何だか今日は盛り沢山
16
ショッピングモールまではバスで20分くらい揺られるか、一駅電車に乗ってまた歩くか、なので、僕たちはバス移動をとった。
昨日までは雨の可能性が高かったから、天気次第では……
『ウチに遊びに来る?』
という伽耶ちゃんの案もあった。
そっちも捨てがたい。
まあ天候が調っているのだから、楽しまなくちゃな。
バス停にて待つ間に、女子の服装を再確認した。
今日の伽耶ちゃんは涼しげな服装。
「肩出しの服なんてカッコいいね、良く似合ってるよ」
「えっへー。フレンチスリーブの白フリルネック、お気になんだぁ」
その場でくるりと回って見せてくれた。
下はパンツスタイル、こちらも見慣れなくて眩しい。
足首に向かって細くなるシルエットが、伽耶ちゃんの美脚にとても合っている。
「平さんは、清楚な感じだね」
「うっ、うん、良く似合ってる。そんな服も持ってたんだな」
突いて喋らせたが、一言余計だぞ、伸。
「白いワンピース、可愛らしいよ」
「ありがとう、コレ以外にもあるのだけど」
……ちゃんと誉めろと、言っただろーが……
……服装の違いの何をどう誉めろっつーんだよ……
小声でやりとりするが、イマイチみたいだ。
伸は平さんに対して、自分のお姉さんみたいに相手をしていたからこそ『こんな関係』になっているんじゃないかと言っといたんだけどな。
バスが到着したので、ICカードをタッチして乗り込む。
二人掛けの座席には、密着してしまうので男女別だ。
「さっきの一件まで、何してたの?」
「駅に自転車を置いてから散歩してたよ」
「コイツの散歩は運動量が違う」
伸がまた余計な事を言う。
負担が大きいトレーニングはこの服だと汗とか心配だから出来ないっつーのに。
なるべくゆっくり呼吸をしながら、左右の腕でアッパースウィングをしながら歩いただけだ。
「散歩なのに運動なの?」
「伽耶ちゃん、種族が違うのよ」
平さん辛辣ぅ。
「伸、お前のせいでヒドイ扱いだぞおごれよ」
「いつもの生態を解説してみたら当然の結果だぞ?」
「誰がトレーニングゴリラだ」
「まだ覚えてたのかよ」
んむ、いつもの会話だ。
でも音量を控えないとな、車内だから……。
「むこうで、改めて話そうな」
「肉体言語はレギュレーション違反だぜ」
「仲が良いわよね~」
「……ひょっとして伸君も種族が……」
「そういう発想は腐りそうだわ初穂ちゃん」
「たまには味変も良いかもよ伽耶ちゃん」
「おっ、イケる口なのね、また後でじっくり……」
女子側も交流(?)が進んでいる様でなにより。
勢いで言ってみたものの、まさか実現するとはな。
今までの道のりを思い、達成感を噛みしめた。
☆
「着いたー! さあ準備の確認~、スマホ!」
「アリ」
「よしっ、サイフっ!」
「あるね」
「よしっ、飲み物っ!」
「あ、ないや」
「笠木くん…… じゃあ先ず買い物で」
「やっちまったな伸……」
「初穂ちゃん、しっかり指導しておいてね」
「任せて……」
「……俺、何されるんだ……」
「ノッてんなぁ……」
まあ、楽しいからヨシ。
「初穂ちゃんは何か計画あるの?」
「……今日の服をベースにするかは悩むけど、まだ選べるパンツとかがあれば夏物の新作を見たいわね」
「ほっほーん、じゃあ男子、お付き合いください」
「うん、それは任せるよ」
「俺は最後に本屋にさえ寄れたらいいし」
「でもなぁ、下はともかく上はあるか分かんないね……」
「ゴメンね…… あまり無いようならいいの」
「そこはアレンジか、手直しもするわよ」
……口を挟まない方が良い予感。
でも、伸は空気を読まなかった。
「何がないの? お金?」
「……ううん、サイズ」
「伸君にはデリカシーも無いわね」
おっ、平さんの口調がやや砕けてるな、リラックスできてるみたいだ。
伸と二人きりに出来たなら話が早いかもね。
「だから、水着は候補から外していたのに……」
「まあまあ、今更その話はなしよ、目の前で話した私らもアレだし」
「……スンマセン」
伸、原因であるお前が頑張るしかないんだ。
「お前の力はこの程度か」
小声で、発破をかける。
「全力を見せてみろ……」
「何言ってるの桂くん?」
「ぅぉぁ」
しまった、伽耶ちゃんと平さんに見られてしまった。
「いやなに、お、そう、お茶買おうかなって!」
「もう『そーいお茶』持ってなかった?」
「あ、そうだね、ははははは」
笑って誤魔化せ。
しかも、平さんも何か優しい目線で、僕を見ていたし。
「大幡君も繊細さが足りませんか?」
「……スンマセン」
しかし正直、少し屈んで上目遣い、は可愛らしい。
伸に向かってやってあげたら喜びますよ、きっと。
「……はぁ、私もまだまだですけど」
「さぁさぁ、行くよー」
平さんの呟きは、伽耶ちゃんの掛け声に上書きされて聞こえなかった。
☆
楽しみだと思ってはいたが、こんなにイチャイチャするとは予想外デス。
本当だ、お気に入りらしい服を着て、前よりもボディータッチが激しくなって帰ってくるとは想像もしていなかったよ。
「桂くん、はやくはやくっ」
むにっ。
「っひぃ」
「コレとコレならどっちが似合うかしら」
「あ、うん、緑の方だね」
「そうね、分かってるぅ。じゃあ次はコレ見て」
ぐにゅっ。
「らめぇっ」
思ってもみないし、今日のコレはッ、本体からの刺激がッ、プラスされてないかッ、可愛いし柔らかいしッ、右腕は完全に支配されているッ!!
