 二人きりになれたね……」
そのセリフに、またドキドキしてしまう。
「どうしたの?」
「直に聞けなかった事が、あるの」
何、だろう。
「私、ずうっと見てたの」
伽耶ちゃんは、思い出しながら喋っている。
大切な事を、言おうとしているんだね。
邪魔しないようにしばらく聞いていよう。
「今も、大幡くんの気持ちが分からない……」
「優しくて、頼り甲斐があって、でも…… 一人で努力してる……」
「仲間との関わりも好きなのに、自分の恋には奥手な感じ」
「でも桂くんは私との、この、ニセモノな関係も楽しんでなさそうで、でも私は、段々…… なんて…… どうしたらいいか分からなくて……」
「いけない事をしていると、分かっていたけど、大幡くんの過去を、調べちゃった」
そこまで聞いていた僕の視線に、伽耶ちゃんが怯えた。
「えうっ……」
無意識に睨みつけてしまったのか、いけない。
「伽耶ちゃん、ゴメン、恐がらせて」
「うぅっ、い、いいの、悪いことしたのは私……」
違う、僕は……。
「僕は、昔の事を、恥じているんだ」
「……話したくない事もあるよね? いいよ、無理に話さなくても…… 知りたいから聞いて回っちゃって、ごめんなさい。もう、しないから」
そうだ、伽耶ちゃんの言う通り、話したくない事だ。
でも、良いんだ。
伽耶ちゃんになら。
僕は覚悟を決めて、ぎゅっと拳を握りしめた。
「話そうか、色々と」
「桂くん……?」
「話したいんだ、キミと」
どこまで知っているのか分からないから、生い立ちとか大まかに話そうか。
「……どこまで調べたの?」
「え"」
「……伽耶ちゃん?」
「……引かない?」
何だろう、何を知っているのかな。
ちょっと怖くなった。
「えっと…… 色々と…… センセとか…… 同じ中学の子達とかから聞き集めて…… 高校にも先輩が居たから……」
「要するに、何を」
「……生年月日、血液型、身長、体重、手の怪我のコト、足のサイズ、好きな食べ物、飲み物、家族構成、とか…… あ、こないだ本人から3サイズ貰えた!」
うん、探偵かな?
明らかに法的なギリギリですね。
「お巡りさん、こっちです」
「ほらぁ、引いたあ!」
引くと言うか怖かった。
マジ泣きされてるけど、何だろう、この無駄な調査力。
「最近の学校内を駆け回っていたのって、まさか……」
「あ、半分くらいはそう」
明るく答えてくれた。
泣いた伽耶ちゃんがもう笑う。
他にも何かしら調べてるの?
……将来は探偵事務所でも構えるつもりだろうか。
「ふっ、くくっ、流石、伽耶ちゃんだね」
「じゃあ…… 許してくれるの?」
「え、何をさ」
「私が、内緒で桂くんの事を調べ回っていたコト」
「ああ、そんな事なら……」
ふと。
イタズラされ続けた今までが過る。
……別にそれを許すことに躊躇いはなかったんだけど。
「……どうしようか、確かに嫌な思いはしたし……」
イタズラへの仕返しを、したくなった。
「いいのよ…… 桂くんになら……」
え?
「何をされても仕方ないもの。どうぞ」
……なーんてね、と続けるつもりだったのに。
真っ赤にした顔をつきだし、目を閉じて……。
視線が吸い込まれる艶やかな唇に、意識が吹っ飛びそうになった。
「はやく……」
そして、伽耶ちゃんが。
「ビンタでも、グーパンでも、どんとこい!」
そのお約束をブチ壊す!(物理)なセリフを言った。
「女の子にそんなコトしねえッス」
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