なんか…… 目の前がチカチカしてきた。
……男子の評判良い服で、大幡君を虜にするつもりなのね……
……伽耶ちゃん…… 本気ね……
後ろから何か唸り声聞こえたよーな……。
「ケーマ、こっちだぞ?」
「あ、あぁ、悪い。伽耶ちゃん、あっちだって」
「んぁ、初穂ちゃん、私は桂くんとこっち見てる」
「……じゃあ、伸君と二人で見てくるね」
あっ、伽耶ちゃんナイスプレー。
むしろ都合が良い。
「じゃあ、別行動か」
「行きましょ、伸君」
「ケーマ、12:30にフードコートに集合な」
「了解ー」
さっきの調子なら、いつもより会話もあるだろう。
手を出すまでもなく、ミッションコンプリートかな?
よおし。
あとは僕なりに楽しむだけだね。
「あ、あっちいこ、桂くん!」
「……どっち?」
そこは非常口だよ。
「う、うんうん。大丈夫!」
くるっと回れ右して、持ち替えた僕の右腕を引いて行こうとする伽耶ちゃん。
「あ、ちょっと待って」
そのままだと後ろ向きに進むしかないので、流石に止めた。
「どうしたの、大丈夫か」
「うん、平気…… あはは」
……手を出すとか…… ミッションとか呟いてたケド……
……楽しむだけだ……って ……私のコトよね……?
呼吸を調えている伽耶ちゃんが何かしら呟いているが、迷子のお知らせで聞き取れなかった。
それが、聞き覚えのある名前だったので。
『繰り返し、迷子のお知らせを致します…… エダ様、エダ様、ただ今、スタッフルームにてお子様がお待ちです。至急、お迎えをお願いします』
「エダ…… 江田?」
「……え?」
「あ、ちょっと待ってね」
スマホを操作して、登録してある名前を探す。
ひらがな順なので、上の方ですぐ見付かった。
同級生の、江田 樹。
『今なにしてる? 妹さんは一緒か?』
……っと、メッセージを送ってみた。
関係がなかったらただの現状確認だし、いいだろう。
しかし、直ぐに着信音。
何だか今日は盛り沢山だなぁ。
『もしもしっ、マコトはっ!』
「はい、桂馬だよ、一緒じゃないんだな?」
『今、映画館前なんだがはぐれちまったんだ、知ってるなら教えてくれ!』
「こっちは慧遠の3階だ。今、迷子放送があって、もしかしたらと思ってさ」
『分かったすぐ向かう』
これで見付かれば良いな。
しかし隣の施設とは言え、アグレッシブな小学生だ……。
「誰さん?」
「あ、ごめんね、同じクラスの江田だよ」
「なるなる。仲が良いのね?」
「同じ中学だったからね。近所と言えなくもないし」
「じゃあスタッフルームに行こうか」
「あー、良いかな?」
「モチロン」
状況を把握してくれた伽耶ちゃんは、やっぱり頭が良い。
僕の腕を引いて歩く形は変わらなかったが、一階のインフォメーション裏のスタッフルームに向かって、樹を待つ。
……いや早い、ほぼ同時に到着した。
「マコトはっ!?」
「まだ聞いてないよ」
「分かった、サンキュな!」
樹は慌てて問い掛けに向かった。
「話したことあんまりなかったけど、迫力あるのね」
「まあ…… 元ヤンキーだしね……」
「へえ」
「ただ、バンチョーって言うとキレる」
「んっ、気を付ける」
言いそうだったんですね、分かります。
正直ピッタリだからね……。
「あっ…… にいちゃ!」
「バカっちょ! 何してたんだ!」
……っちょ?
お前も妹には弱い族だな。
分かるぞ、怒りきれないが仕方ないと思うその気持ち。
見付かって、良かったね。
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